「ケアレスミスが多い」という指摘で、学力は本当に伸びるのか
「叱ってもダメ」
「褒めても変わらない」
保護者や教育現場で、こうした声を聞くことは少なくありません。
一生懸命関わっているからこそ、無力感を覚えてしまう場面です。
しかし、この状況は「叱り方」や「褒め方」が間違っているから起きているとは限りません。
むしろ多くの場合、別の次元で問題が起きています。
叱る・褒めるは「行動」への介入
叱ることも、褒めることも、本質的には行動へのフィードバックです。
・提出した
・間違えた
・集中していた
・点数が上がった
こうした「外から見える結果」に対して、
言葉をかける行為だと言えます。
一方で、学力は行動そのものではなく、
行動を生み出している内側の仕組みによって決まります。
この内側が整っていない場合、どれだけ外側から刺激を与えても、変化は長続きしません。
伸びないときに起きている三つの状態
叱っても褒めても伸びない子どもには、
次のような状態が見られることが多くあります。
① 何をすればよいかが分かっていない
「がんばろう」
「次は気をつけよう」
こうした言葉は方向性が抽象的です。
子ども自身の中で
次の行動が具体化されていないと、
改善は起きません。
② 自分の力で再現できる感覚がない
褒められて一時的にやる気が出ても、「またできる」という感覚がなければ、
行動は再現されません。
これは能力の問題ではなく、再現可能な学習経験が不足している状態です。
③ 認知的負荷が高すぎる
内容が難しすぎる、手順が整理されていない、
考えることが多すぎる。
このような状態では、叱られても、褒められても、脳が処理しきれません。
モチベーション以前に必要なもの
しばしば、「やる気の問題」として語られがちですが、多くの場合、問題はそこではありません。
やる気が出ないのではなく、やるための構造が整っていないのです。
・どこから手をつけるのか
・何を基準に判断するのか
・どこまでできればよいのか
これが見えていない状態で、感情的な働きかけを続けても、学習は安定しません。
必要なのは「評価」ではなく「設計」
叱ることも、褒めることも、使い方次第では有効です。
しかしそれは、学習の設計が整っていることが前提になります。
・理解と再現を分けて考える
・ミスを「注意不足」ではなく「構造の問題」として捉える
・次に何をすればよいかを明確にする
こうした設計があって初めて、叱る言葉も、褒める言葉も意味を持ちます。
叱っても褒めても伸びないとき、私たちが見るべきなのは、子どもの態度や感情ではありません。
学びの内部構造がどうなっているかです。
行動を変えようとする前に、思考の流れを整える。
それが、学力を伸ばすうえで
最も確実なアプローチだと考えています。



