共有名義の不動産を売りたい!必要な手続きと進め方!

松原昌洙

松原昌洙

共有名義の不動産の売却には、大きく分けて持分のみを売る方法と、物件全てを売る2つの方法があります。

物件を売却する時は共有者全員の合意が必要です。この場合、土地だけなら共有者の人数分に分けてそれぞれの単独名義にする分筆と不動産全てを売却し、その代金を持分割合に応じて受け取る換価分割の2通りの方法があります。

各共有者の持分の売却については、共有者全員の合意を必要とせず、自分の意志のみで売却することが可能です。
それぞれの方法について説明をします。

共有不動産は共有者全員の合意なしでは売却できない

共有不動産には、その建物・および土地の売却において共有者全員の合意がなければ売却できないルールがあります。
他にも、建物全体を改築するような工事、家を壊して駐車場にするといった大幅な変更についても共有者全員の合意が必要です。

共有名義の不動産を売りたい!必要な手続きと進め方!

勝手に不動産を変更したり売却するのは違法行為となります。
このため、度重なる遺産相続で共有者の人数が増えている物件では、全員に連絡をとって合意を得ることは労力が必要になります。
共有不動産は、年月が経つうちに、誰が共有者なのかもわからなくなりますし、共有者およびその人たちの利害が複雑になり、収益や費用の分配だけでなく、売却も変更もしにくい資産となっていきます。

遺産相続で不動産を複数の親族で相続しなければならないときは、その後のことも考えて、共有名義の不動産にならないように相続の仕方を工夫すべきといえます。

共有不動産を売るには3通りの方法があります。

方法1 持分のみを売る

共有者の人数が増えれば、土地と建物全てを売却する合意がとれなくて、売却が進まないことがあります。
この場合、共有者1人の意思で売却ができる方法は、「自分の持分のみを売ること」です。

持分のみを売る

これは、全員で土地や建物を売ってその持分割合を分配して受け取るよりも、多少減額されますが、現金が早くほしい場合や、とにかく不動産の共有関係を早く解消したい人にはおすすめです。

売却は、持分の売買契約を締結、売却代金の受け渡しと同時に所有権を移転登記します。

方法2 土地のみの場合は分筆

共有不動産が土地のみの場合、共有者の持分割合ごとに土地を分けてそれぞれの単独名義にすることができます。
土地の分け方は、単純に面積比で分けるのではなく、土地の価値を考慮して分配されなければなりません。

土地のみの場合は分筆

分筆がまとまれば土地家屋調査士に依頼し、面積を正確に測って境界線を作ります。その後、持分に応じて分筆登記を行い、所有権移転手続きを行えば、それぞれの単独名義の土地になります。

測量に伴う費用は、土地の広さにもよりますが、約50万円が目安で、分筆登記依頼費用は5万円前後です。その後、土地価格の0.4%分を登録免許税として支払います。

分筆登記と所有権移転登記が済めば、その土地は共有不動産ではなく、各共有者の単独名義になり、売却や家を建てるといったことが自由に行えるようになります。

方法3 土地・建物すべてを売却後、代金を持分割合で分ける

共有不動産に建物があると、これをばらばらに分配するのは不可能なので、全てを売却し、その代金を持分割合で分けて受け取る方法がよく用いられています。

代金を持分割合で分ける

共有者全員の物件売却のOKが出れば、売却は次のようなステップで進みます。

通常は共有者全員が売主となり、売買契約書の署名・捺印も全員が行います。この時、印鑑証明書、住民票、本人確認書類なども用意しておきます。
しかし、実際は遠くに住んでいる、都合がつかないなどの理由で売買契約に参加できない人もいます。
このようなときは、共有者の1人が代表者となり、ほかの共有者から委任状を提出してもらって共有不動産の売却手続きを進めることができます。

委任状の内容

委任状には次の事柄を記載します。

・委任者が受任者に委任をすること
・受任者に委任する権限(売却価格決定、売買契約の締結、売却代金受領、決済日、引き渡し日、登記手続きなど)
・委任者の登記簿に記載されている土地情報
・委任者および受任者の住所・氏名・押印

委任状に加えて、印鑑証明書や住民票、本人確認書類のコピーも併せて提出します。もし、住民票の住所と登記簿の住所が転居で違っているときは、本籍地がある役所で住所移転の履歴を交付してもらい、現住所へ移転した経緯を証明する必要があります。

共有名義登記前の相続不動産なら換価分割がおすすめ

相続をしたばかりで、各相続人の持分登記が済んでいない物件では、遺産分割協議で全員が売却に合意していれば、いったん代表者1人の単独名義で不動産を登記して売却手続きを進めれば、ほかの共有者の書類を作成し提出する手間がかからないので効率的です。

このように代表者1人が売却をした後に、その代金を持分に応じて分配する方法を換価分割と言います。換価分割においての代金の支払いは、売却を依頼した共有者への贈与にはあたりませんが、その経緯は書面化するなどして税務署に説明できるようにしておくとよいでしょう。

売却に伴う費用も持分どおりに負担すること

売却は、不動産業者に依頼しますが、仲介費用や売却に伴う経費などが発生します。これらの費用も、すべて持分割合に応じて各共有者に分配されます。支払い請求には、速やかに応じなければなりません。

代表者1人の名義で売却を進めた時も同様です。売却により譲渡所得税が発生する時も、共有者全員が確定申告を行い納税します。

共有持分の売買の流れについては、下記記事でもわかりやすく解説しています。
共有持分を売却する際の売買契約書を解説~作成時の注意点やひな形も紹介します~

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松原昌洙
専門家

松原昌洙(宅地建物取引士)

株式会社中央プロパティー

遺産分割における共有名義不動産の自己持分のみの売買、仲介を取り扱う。複雑な案件でも、これまでの経緯や心情に配慮しながら取引を進める。買取とは異なり、「できるだけ高く売りたい」という要望にも応える。

松原昌洙プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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