「がんばれ」は励ましなのか ― 子どもを追い詰めてしまう言葉の正体 ―

仁田楓翔

仁田楓翔

「がんばれ」が届かない子どもたち


「がんばれ」という言葉は、日本ではごく自然に使われる励ましの言葉です。

試験前や習い事の場面などで、子どもに向けて何気なくかけられることも多いでしょう。

しかし、指導の現場に立っていると、この言葉によって表情が曇る子どもに出会うことがあります。

本来は背中を押すはずの言葉が、なぜ逆の作用を生んでしまうのでしょうか。

子どもは、すでに頑張っている

多くの子どもは、決して努力していないわけではありません。

むしろ、自分なりに精一杯取り組んでいます。

わからない問題に向き合い、間違えながら考え、時には不安を抱えながらも机に向かっています。

そのような状況の中で「がんばれ」と言われると、「まだ足りないのか」「もっとやらなければならないのか」と感じてしまうことがあります。

励ましが“圧”に変わるとき


本来、励ましとは、相手の状態を受け止めたうえで前に進む力を支えるものです。
しかし「がんばれ」という言葉は、相手の努力の有無にかかわらず、さらなる努力を求めるメッセージとして伝わってしまう場合があります。
とくに、すでに限界に近い状態にある子どもにとっては、この言葉がプレッシャーとなり、思考や行動を止めてしまうこともあります。


必要なのは、努力を重ねる言葉ではない


もちろん、「がんばれ」という言葉がすべて悪いわけではありません。
状況によっては、適切な後押しとなることもあります。
ただし重要なのは、「いま、その子がどの状態にあるのか」を見極めることです。
すでに努力を重ねている子どもに必要なのは、さらなる負荷ではありません。
「ここまでよくやっていますね」
「どこが難しいですか?」
「一緒に考えてみましょう」
こうした言葉が、次の一歩を支えます。

安心できる環境が、挑戦を生む


人は、安心できる環境の中でこそ、新しいことに挑戦できます。
失敗しても大丈夫だと感じられるとき、はじめて思考は前に進みます。
教育において重要なのは、「どうやって頑張らせるか」ではなく、「どうすれば安心して挑戦できるか」という視点です。
子どもが伸びるとき、それは追い込まれているときではありません。
自分のペースで挑戦できると感じているときです。

いま、その子に必要な言葉は何か

「がんばれ」という言葉は、決して間違いではありません。
ただし、それが本当に相手を支える言葉になっているかは、常に問い直す必要があります。
いま、この子に必要なのは、さらに背中を押す言葉でしょうか。
それとも、安心して立ち止まれる言葉でしょうか。
その問いを持つことが、子どもの成長を支える第一歩になるのではないでしょうか。

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仁田楓翔
専門家

仁田楓翔(塾講師)

BesQ

自己肯定感を育て、子どもが自ら学び始める仕組みをつくる教育。小さな成功体験を丁寧に積み重ねることで、「できない」から「できた」に変わる瞬間を設計し、やる気に頼らず成績と意欲を同時に伸ばします。

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