“できない”の裏側にある声を、聴ける大人でありたい― BesQ・代表仁田楓翔のコラム ―
脳は“変わる”臓器である
私たちはつい、「頭の良さ」や「才能」は生まれつきのものだと考えがちです。
しかし、最新の脳科学はまったく逆のことを示しています。
脳は生涯にわたって形を変え、成長し続ける臓器です。
この性質を「神経可塑性」と呼びます。
神経可塑性とは、学習や経験の積み重ねによって、脳内の神経細胞同士のつながり=シナプスが変化する仕組みのことです。
つまり、学びや努力によって脳そのものが作り変えられていくのです。
「繰り返し」で脳の回路は強くなる
たとえば、生徒が同じ英文法の問題を何度も解くうちに「感覚的にわかるようになった」と言うことがあります。
これはまさに神経可塑性が働いた結果です。
繰り返し考え、間違いを修正しながら再挑戦するたびに、
関連するシナプスが少しずつ太くなり、情報伝達がスムーズになります。
つまり「できるようになる」とは、脳の配線が変わることなのです。
これは精神論ではなく、神経科学的に説明できる事実です。
年齢に関係なく、脳は学び続けられる
神経可塑性のもう一つの重要な特徴は、子どもだけでなく大人にも起こるということです。
新しい言語を学んだり、ピアノを始めたりすることで、大人の脳も確実に新しい回路を作り出しています。
つまり、学びに「遅すぎる」は存在しません。
教育の現場でも、「苦手意識」や「年齢の壁」にとらわれる必要はありません。
脳は、正しい刺激と反復によって必ず変化します。
失敗と反復こそが最短の道
指導の現場では「間違えるのがこわい」と感じる生徒も少なくありません。
しかし、脳科学の観点から見れば、失敗こそが学びを加速させる最良の刺激です。
間違いを認識し、それを修正する過程で、脳は最も活発に働きます。
私はこの神経可塑性の視点をもとに、日々の授業で「できるまでやる」「小さな成功を積み上げる」指導を行っています。
一人ひとりの「できた!」という瞬間は、脳の中で新しい回路が生まれた証拠です。
学びは、脳の構造を変える行為
「努力しても変わらない」という言葉は、脳科学的には誤りです。
学びは常に脳を変え、思考のルートを作り替えています。
脳は経験に反応し、挑戦するたびに再設計される“可塑的な臓器”です。
教育の本質は、知識を教えることではなく、脳が変化する環境を整えること。
その過程で得られる「できるようになった」という経験こそが、自己肯定感と学習意欲の源になります。
神経可塑性が教えてくれるのは、
「人は変われる」「脳は努力に応える」という希望そのものです。
その確信を持って、今日も一人ひとりの生徒に寄り添い、
学びが“脳を変える力”であることを伝えていきたいと思います。



