“できない”の裏側にある声を、聴ける大人でありたい― BesQ・代表仁田楓翔のコラム ―
BesQ代表 仁田 楓翔
「勉強を始めると、おでこが熱くなる」という子どもは珍しくありません。
一見すると体調不良やストレスのようにも思えますが、実はこれ、脳科学的に説明できるごく自然な現象です。
結論から言えば
“おでこが熱くなる”のは、脳の前頭前野が普段以上にエネルギーを使っている証拠。
いわば“知恵熱のミニ版”といえる反応です。
なぜ勉強でおでこが熱くなるのか
おでこ付近には前頭前野という「思考の司令塔」があります。
ここは、
集中/判断/理解/記憶の整理/問題を解くための作戦立案
のような高度な処理を担う脳の“超多忙エリア”です。
子どもが計算問題や英語の文法を理解しようとすると、前頭前野の仕事量が急増し、血流が一気に上がります。
血流が増える=温度が上がるため、“おでこが熱く感じる”というわけです。
大人にも「難しい案件を考えると頭が熱くなる」という感覚がありますが、これと同じ原理です。
「知恵熱」との違い
知恵熱というとストレスや病気を想像しがちですが、本質は異なります。
知恵熱は、脳が処理できる許容量をオーバーしたとき、身体が一時的にリセットをかけようとして熱が上がる反応。
一方で今回の「おでこが熱い」は、脳がまだ余裕を持ちながら強く働いている時に起こる正常な反応。
熱が37〜38度になるようなケース以外は、ほとんど心配の必要はありません。
なぜ“熱さ”を感じる子が増えているのか
現代の子どもたちが置かれている環境には、脳の負荷が増えやすい要素がいくつもあります。
① 学習内容の高度化
中学内容の一部が小学段階に下りてきたことで、理解負荷が増大。
② デジタル刺激に慣れた脳
スマホや動画視聴など、短時間で強い刺激が入る体験が増え、“じっくり考えるタスク”が以前より負担になりやすい。
③ 発達特性の顕在化
前頭前野のエネルギー管理が苦手な子は、負荷の変化を体感として捉えやすい。
おでこが熱くなる子は“伸びる”
教育の現場で多くの子どもを見てきて実感していることがあります。
おでこが熱くなる子ほど、成績が伸びやすい。
理由は明確で、「考える」という本質的な学習をしているから。
ワークをただ流し込む“作業型の勉強”では、脳は熱くなりません。
理解や推論に脳のエネルギーを使った時だけ起こる反応です。
これは、成長の過程でごく自然に見られる“前向きなサイン”でもあります。
子どもの勉強にまつわる体の変化は不安につながりやすいものですが、「おでこが熱くなる」という現象は、脳がしっかり働いている証拠です。
必要以上に心配せず、“成長のサイン”として温かく見守る。
それが子どもの学びを後押しする一番のサポートになります。



