親族が共有名義の不動産を勝手に使ってる!どうすればいい?

松原昌洙

松原昌洙

共有名義の不動産では、その取り扱いをめぐって親族間でトラブルになることがよくあります。

トラブルは法律に基づいて解決していきます。
解決にはさまざまな方法がありますが、互いに不利益にならないようにできるだけ円満に解決するためには、弁護士や不動産専門家にアドバイスをもらいながら対処する方が良いと言えます。いくつか事例を紹介します。

親族が共有名義の不動産を勝手に使ってる!どうすればいい?

共有名義不動産の管理について

不動産を遺産相続して複数で共有する時は、民法に定められた割合で分割して所有するルールとなっています。

共有名義では1つの不動産に対して複数の所有者がいます。
それゆえ相続後、不動産についてのさまざまな事柄に対処する時は、共有者どうしで話し合わなければなりません。
共有名義の不動産は、物件の維持や管理、運営などについては、共有者が持つそれぞれの持分を基本として協議を行い決定、実行していきます。

例えば、相続した不動産を全て売りたいと思った場合、共有者全員の合意が必要となります。
また、残された親の古い家を処分し、賃貸アパートを建てて経営するといった変更についても共有者全員の合意が必要になります。

全ての事案において、共有者全員の合意が必要というわけではなく、相続した家のエアコンが故障して修理をしたという程度のことであれば、共有者1人の判断で修理を行うことができます。

しかし、この修理代についてはそれぞれの持分の割合に応じて負担しなければなりません。

マンションを共有している時、管理費の支払いも持分割合に応じて共有者全員で分担するのが原則です。

共有名義不動産の管理で多い親族間のトラブル

共有名義の不動産は、常に共有者間で協議を行いながら維持管理をしなければならず、互いの利害が対立しトラブルが発生することがよくあります。

もし、共有者同士が譲り合うことなく主張を続ければ、問題は解決せず、その結果不動産は手を加えることができなくなるため放置されることになります。建物が老朽化するなどして、その資産価値が落ちるだけのお荷物となってしまいます。

このようなトラブルを未然に防ぐには、自分が不動産を託す側なら、トラブル回避ができるような形で遺産を相続してもらえるよう遺言を残しておくのがよい方法です。

もし遺言がない時、トラブル回避のポイントは「とりあえず法律通りに分割して相続しておこう」というのではなく、弁護士などの専門家に間に入ってもらいながら、共有名義を避ける方向で相続を進めることです。

安易に「分けて終わりにする」だけでは、その後トラブルが起こるリスクが高まります。そうなれば、自分たちだけでは解決できません。

いくつかの事例を見てみましょう。

共有名義不動産管理のトラブル事例と解決実例

相続したマンションを2人で共有していたが、固定資産税や管理費の分担金を支払わない共有者Aがいた。
別の共有者Bが、Aの分を代わりに支払い続けており、BはAに未払いの固定資産税や管理費の支払いを要求したところ、Aは、自分の持分を親族でない第3者Xに売却してしまったので、支払わないと主張した。


まず共有者は、持分の割合に応じて不動産に関わる税金やマンションの管理費を負担しなければなりません。
この場合、Bは、Xに対してAの未払い分の管理費を請求することができます。
もし、Xが請求されてから1年以内にこの義務を果たさなければ、Bは、Xの持分相当額を買い取り、Xの持分を取得することができます(「強制買取制度」と言います)。

【事例2】
亡き父から、兄弟3人で賃貸アパートを相続した。このアパートには兄弟3人全員は住んでいないが、居住者がおり3人の均等割りで家賃収入を受け取っている。

兄が、この不動産にマッサージサロンを開設するため、残りの2人の承諾なしにアパートの改修工事を行い、営業を始めてしまった。
兄は「持分があるので家賃を払う必要がない」と主張している。


兄が弟2人に事前に同意を得ずにアパートの改装工事を行うのは不法行為にあたります。
改装は、本来なら、過半数の持分の同意が必要だった不動産の変更行為です。
2人の弟には、改装前の状態へ復旧することや損害賠償を請求する権利はあります。
しかし、復旧は他の居住者にも迷惑がかかるということでそれを行わず、代わりに改装費用を兄が全部負担し、その後、その店の家賃も兄が支払うことになりました。

【事例3】
父が亡くなり、両親の家を母と兄弟3人で共有名義で相続した。母はその後も兄と同居し兄が母の面倒をみていたが、母も他界した。
その後、弟が、両親が住んでいた家を売却したいと申し出てきた。兄が売却を拒むと、共有物分割請求の訴訟を起こすとの返答があった。兄には弟の持分を買い取るほどの資金力はない。
裁判を経ずに不動産を処分する方法は?


不動産会社の仲介で、兄弟合意の下、第三者に不動産を売却しました。
母の持分だった分は、基礎控除額により相続税は発生せず、兄弟に大きな負担がかかることもありませんでした。

共有名義不動産のよくあるトラブルや解決方法については、下記記事でも解説しています。
【共有持分の実情】~よくあるトラブルもご紹介~

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松原昌洙
専門家

松原昌洙(宅地建物取引士)

株式会社中央プロパティー

遺産分割における共有名義不動産の自己持分のみの売買、仲介を取り扱う。複雑な案件でも、これまでの経緯や心情に配慮しながら取引を進める。買取とは異なり、「できるだけ高く売りたい」という要望にも応える。

松原昌洙プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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