他の共有者が第三者に持分を売却していたらどうなる?
「共有者の同意がないと持分は売却できないの?」
「同意が求められるケースとは?」
「どうやって持分を売却するの?」
共有持分を所有している方は上記のような悩みを抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
共有持分は複数名が不動産を所有している権利の割合のことです。一般的には親子・兄弟などで共有持分を所有しているケースが多いですが、売却を検討している方もいらっしゃるでしょう。しかし共有なのでそもそも売却できるのか疑問に思う方も多いです。
そこで、この記事では共有持分の売却についてフォーカスをあて、共有者の同意の有無と売却方法、注意点を紹介します。
■1. 共有持分の売却に他の共有者の同意は不要
共有持分の売却には他の共有者の同意は不要です。
一方、共有名義不動産全体の売却には、共有者全員の同意が必要です。
共有名義不動産全体を売却したいけれど、共有者の中に売却に反対する人がいる場合などに、“自己持分の売却”という選択をする方が多いです。
ただし、共有者に内緒で持分を売却することで、後々トラブルになるケースもあります。トラブルを防ぐためには、共有持分を専門に扱う不動産会社に相談するのが賢明です。
■2. 共有名義不動産の活用で共有者の同意が必要となるケース
共有者の同意が必要となるケースは不動産の活用を行う際です。具体的なケースを3つ紹介します。
2-1 不動産を売却する場合
共有名義の不動産を売却する場合、共有者全員の同意が必要です。民法251条では以下の通りに定めています。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
引用:民法第251条 - Wikibooks
ここでの変更は「物理的な変更」と「法律的処分の売却等」を含みます。そのため不動産を売却する際は共有者の同意が必須となります。実際に不動産を売却する場合、売買契約書に共有者全員の署名捺印が必要であり、所有権移転登記する際は、共有者全員の印鑑証明書などが求められます。
また、民法改正にともない、令和5年4月から、共有者の所在が分からない場合は、裁判所に請求を行い、所在等不明共有者の持分の譲渡が認められれば、他の共有者が不在者の持分を得ることが可能になりました。ただし、相続開始の時から10年を経過していない場合は本制度は利用できないため注意しましょう。
2-2 建物の建て替えを行う場合
建物の建て替えを行う場合も共有者の同意が必要です。老朽化した建物を解体し、新たな建物を建築するのは「共有物の変更」に該当するためです。万が一共有者の同意を得ずに解体してしまうと、刑法260条に該当し、五年以下の懲役を受けることになる可能性も高まります。
ただし、老朽化して今にも倒壊しそうな建物であれば、共有者の同意なく解体することができます。
2-3 賃貸物件として貸し出す場合
賃貸物件として貸し出す場合はケースによって必要な同意数が変わります。
賃貸物件として貸し出す場合は管理行為に該当し、共有者数ではなく、持分の割合で決めることができます。ここでの短期間の賃貸借契約期間は民法602条では以下の通りの期間と定められております。
- 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年
- 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年
- 建物の賃貸借 3年
上記の期間内であれば、持分の過半数から同意を得て入れば賃貸物件として貸し出すことができます。そのため1人で共有持分の1/2以上持ち合わせていれば、他の共有者の同意を得る必要はありません。しかし短期間以上の期間の契約となると長期間に該当するため、共有者全員の同意が必要となります。どちらにせよ共有者とトラブルにならないためにも全員から同意を得ることがおすすめです。
■3. 共有持分の売却方法
ここでは共有持分を売却する方法を3つ紹介します。
3-1 共有者へ持分を売却する
共有持分を他の共有者に売却する方法です。購入する側としては、不動産の活用の自由度が高まる傾向にあります。特に共有者が2人だった場合、単独名義にすることが可能なため、買い手側としては大きなメリットとなります。
3-2 第三者へ持分を売却する
共有者間で売買が成立しない場合は、第三者へ売却する方法があります。第三者に売却する際は、共有者から同意を得る必要はありません。
しかし第三者が購入しても、他の共有者がいるため不動産の活用の自由度が低いことから、売却価格が安くなるというデメリットがあります。
共有持分を1円でも高く売りたい方は、共有持分を専門に扱う不動産会社に査定を依頼するのが良いでしょう。
3-3 分筆して各自の単独所有にする
共有名義の土地で建物がない更地の状態であれば、分筆してそれぞれの単独所有の土地にすることができます。分筆とは1つの土地を複数の土地に分割して登記することです。
例えば土地の地番1−1を分筆すると、1−1と1-2に分けることが可能です。すでに建物が建っている土地でも、建物をまたがるような形で分筆できますが、購入者が見つからないうえ、権利関係が複雑化してしまうため、売却するうえでは更地の状態が理想です。
分筆すれば共有状態を解消することができ、単独所有の土地を売却することができます。分筆する際は、それぞれの持分割合に応じた面積按分にすることで贈与税は発生しません。
しかし土地を共有者同士で交換したという扱いになるケースもあり、所得税が課せられる場合もあるため、税理士や不動産会社などの専門家に相談してから行った方が良い方法です。
■4. 共有持分を売却する際の注意点
最後の共有持分を売却する際の注意点を3点紹介します。
4-1 売却価格が低い
共有持分の売却価格は、単独名義の不動産を売却する価格より低くなる傾向にあります。先述した通り、共有持分を購入しても他の共有者がいれば、不動産を自由に活用するのが困難となるためです。また共有持分の価値は、持分割合が大きくなるほど売却価格も高くなります。共有持分を高く売りたい方は、持分割合を増やしておくと良いでしょう。
また、共有持分を専門に扱う不動産会社でも、買取業者か仲介業者かでも、査定額が大きく変わります。高く売りたい方は、仲介業者に査定を依頼するのがおすすめです。
4-2 共有者とのトラブルにつながる
共有持分のみを売却する時、共有者が反対するケースも多く、また共有者に伝えずに売却してしまうとトラブルになることも多いです。共有者からすれば知らぬ間に第三者と共有名義の不動産になっているため、嫌がる人もいらっしゃるでしょう。もちろん共有持分を売却すること自体は違法ではありません。しかし共有者との関係が悪化する要因にもなる可能性が高いです。
4-3 持分の売却にも費用がかかる
共有持分を売却する際は以下の費用が発生します。
- 譲渡所得税・・・売却利益が発生した時に課せられる税金です。利益から取得費や売却に関わる費用を差し引いてマイナスになれば非課税となるため、必ず課せられるわけではありません。
- 印紙税・・・売買契約書に添付する印紙代です。売却価格によって異なりますが、数万円程度の費用です。
- 仲介手数料・・・売主と買主を仲介する不動産会社へ支払う手数料です。仲介手数料は売買価格によって異なりますが、400万円以上であれば、「売買価格×3%+ 6万円」に消費税10%を掛けた値を支払います。
■まとめ
共有持分は共有者の同意を得ずに売却することができます。しかし不動産全体を売却する場合や建て替えする場合は、共有者の同意が求められます。また持分を売却する際は共有者とトラブルにもなりかねないため、必ず共有持分を専門に取り扱う不動産会社などに相談しましょう。
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