会社員のまま起業準備を始めたい人が陥る「情報収集の罠」とは? 起業支援25年のプロが明かす、リスクゼロで始める起業準備の新常識
起業のリスクを怖いと感じるのは、当然のことです
――新井さん、今日は「起業のリスク」についてうかがいたいのですが。「リスクが怖くて踏み出せない」という方は多いですか?
新井:それはもう、圧倒的に多いですよ(笑) 相談に来る方のほとんどが、最初に口にするのが「リスクが怖い」という言葉です。その気持ちは真っ当ですし、「真剣にこれからの人生を考えている証拠だ」と僕はいつも伝えています。
――でも実際、収入が不安定になるとか、失敗したら借金が残るとか、現実的なリスクはありますよね。
新井:それは否定しませんよ。廃業率はゼロではないし、現実のリスクです。ただね、問題は「何をリスクと定義するか」にあります。起業のリスクは「見えやすいリスク」です。具体的なので頭の中でとても大きく感じられる。でも僕が現場で気づいたのは、「見えにくいリスク」のほうが、実はずっと深刻になっていることが多い、ということですよ。
「見えにくいリスク」のほうが、実は怖い
――「見えにくいリスク」というのはどういうことでしょう?
新井:あるとき50代の方が相談に来られました。大手メーカーで20年以上勤め上げてきた方です。「転職活動をしているのに、どこにも通らない」とおっしゃっていてね。話を聞くと、「自分に何ができるか、他人に説明できなくなっていた」と。これは珍しいことではないですよ。
――会社の中だけで働き続けてきた方に起きやすいパターンですね……。
新井:会社の中だけで通用するスキルを磨き続けると、社外での市場価値が気づかないうちに下がっていく。給与が上がらない、業界が縮小していく、テクノロジーの変化で仕事が変わっていく…… こういった変化も「会社員でいることのリスク」ですよ。でも日常の中では見えにくいから実感しにくい。起業のリスクだけ見て、こちらを見落とすのはもったいないと思っています。
リスクは「ゼロにする」ものではなく「コントロール」するもの
――では、どうすれば起業のリスクを小さくできるのでしょうか?
新井:シンプルに言えば、「起業のリスクはやり方で劇的に変わる」ということです。「会社を辞めて、貯金を全部使って開業する」のと、「会社員のまま、月10万円を目標に小さく始める」のとでは、リスクの大きさがまったく別次元ですよ。後者であれば、生活を支える収入は会社からある程度確保されています。仮にうまくいかなくても、生活が崩れるほどのダメージにはなりません。
――スモールスタートなら、初期費用も少なく済む?
新井:数万円から始めることも十分可能ですよ。大きな設備投資が必要なビジネスではなく、自分のスキルや経験を活かしたサービス業から始めれば、借入リスクをほぼゼロに抑えられます。飲食店や実店舗と比べたら、失敗したときのダメージがまったく違いますから。
――「リスクをゼロにしよう」としなくていい、ということですね。
新井:リスクを完全にゼロにしようとすると、一生スタートできませんよ。相談を受けるとき、僕が必ずお伝えすることがあって。「リスクをゼロにしなくていい。小さくコントロールしながら動いていきましょう」と。大事なのは、動きながらリスクを調整していくことです。
40代・50代のリスクは「年齢」ではなく「武器」になる
――副業禁止の会社員の方は、起業準備自体ができないのでしょうか?
新井:まず就業規則の確認は必要ですね。最近は副業を認める企業も増えていますし、起業の「準備段階」の活動——スキルの棚卸し、情報収集、人脈づくりなど——は多くの場合、問題にはなりません。「起業する」と決める前に、まず「何ができるか」を書き出すところから始める。これくらいなら、今日からでもできますよ。
――40代・50代からだと、年齢がリスクになりますか?
新井:年齢が上がると「今さら」という感覚は出やすくなりますよね。でも40代・50代には、経験・人脈・信用という大きな武器があります。26年この仕事をしていて、40代・50代で起業して安定した事業を作った方はたくさんいらっしゃいますよ。年齢はリスクではなく、強みになることのほうが多いですよ。
「動かないこと」も、立派なリスクです
――最後に、「リスクが怖くて動けない」という方へメッセージをお願いします。
新井:「リスクが怖い」という気持ちは、真っ当な感覚です。でもひとつだけ言わせてください。「動かないこともリスク」なのですよ。見えやすい起業のリスクを恐れているあいだに、見えにくいリスクが静かに積み上がっていることがある。大きな賭けに出る必要はまったくありません。まずは「自分に何ができるか」を書き出すだけでいい。そこから少しずつ、あなたのペースで動き始めてほしいですね。
――起業のリスクと向き合うことは、自分の人生と向き合うことでもあるのですね。今日はとても参考になりました。ありがとうございました!
新井:こちらこそ、ありがとうございました。一緒に考えていきましょう。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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