「まだ早い」が、一番危ないかもしれない

末廣哲彦

末廣哲彦

テーマ:事業承継

「準備ができたら相談しようと思っています」
M&A(企業の売買・合併)について話すと、多くの経営者の方からこんな言葉が返ってきます。
お気持ちは、よくわかります。まだまだ現役でいたい。会社を手放す決断は重い。今は忙しい。
ただ、正直にお伝えしなければなりません。
「準備が整う日」は、なかなか来ないのです。

1. M&Aには「窓」がある

事業承継やM&Aには、スムーズに進みやすい時期と、そうでない時期があります。
専門家の間では「売り時」と呼ぶこともありますが、要するに、いくつかの条件が重なる時期のことです。

具体的には、次の4つの要素が揃っているときが理想的です。

  • 業績が安定している、または右肩上がりのとき
  • 経営者本人が健康で、動ける状態のとき
  • M&A市場が活発で、買い手企業が積極的に動いているとき
  • 後継者が見つかりにくいと、だんだんわかってきたとき

この4つが重なるタイミングは、思いのほか短いものです。
だからこそ、早めに動くことが重要になります。

2. 早く始めるほど、選択肢が広がる

M&Aは、着手から成立まで平均1〜2年かかります。
「どんな相手に引き継ぐか」をじっくり選びたいのであれば、3〜5年の準備期間があるのが理想です。

余裕を持って動き始めた経営者は、買い手を選ぶことができます。
価格の交渉もできます。
従業員の処遇について条件をつけることもできます。

一方、健康問題や業績悪化が起きてから動き始めると、「早く決めなければ」という焦りが生まれます。
焦りは判断を狂わせ、本来なら選ばなかった条件での取引につながることもあります。

3. 「まだ早い」が招くリスク

健康問題は、予告なく訪れます。
業績の悪化も、市場の縮小も、いつ起きるかわかりません。
「70歳になったら考えよう」と思っていた経営者が、65歳で体調を崩したケースを、私たちは少なからず見てきました。
その時点から急いで動いても、理想の承継先を見つけるには時間が足りません。
「まだ早い」という感覚は、決して悪いものではありません。
ただ、それが「何もしない」理由になってしまうと、選択肢はどんどん狭まっていきます。

4. まず「知る」ことから始めればいい

M&Aを始めるということは、「会社を売る」と決めることではありません。
「今の自社の状態を知り、どんな選択肢があるかを把握する」ことです。

現状を把握するだけなら、今すぐでもできます。
そして、知った上で「まだ動かない」と判断するのは、経営者として正しい判断です。
知らずに先送りするのとは、まったく違います。
「今が売り時かどうか」は、動いてみて初めてわかるものです。まずは現状を診断することから、始めてみませんか。

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末廣哲彦
専門家

末廣哲彦(M&Aコンサルタント)

株式会社LEG(レグ)

中小企業の事業承継を支援。M&Aありきではなく、親族承継や社内承継、廃業なども含めた簡易診断から選択肢を整理します。契約後の経営統合(PMI)まで伴走し、事業継続と成長の土台づくりを支えます。

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