伝わらないの脳科学──組織を動かす伝え方の真実
私は、心理学や脳科学を使って”無理なく成果が続く”サポートをしています。
ダイエットでもビジネスでも、人が成果を出すプロセスには、必ず“心の構造”が関わっています。
この“心の構造”を理解し、行動の再現性を高めることが、私の専門です。
たとえば、
最初はうまくいっていたのに、なぜか続かなくなる──。
それは、運が良かったわけでも、能力が足りないわけでもありません。
多くの場合、
• マーケティングや営業トークなどの戦略面の課題
• 無意識の焦点やビリーフの変化といった心理的な要因
が影響しています。
どちらも整ってこそ成果は続きますが、今回は、ダイエットから少し離れ、営業のビギナーズラックを例に、この現象を心理学的に読み解いていきます。
最初の頃に起きていたこと
始めたばかりの頃は、「これ本当にすごい!」「誰かの役に立つはず!」という純粋なワクワクで行動しています。
このとき私たちは、無意識レベルで“自分を信じている”状態。
つまり、ビリーフ(信念)が「これはうまくいく」に完全に一致しているのです。
だからこそ、言葉にも表情にも“説得しようとしない自然な力”が宿ります。
相手はそのエネルギーを感じ取り、「なんかこの人いいな」「信じてみようかな」と共鳴してくれる。
それが、いわゆるビギナーズラックの正体です。
心理学的に言えば、これは自己効力感と肯定的ビリーフが高い状態。
この“軽やかさ”が、相手にも伝わり、自然と人を巻き込む力になっていたのです。
うまくいかなくなるとき、無意識で起きていること
ところが、続けていくうちに次のような変化が起こります。
・相手の反応が気になり始める
・「ちゃんと説明しないと伝わらない」と思うようになる
・「前に理解されなかった部分」を補おうとして力が入る
意識の焦点が「伝えたい」から「理解してもらわなきゃ」に変わる瞬間です。
このとき無意識では、「私は理解されにくい」「しっかり説明しないと伝わらない」というビリーフが作動し、伝えようとするほど“伝わらない前提”のエネルギーが生まれてしまいます。
これは心理学でいう自己成就予言の一種。
「理解されない」と思うほど、実際に理解されない現実を自分で引き寄せてしまうのです。
心の構造から見た流れの変化
最初のうちは、「これが好き」「これを伝えたい」という純粋な動機から行動していました。
しかし、結果を意識するようになると、「どうすれば伝わるか」「どう話せば納得してもらえるか」へと焦点が移動します。
このズレを心理学では自己一致の喪失と呼びます。
つまり、「本来の思い」と「発信する自分」が少しずつずれていく状態です。
さらに脳科学の観点から見ると、RAS(網様体賦活系)は“信じていること”を優先的に拾います。
「私は理解されにくい」と信じていると、無意識が“理解されない出来事”を見つけ出し、「やっぱりそうだ」と確信してしまうのです。
脳の焦点が変わると、言葉も表情も変化し、行動全体のエネルギーが変わっていきます。
再び流れを取り戻すには
うまくいかなくなった時ほど大切なのは、「なぜそれをするのか」という原点に戻ることです。
最初は、誰かを説得したかったわけではなく、“純粋に良いと思ったことを伝えたかった”だけ。
“そのものを通じて、人や社会を良くしたかった”はずです。
そこに立ち戻ると、無意識が再び自然な流れを取り戻します。
たとえば、
・説明よりも「共感」から話す
→ 商品説明の前に、実体験や事例を伝える
・「なぜ伝えたいのか」を確認する
→ この商品を通じて誰を助けたいのか、どんな志・ビジョンがあるのかを伝える
・伝わらなかった経験を“修正点”ではなく“気づき”として扱う
このシフトが、再び自然な流れを生み出す“再現スイッチ”です。
まとめ:理解されることより、感じてもらうこと
ビギナーズラックは偶然ではありません。
それは、「これはうまくいく」というビリーフが一致していた状態の結果です。
成果が止まったときは、「何を説明するか」ではなく「なぜそれを行うのか?」に立ち戻る。
無意識の前提が変われば、言葉や表情が変わり、相手の反応も自然と変わっていきます。
マーケティングの本質は、「人は理解して買うのではなく、感じて買う」こと。
最初の「なぜこれをしたいのか」という気持ちに戻ること。
それが、再び動き出すスタートです。



