書籍出版のお知らせ~共有名義不動産のトラブル解決法~7/3発売
共有不動産を売却する方法の1つに「持分の売却」があります。
他の共有者の合意を必要とせずに共有不動産における自分の持分のみを売却できます。
共有不動産の権利を売却する「持分売却」(一部売却)
共有不動産では、複数の持ち主(共有者)が、それぞれの不動産に対して権利を持っています。
1つの不動産を共有するので、持分は2分の1、5分の1というように分数で表示されています。
共有不動産は、相続などで持ち主となった人たちが、それぞれ自分の持分を登記しなければなりません。
共有不動産は、土地や建物すべてを売るときは、共有者全員の合意がなければ売却することができません。1つの共有不動産を持つ人の数が多いと、中には売りたくない人もいます。反対する人がいる場合、物件全部を売却することはできなくなります。
しかし、持ち主はそれぞれに事情があり、売って少しでもお金が欲しいといった人も中にはいます。
持分売却は、他の共有者全員から合意をとらなくても自分の意志で自分の持分を売却し、代金を受け取ることができる方法です。
持分売却のデメリットとは
持分売却は、共有者が自由に自分の持分を処分し、共有名義から解放されるメリットがあります。
しかし、土地や建物すべてを売却する方法とは違い、その不動産を利用する権利だけなので、売却金額は、全部を売却するよりも減額されます。
買う側からすれば、持分を買ってもその物件を自由に売却したり建て替えて商売を始めたりといったことも共有者全員がOKしない限りは実行することができません。何もできないことから、不動産市場では魅力が少ない買い物と敬遠されがちです。
しかし、近年は海外を含むの個人投資家たちの間では、不動産投資商品として注目されており、この共有名義不動産への投資が積極的に市場に進出している動きもあります。
共有不動産における持分のあり方
民法では、共有不動産の持ち主(共有者)は、持分の多い少ないにかかわらず、その不動産を使用する権利があると規定されています。
例えば、親が住んでいた家を兄弟3人で相続し、持分割合を各人が登記したとします。
その後、この3兄弟の中でだれか一人が、親の残した家に住んだとしても、残りの兄弟2人は、立ち退きを要求することはできません。
このように共有不動産の使用については、各人がその不動産を自由に使用できます。
共有不動産の管理・維持などの固定費を支払う時は、持分に応じて共有者が費用を分担する決まりがあります。
例えば、毎年の固定資産税といった税金の支払いや雨漏りの修理などがそれにあたります。
このほかに、共有不動産が賃貸マンションのような収益物件であれば、家賃収入が発生します。このような収入は、持分に応じて正しく分配されて受け取る権利が共有者にはあります。
持分売却のステップ
持分売却は、当社のように実績のある専門不動産会社がその取り扱いを行っています。
最初に、持分の査定を依頼します。
弊社では、不動産鑑定士といった専門家が該当不動産の調査を行い、査定額を決定します。持ち主が、その査定額を了解すれば、媒介契約を締結します。
その後、正式な調査報告書を作成し、販売活動を行います。
完全入札方式(ポスティングシステム)により買取希望者を選定し、弁護士、司法書士立ち合いの下、売買契約を締結し代金支払い・受け取りの決済を行います。※依頼された弊社への仲介手数料は発生しません。
この時に所有権移転登記の手続きも行います。
共有不動産の持ち主が変わることで起こりうるトラブルとは
共有不動産の持分は、共有者の合意を得なくても単独で売却することはできます。しかし、売却後も共有名義の不動産であることには変わりありません。
もし親族でない第三者が持分を購入すれば、引き続き他の共有者に持分の売却話を持ち掛けてくるかもしれません。
これを断ると、今度は「共有物分割請求」をされることがあります。
共有物分割請求とは
民法で定められている「共有物分割請求」とは、「共有物に関して、各共有者がいつでもその分割を請求し、共有状態を解消する」権利です。
共有物分割の方法は、現物で分割するのが原則です。
裁判所は、この請求に対して、「①現物分割」「②価格賠償による分割」「③競売し売却代金を分配」の中からいずれかの決定をします。
①現物分割
共有不動産が土地だけの場合に有効な方法です。
土地をそれぞれの持分に応じて分筆し、各共有者がそれぞれの土地の所有者になります。
②価格賠償による分割
共有不動産の持分を1人の共有者がすべて買い取る方法です。
他の共有者との関係を解消するために、共有者の1人が単独で不動産の持分割合に相当する金銭を他の共有者に支払います。
新しく所有者となる人に資金力があることが条件になります。
③競売
①と②の方法をとることができないときの最終手段になります。
共有物分割協議によって訴訟を避ける
共有物分割訴訟が起こされ、共有不動産が競売にかけられてしまうと、共有関係を解消し、売却代金を手にすることができても、その受取額が少なくなるリスクがあります。
訴訟中に共有者内で協議がまとまれば、裁判の判決を待たずに和解案でトラブルを解決することが可能になります。
分筆か、持分買取か、全部売却のいずれかになりますが、不動産を売却することになれば、任意売却となり、一般的に取引されている市場価格に近い相場で取引ができるので競売よりも高く売却できる可能性が残されています。
共有不動産は、親族間であっても第三者が共有者になったとしても、持ち続けることによりトラブルになる可能性が高くなります。
早急に売却するなどして、共有関係を解消することを頭に入れておくのが良いでしょう。
共有持分の売却については、下記でも詳しく解説しています。
共有持分売却の方法は?不動産鑑定士が徹底解説