【中小企業AI導入事例 第1回】業務時間60%削減を9ヶ月で実現した老舗インフラ企業の取り組みとは
このたび、一般財団法人 製粉振興会が発行する機関誌『製粉振興』2026年5月号(No.642)に、AGO MARKETING株式会社 代表取締役 吾郷潤による論文「無料AIツールで現場が変る ~静岡・佐々木製茶における4つのDX実践事例~」が掲載されました。
本論文は、当社が継続的にDX推進支援を行っている静岡県掛川市の佐々木製茶株式会社での取り組みを、佐々木社長ご自身に内容を監修いただきながら、製茶業界に対してどのようにAIを浸透させていったかを実践的にまとめたものです。
掲載誌は製粉振興会の公式サイトでデジタル版がご覧いただけます。
『製粉振興』2026年5月号(P.22~29に論文掲載)リンク
掲載に至った経緯 ―製茶業界の事例が、なぜ製粉業界誌に?
「なぜ製茶業界の事例が、製粉業界誌に?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。きっかけは、製粉振興会の編集ご担当者へ、佐々木製茶での事例をご紹介させていただいたことに始まります。
業種は違えど、製粉業界と製茶業界には驚くほど多くの共通点があります。
- 農産物を原料とする加工業であること
- 熟練技術者の「経験と勘」に依存する品質管理
- 繁忙期と閑散期の波がある短期集約型の生産体制
- 原料特性に応じた加工技術の最適化
- 労働人口の高齢化と後継者不足
こうした構造的な共通課題があるからこそ、製茶業界での具体的な事例が、製粉業界でAI導入を検討される企業の参考になる可能性が高いと考えました。事例をご紹介したところ、編集ご担当者から大変ご興味を持っていただき、今回の論文執筆および掲載に至った次第です。
論文の概要 ―佐々木製茶における4つのDX実践事例
本論文では、創業大正10年、約150軒の茶農家が共同出資して設立された100年企業・佐々木製茶が直面する経営課題に対し、当社が伴走支援した4つの取り組みを紹介しています。
1. NotebookLMによる技術伝承 ―茶師の暗黙知をデジタル化
お茶の香味を左右する「火入れ」「ブレンド」工程は、長年の経験を持つ茶師の暗黙知に支えられています。その日の気温、湿度、茶葉の品種、収穫時期、さらには使用する乾燥機の種類(遠赤外線・温風)によっても最適条件が変わるという繊細な技術です。
この技術を次世代に継承するため、茶師への計3回のインタビューを実施。録音データを文字起こしし、手書きの過去データも画像認識技術でデジタル化したうえで、Googleが提供する無料AIツール「NotebookLM」に読み込ませました。これにより、過去の類似条件をすぐに検索・参照できる仕組みを構築しました。
2. 現場視察と「現場主体」のAI導入スタンス
本プロジェクトで特に大切にしたのは、「コンサルタントが一方的にシステムを構築するのではなく、現場の社員自身がAIを使いこなせるようになる」というスタンスです。
無料の生成AIツールやGoogleスプレッドシートの使い方をレクチャーした結果、社員の皆様がそれぞれの業務課題に合わせて、自発的に活用方法を考案・実装してくださいました。後日開催された活用事例発表会では、予想を大きく上回る成果が次々と報告され、社長が「ここまでできるようになったのか」と拍手を送る感動的な場面もありました。
3. 在庫管理のデジタル化 ―人間関係の改善にも
パッケージング工程で紙やホワイトボードを用いて行われていた在庫管理を、Googleスプレッドシートに移行。記入漏れや転記ミスが大幅に減少しただけでなく、「誰がいつ入力したか」が自動的に記録されることで、ミスをめぐる人間関係の摩擦も解消されました。
業務効率化と職場環境の改善を同時に実現した、小さくも大きな変化でした。
4. Grokを活用した顧客起点の販売戦略策定
「商品ありき」の姿勢から「顧客起点」への転換を支援するため、X(旧Twitter)の投稿データにアクセスできる生成AI「Grok」を活用し、SNS上の顧客の声を収集・分析しました。
抽出された顧客インサイト(「自分の選択に誇りを持ちたい」「自分への投資として消費を正当化したい」など)と、社長が長年抱いてきた「現代の消費者は急須を使った本来の淹れ方を知らない」という現場感を掛け合わせた結果、「お茶の正しい淹れ方・楽しみ方そのものを体験としてサポートする」という新たな営業戦略の方向性が浮かび上がりました。
業界を越えて事例が波及することを願って
論文の結びでは、これらの取り組みが製粉業界にも応用可能であることを述べさせていただきました。本事例で活用したのは、NotebookLM、ChatGPT、Googleスプレッドシート、Grokなど、いずれも無料または安価で利用できる汎用ツールばかりです。
重要なのは、高額な専用システムを導入することではなく、こうした汎用ツールを現場の従業員が自ら使いこなせる環境を整えること。そして、現場に足を運び、現場で働く人々の課題と思いを深く理解することです。
当社では、「AIとアートで地方にありがとうの花を咲かせる」というビジョンのもと、農産物加工業をはじめとする地方の中小企業のDX推進を支援してまいりました。今回の論文掲載を通じて、製茶業界での知見が製粉業界へ、そしてさらに様々な業界へと波及していくことを心から願っております。
業界の垣根を越えた事例の共有こそが、日本の中小企業全体のDXを加速させる原動力になると、私たちは信じています。
論文をお読みいただけます
掲載論文の全文は、製粉振興会の公式サイトよりPDFでご覧いただけます。論文はP.22~29に掲載されております。
リンク
一般財団法人 製粉振興会『製粉振興』2026年5月号
農産物加工業の経営者の皆様、AI導入をご検討中の中小企業の皆様にとって、何かしらのヒントになれば幸いです。
監修・ご協力
佐々木製茶株式会社 代表取締役 佐々木様
一般財団法人 製粉振興会 編集ご担当者の皆様
本記事に関するお問い合わせ
AI導入・DX推進に関するご相談は、AGO MARKETING株式会社までお気軽にお問い合わせください。
製造業、農産物加工業、地方の中小企業様の業務効率化と新規事業創出を、「Art & Science」のアプローチで伴走支援いたします。
AGO MARKETING株式会社
代表取締役 吾郷 潤
本社:東京都新宿区西新宿


