“できない”の裏側にある声を、聴ける大人でありたい― BesQ・代表仁田楓翔のコラム ―
BesQ代表 仁田 楓翔
勉強につまずく子は、「努力が足りない」のでも「やる気がない」のでもありません。
もっと根本的な理由があります。
それは、子ども一人ひとりの脳の「理解のしやすいルート」が違うことです。
これは性格でも根性でもなく、脳の特性・認知のクセがつくる“生まれつきの処理の仕方”です。
にもかかわらず、現実の学校や塾では
同じ教材
同じ説明
同じスピード
同じノートの取り方
こうした“共通のやり方”が基本となっています。
集団を動かす上では仕方のない側面があるものの、発達特性をもつ子にとってここが最大のつまずきポイントになります。
私はこれまで多くの子どもを見てきて、この“合わないやり方”のせいで自信を失っていく瞬間を何度も見てきました。
発達特性によって「理解の入口」が大きく違う
ASD・ADHD・グレーゾーンといった診断名の有無に限らず、子どもたちには次のような“脳のクセ”があります。
1)理解の「入りやすい順番」が違う
同じ説明を聞いても
数字で説明した方が分かりやすい子
(例:式やルールを先に見た方が理解が進む)
イラストや図で説明した方が分かりやすい子
(例:視覚的な情報がある方が理解しやすい)
具体例から入った方が分かりやすい子
(例:「りんごが3つあって…」など、実例があると把握しやすい)
手順が整理されていないと混乱しやすい子
(例:「まず何をするのか」を明確にすると安心して取り組める)
どれが正しいわけでも間違っているわけでもありません。
ただ 順番が合わないだけで、脳が情報を処理できなくなる のです。
2)情報量の多さに弱い子がいる
黒板いっぱいの情報、ぎっしり詰まったプリントを見るだけで
脳が“オーバーフロー”してしまう子がいます。
これは怠けではなく、ワーキングメモリ(作業記憶)が少し小さいだけ。
情報を小さく分ければ、驚くほど理解が進むことも珍しくありません。
3)脳の処理速度に差がある
処理に少し時間がかかるだけで、
「遅い=できない」と誤解されてしまうケースは非常に多いです。
実際は、ゆっくり整理すれば正しく理解できる子 がたくさんいます。
4)注意が移りやすいのは“集中力がない”わけではない
ADHD傾向のある子は、興味のあることには驚くほど集中します。
ただ、脳の仕組み上、周囲の刺激に反応しやすいだけ。
音
人の動き
目に入るもの
心の中の別の考え
これらに反応しやすく、説明を聞き逃すことで「分からない」が積み重なります。
でも刺激が少ない環境になれば、理解が急に伸びることも多いのです。
“できない”のではなく “その道順が合っていない”だけ
ここが最も大切な視点です。
子どもが勉強につまずく時、本質的には本人の能力ではなくその子に適した「学びの順番」になっていないだけ。
これは多くの保護者が誤解しやすい点でもあります。
「どうして分からないの?」
「もっと集中してほしい」
「やる気がないのかも…」
そう感じるのは当然です。
でも、脳の仕組みがその手順に合っていないだけで、子どもは誰よりも苦しい思いをしています。
そこで必要なのが“認知特性に合わせた学習デザイン”
Besqでは、発達支援の専門知識を持つ講師がその子が最も理解しやすいルートに学習ステップを組み替える 指導を採用しています。
情報量を調整する
順番を変える
図から入る
手を動かして理解する
まず完成形を見せて安心させる
これは一般的な“個別指導”とはまったく違うアプローチです。
子どもの脳の仕組みに合わせて、「学び方そのもの」をデザインする。
これが、発達特性のある子が最も伸びる方法だと私は確信しています。
子どもの「本来の力」に気づく瞬間を、もっと増やしたい
つまずきは、才能の欠如ではありません。
発達特性による思考の道順が“合っていないだけ”です。
道順が合えば、子どもは必ず伸びます。
そして子どもの表情が変わる“あの瞬間”を、もっと多くの家庭に届けたい。
その思いで、私はBesqを運営しています。



