不動産を相続するときは、遺産分割を適切に行おう!

松原昌洙

松原昌洙

遺産分割とは、遺産を相続する人の間で相続財産を分配する手続きのことを言います。
遺産分割にはさまざまな形があります。

それぞれの説明とあわせて、共有者間のトラブルを未然に防げる不動産の相続方法を紹介します。

不動産を相続するときは、遺産分割を適切に行おう!

遺産分割とは

日本では、人が亡くなるとその人の財産や負債を相続人が引き継ぐ決まりがあります。

相続人は、遺言で指名された人か、民法で規定された亡くなった人の親族になります。亡くなった人の親族には、その人の親や配偶者、子供がまず頭に浮かびますが、これら以外の親族も相続人に該当する場合が出てきます。

遺言がない場合、相続人の数は増えるので、誰がどの遺産を相続するかを決めることになります。その手続きを遺産分割と言います。

遺産分割協議のメリットやデメリットとは

遺産分割をすることになれば、相続人が集まって相続する遺産を分ける相談をすることから始まります。これを「遺産分割協議」といいます。

この遺産分割協議は、親族だけで行うもので法的拘束力はありません。相続人が全員参加し、それぞれの取り分を決めます。

遺産分割は、民法通りに行う必要はなく相続人同士の話し合いの下で決定することができます。もし、遺言が残されていても相続人全員が合意すれば、その内容に従う必要もありません。

この方法は、相続人たちの間で話し合いをするだけのものなので、費用がさほどかからないメリットがある反面、相続人全員が出席していなければ取り決めは無効になってしまいます。

相続人の人数が多い場合は、意見の対立などで全員の合意に達することができず、遺産分割が進まなくなるリスクもあります。

遺産分割は速やかに行うべき。その理由は?

遺産分割は、自分が相続人になることがわかればできるだけ早く相続手続きを済ませるべきです。

なぜなら、遺産の中には借金も含まれていることがあるからです。

もしプラスの遺産がなく、負の遺産、つまり「借金」しか残っていない場合、民法の規定では「自分のために相続があったことを知ってから3か月以内」に相続放棄や限定承認の手続きをとらなければ自分が借金を返済することになってしまいます。
この期間を「熟慮期間」と呼んでいます。

相続人の数が多く、手続きに時間がかかる時は、申し立てにより熟慮期間を延長することは可能ですが、認められないこともあります。

借金の相続は、最初の熟慮期間内に相続放棄か限定承認の手続きを完了すべきといえます。

不動産の遺産分割で注意することは

遺産の中に不動産が含まれていると、相続人間で取り分をめぐって対立が起こることがよくあります。また不動産はその価値が変動することから、相続後も不公平感を引きずりやすくなります。

このように、親族の間で意見がまとまりにくい不動産の遺産相続のポイントは、1つの物件を複数の人で所有する共有名義を極力避けることです。

共有名義の不動産にはリスクが多い

共有名義は、所有者がそれぞれ自分の持分を決定して、各人が別々に不動産の持分を登記する方法です。

建物を伴うことが多い不動産は、共有者の持分割合ごとにバラバラにして使うということが不可能です。

そのため「共有名義」にして、物件全体を共有者全員で使用しながら、その不動産から出る収益や維持・管理費用などを持分割合ごとに共有者で分担しあう方法をとるのですが、不動産の管理からその運用に至るまで、必要に応じて共有者の合意をとらなければならない決まりがあります。

不動産の改築や売却といった大幅な変更などは、全員の合意が必要になり、一人でも反対すれば実行できません。

長年共有名義で不動産を持ち続けると、やがて共有者間の意見や利害が対立し不動産の運用が止まってしまうリスクが高くなるのです。修理などのメンテナンスもできなくなれば、不動産の価値は落ちるばかりです。

不動産の遺産分割方法とそれぞれのメリットやデメリット

共有名義を避けて不動産を遺産相続するには3つの方法があります。

【1.現物分割】
相続人が複数いても、1人だけが現物を取得します。その人が相続税もすべて支払い、その後の運用・管理も行います。

現物分割をした不動産の他にも遺産があり、それら全てを含めて相続人全員が公平に相続できるかどうかが不公平感をなくすポイントといえます。

【2.代償分割】
1つの不動産を1人の相続人が取得しますが、残りの相続人に対しては、その代償金を支払います。
不動産を相続する人が、不動産を持たない相続人に対して、本来相続すべき持分の代金を支払う方法です。

相続人間で不公平感も少なくなりますし、相続した人がその後売却を決意すれば、自由に処分することもできます。
この方法は、不動産を相続する人に資金力があることが前提となります。

【3.換価分割】
不動産を売却して、その代金を持分割合に応じて受け取る方法です。
不動産を現金化するため、分割が容易になり、売却すればその後の管理やメンテナンスの必要もなくなります。

デメリットは、不動産の規模により売却に伴う費用や税金も高額なものになることです。
売却代金からこれらの費用を差し引けば、手元に残るお金が少なくなります。

遺産分割がまとまれば遺産分割協議書を作成する

不動産を遺産分割する方法は、共有名義にすることも含めれば4つあります。

相続人の間で話がまとまれば、弁護士に依頼するなどして全ての遺産の分割明細書を作成し、相続人全員の署名と捺印をします。

その後、この書類に基づき遺産分割を行い、不動産については相続登記を行います。

遺産分割の方法や流れについては、下記記事でもわかりやすく解説しています。
共有持分と遺産分割について

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松原昌洙
専門家

松原昌洙(宅地建物取引士)

株式会社中央プロパティー

遺産分割における共有名義不動産の自己持分のみの売買、仲介を取り扱う。複雑な案件でも、これまでの経緯や心情に配慮しながら取引を進める。買取とは異なり、「できるだけ高く売りたい」という要望にも応える。

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