“できない”の裏側にある声を、聴ける大人でありたい― BesQ・代表仁田楓翔のコラム ―
「集中しなさい」
「何回言ったら分かるの」
こうした言葉、子どもに何度投げかけたことがあるでしょうか。
勉強中にソワソワしたり、すぐに別のことに気を取られる。
大人から見れば“やる気がない”ように見える行動も、
実はその多くが脳の発達ステージによる自然な反応であることをご存知でしょうか。
前頭前野と“ワーキングメモリ”の発達差
集中力や注意力、思考のコントロールを担っているのが、脳の前頭前野です。
この領域は、子どもから大人になる過程で最もゆっくりと発達し、20代半ば頃まで成長が続くと言われています。
また、学習中に必要な情報を一時的に保持し、処理する機能=ワーキングメモリも、前頭前野と密接に関係しています。
たとえば、「ノートを開いて、このページをやってね」と言われたとき、
指示の内容を記憶し
教科書を開き
該当のページに移動し
正しく問題に取り組む
この一連の流れには、高度なワーキングメモリの働きが必要です。
つまり子どもが集中できないのではなく、脳が“まだ整っていない”だけのことも多いのです。
「集中力を鍛える前に、整える」という視点
大切なのは、「集中しろ!」と叱ることではなく、
“集中できる状態”に整えることです。
これは単に静かな環境をつくるという話ではありません。
以下のような配慮が、実際の指導現場でも大きな効果を発揮しています。
作業を小さなステップに分けて提示する
「今やること」を視覚的に示す
時間の見通しを持たせる(タイマーの活用など)
できたことをすぐにフィードバックし、達成感を積み重ねる
これらは特別な支援ではなく、すべての子どもに有効な“脳に寄り添う学び方”なのです。
叱る前に、整える。教育は“脳を待つ”営み
私はこれまで、「集中できない」と悩む多くの子どもたちを見てきました。
そして共通して言えるのは、彼らの多くが“やる気がない”のではなく、“方法を知らないだけ”だということです。
大人が脳の仕組みを理解し、必要なステップを整えてあげることで、
子どもたちは確実に「できる」「続けられる」ようになります。
“脳を叱る”のではなく、“脳を待つ”。
教育とは、目に見えない成長を信じて「今」を支える営みなのだと思います。



