死別した亡き人と会うために後追いを考えている人へ

日高りえ

日高りえ

テーマ:グリーフケア

大切な人を亡くした時、極端な場合には後を追うことを考えてしまうこともあります。愛する人に会いたい、悲しみから逃れたいという一心で死にたいと思ってしまいます。しかし、急ぐ必要はありません。人は必ずいつかは死にます。自分から会いに行かなくても、必ず会えるものです。

亡くなった人も、会いたい気持ちは同じです。それでも、後追いしてまで早く来て欲しいと願ってはいないはずです。生きることができなった分、亡くなった人の分まで精一杯生きましょう。生ききりましょう。

死にたいと思うのは当然のこと

大切な人を亡くすという経験は、遺された人にとても大きな影響を及ぼします。それが配偶者や子どもであったり、突然の思いもよらないものであったりすればなおのことです。個人差もありますが、死別の際の反応が複雑で重症化すれば考えが極端になってしまうことがあります。

その最たるものが、自分も死んでしまいたいという感情です。
死別直後から様々な感情の嵐が吹き始めます。心が凍り付いたように麻痺してしまったかと思えば、こんなことが起こっていいはずがないと怒りがでる。愛する人を失いどうやって生きていったらよいのかと不安にもなります。

そして、世界中で自分だけが取り残されてしまったように寂しくなってしまうこともあります。亡くなったのは自分に責任があるという罪悪感。そして、生きる張り合いがなくなり襲われる無力感…。

続く悲しみのさなかで、何度も亡くなった人に生き返って欲しいと考えることでしょう。戻ってきてくれるのならば、どんなことだって耐えると願います。
しかし、残念ながらその願いは叶うことはありません。求め続けても叶えられない状況が続くと、憂鬱になり疲労感が心身をむしばんでいきます。こうして心の重荷が重くなっていくと絶望に支配されてしまいます。

絶望の中で孤独を感じる

絶望の真っただ中にある時、人は社会的に引きこもってしまいがちです。悲しみや辛さといった心の内をさらけ出すことが難しく、孤独を感じやすくなっています。周囲との関係を断ち、人と会って話すことを避けるようになります。誰とも会いたくなくなり、引きこもってしまうことで社会的に孤立しやすくなります。仕事をしている人でも、気分がよくないからと休みがちになったり、元気にふるまってはいても家では気分が沈みがちなります。世間のことにも興味が持てなくなり、新聞やテレビも見なくなってしまうことがあります。

特に配偶者を亡くした場合では、遺された方もみるみる元気がなくなり後を追うように亡くなってしまうことがあります。配偶者を亡くすと自暴自棄になり、もう死んでも構わないという心境に陥る方もいます。そのような落ち込んだ時期に、様々な要因が重なって、亡くなる率が上がると考えられます。

睡眠障害やストレスにより体調不良に陥る

死別後、抑うつ気味になり、しばらく時が過ぎて落ち着いたように見える頃になって孤独感が襲ってきます。

そこに睡眠障害や暴飲暴食、ストレスによる体の不調などが重なって体調を崩してしまいます。体内の抵抗力も弱まっているので、免疫系も通常よりも働きが鈍くなっているおり病気になりやすい状態です。それでも回復しようという気力が起こらないために、亡くなってしまうことがあります。

このような状態にならないまでも、孤立した状態は決してよいことではありません。相談する人もいないため考えが独りよがりになりがちになってしまい、

「(亡くなった人に)会いたいのに会えない。それなら、自分が死ねば会えるよね。生きる気力もないし。」

このような結論に至ってしまうこともあります。「会いたい」と「死にたい」はイコールの部分もありますから、死にたいと思ってもおかしなことではありません。また、死んでしまえば今の悲しみからも逃れられるわけですから、素晴らしい思い付きのように感じます。

考え方が変われば死ななくても一緒に生きていける

自分も後を追ってしまいたいという気持ちは、亡くなった人への愛情の深さ故です。そこまで思いつめる気持ちそのものは素晴らしいものです。こんなにも愛されていた方はとても幸せな方だと思います。そして、そんなにも愛せる方も素晴らしい方だと思います。

でも、ちょっと考え直してみてください

亡くなった人は、少しだけ先に向こうの世界に出かけただけです。お出かけのときにも、片方が先に出て後で待ち合わせをすることもありますよね。

もちろん、生きていた時よりも亡くなってからの時間の方が、とても長く感じます。だからこそ、待ち合わせまでの時間が長くなることは否めません。それでも、おそらく死んだ後に一緒に過ごせる時間の方が長そうですよね。

人の死は、だれかが決められるものではなく、どうあがいてもいつかはみんな平等に死にます。それなら、生きているうちにできること、やりたいことをやりつくして、生きつくして生ききってから愛する人に会いに行った方が、あちらで楽しく話もできるのではないでしょうか。

もし、一時の思い込みで後追い自殺をしてしまったなら、亡くなった人は喜びません。自分の分まで生きてくれることを望んでいるはずです。そして、あなたを生ききるのをずっと応援しているはずです。それこそが、亡くなった方の今の喜びです。亡くなった方が大切に思っていることは、あなたが幸せに生きていくことです。あなたの幸せが、亡くなった人の幸せになります。

「死にたい」と思っても少しもおかしなことではありません。大きな試練を背負ってしまったかもしれませんが、それでも、亡くなった人の分までめいっぱい人生を謳歌してください。それは、悲しむことを止めたり、亡くなった人を忘れてしまうことではありません。苦しみや悲しみがありながらも、自分自身の気持ちを大切にしながら、あなたの人生を一歩一歩、歩むことです。
たとえ悲しむ気持ちが薄れても、それは亡くした人への愛情が消えたわけではありません。死別から立ち直ることと、愛することを止めることは別物です。

死は永遠の別れではありません。遺された人の心の中には亡くなった人が生き続けます。歌にもなった「千の風になって」の詩にあるように、大切な人はいつもそばで見守っていてくれているのです。

死別の悲しみから立ち直るためには、亡くなった人を自分の大切な存在として心のなかに居場所をつくりましょう。そうすることで、自分に遺してくれたものを改めて考えることができます。未来へ踏み出す勇気と力も与えてくれることでしょう。


グリーフケアカウンセラー 日高りえ

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日高りえプロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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