【中小企業AI導入事例 第1回】業務時間60%削減を9ヶ月で実現した老舗インフラ企業の取り組みとは

吾郷潤

吾郷潤

テーマ:中小企業のAI活用事例

「定年退職で熟練技術者が減っていくのに、若手の採用は追いつかない。それでも残業を増やすわけにはいかない」――。

中小企業の経営者の方から、こうしたご相談を受ける機会が急速に増えています。少子高齢化と人材獲得競争の激化が同時に進む現在、人手不足は中小企業の経営課題の最上位に位置していると言っても過言ではありません。

そこで本記事では、AGO MARKETINGがAI導入のご支援をさせていただいた株式会社協振技建様(東京都文京区/創業1963年)が、9ヶ月で業務時間を約60%削減した取り組みを、具体的なステップに沿ってご紹介します。

「AIを導入したいが、何から始めればいいのか分からない」「現場の抵抗感をどう乗り越えればいいのか不安」――そうお考えの中小企業経営者の方に、実践的なヒントをお届けできれば幸いです。


写真:株式会社協振技建 取締役 営業部長 村山賢持様
(※写真:株式会社協振技建 取締役 営業部長 村山賢持様)

■ 直面していた課題:人手不足・長時間労働・技術継承の「3重苦」



協振技建様は、測量・設計・GIS(地図情報システム)など、都市インフラを支える専門領域で60年以上の歴史を持つ会社です。同社が抱えていた課題は、多くの中小企業に共通するものでした。

第一に、慢性的な人手不足です。定年退職で熟練技術者が現場を離れる一方、採用は思うように進まない。

第二に、長時間労働の常態化です。部署によっては月60時間ほどの残業が発生していました。働き方改革の観点からも、これ以上の業務負荷は限界に達していました。

第三に、技術継承の危機です。ベテランが持つ暗黙知やノウハウが、文書化されないまま属人化していました。退職とともにその知見が失われるリスクが目前に迫っていたのです。

人員増加・システム導入・業務分業化・パートナー企業との連携など、これまでも様々な手を打ってきたものの、抜本的な改善には至っていませんでした。


■ 「AIに仕事を奪われる」という不安をどう乗り越えたか



AI活用に踏み切ろうとした際、社内には予想通り抵抗の声がありました。「仕事のやり方が変わってしまうのではないか」「AIに仕事を奪われるのではないか」――技術を磨き続けることに誇りを持ってきた会社だからこその懸念です。

この種の心理的抵抗は、中小企業のDX推進で必ず直面する壁です。私たちが大切にしたのは、「ツールを売り込む」のではなく「現場と一緒に課題を整理する」ところから始めることでした。

具体的には、以下の手順で進めました。




【第一段階:18部署すべてに対する個別ヒアリング】

「この業務に時間がかかっている」「この作業が属人化している」といった現場の声を、一つひとつ丁寧に拾い上げていきました。本社の役員会議室ではなく、現場で行うことを徹底したのがポイントです。


【第二段階:「試作品」を見せながら具体的に提案】

ヒアリングで挙がった課題ごとに、「このAIで、こう改善できます」という試作品をお見せしました。抽象的な提案ではなく、具体的な動作デモを見ることで、AIに慣れていない社員でも「これなら自分にもできそうだ」というイメージを持っていただけました。

【第三段階:セキュリティを担保したNotebookLMの採用

情報セキュリティへの不安に応える形で、NotebookLMを採用しました。NotebookLMは、社内にアップロードしたデータ「だけ」を参照して回答を生成するAIです。ガス情報や個人情報を扱う同社のような企業でも、安心して活用できる仕組みです。


■ 成功の鍵は「若手×ベテラン」の二人三脚体制




実際の効果検証では、各部署から「若手と上司」のペアを1組ずつ選び、合計36名でプロジェクトを推進しました。

若手はAIへの抵抗が少なく、積極的に新しいツールに触れます。一方、上司は業務の流れや本質的な課題を熟知しています。この2つの強みを掛け合わせることで、「使えるけれど業務に合わない」「業務は分かるけれど触れない」というありがちな失敗パターンを回避できました。

さらに、月2回の定例会を設け、各部署の進捗を全員で共有しました。他部署の成功事例を聞くことで「うちも負けていられない」という前向きな競争意識が自然に生まれ、組織全体に活用の機運が広がっていきました。


■ 成果:業務時間60%削減と技術継承の同時実現


9ヶ月の取り組みで生まれた成果は、大きく分けて2つです。




ひとつめは、業務効率化の実現です。部署によっては作業時間を約60%削減でき、限られた人数でも業務が回る体制が整いました。月60時間あった残業が圧縮され、社員の働き方にも明確な変化が現れました。

ふたつめは、技術継承の前進です。ベテランの指導やトップセールスのプレゼンを録音し、それをAIに取り込んで、新人が理解しやすい資料や動画として再構成しました。口頭の説明よりも体系的に伝わるようになり、教える側の負担も大きく減りました。

担当者である取締役営業部長の村山様からは、「伴走型サポートで、AIに詳しくない社員も無理なく実践力が身についた。今では積極的にAI活用する雰囲気に変わった」とのお言葉をいただいています。

■ 中小企業がAI導入を成功させる3つのポイント



最後に、本事例から導き出される、中小企業がAI導入で成果を出すための要点を3つにまとめます。

【ポイント① 現場の困りごとからスタートする】

「流行っているAIを入れる」のではなく、「この業務をどう楽にするか」から始める。これが現場の納得感を生み、定着につながります。

【ポイント② 若手と熟練者をペアで動かす】

AIへの感度と業務知識は、一人の中に同居しにくいものです。だからこそチーム編成で補完し合うのが現実的で効果的です。

【ポイント③ セキュリティを担保したツール選定】

NotebookLMのように、社内データだけを参照する仕組みを使えば、情報漏洩リスクを抑えながら高度な活用が可能になります。


■ おわりに|「自走するDX」を実現するために


協振技建様の事例で最も大きな成果は、業務時間の数字よりもむしろ、「コンサルがいなくても自走できる組織文化」が芽生えたことだと考えています。

AI導入は、ツールを買えば終わるものではありません。現場の人が自分たちの言葉でAIを使いこなし、自ら改善し続ける状態――そこに到達して初めて、本当の意味でDXが完成します。

「うちでもAI活用を始めてみたいが、どこから手をつければいいか分からない」「導入してもうまく使われる気がしない」――そうお感じの中小企業経営者の方は、ぜひ一度、無料相談をご利用ください。御社の業種・規模・現場の状況に応じた、現実的な第一歩をご一緒に考えさせていただきます。

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【次回予告】
本連載「中小企業AI導入事例」第2回では、営業・経理・物流の3領域を同時にAI化し、年間3,150万円のコスト削減を実現した三谷興業様の事例をご紹介します。

【無料相談のご案内】
AGO MARKETINGでは、中小企業経営者向けの無料相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。

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吾郷潤
専門家

吾郷潤(AI活用コンサルタント)

AGO MARKETING株式会社

サントリー、ユニリーバ、ディズニー、NECで20年以上培ったマーケ・データ分析・生成AIの知見を、中小企業向けに最適化。攻めと守りを両輪で回し、年間数千万円規模のインパクトを創出します。

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