“できない”の裏側にある声を、聴ける大人でありたい― BesQ・代表仁田楓翔のコラム ―
2025年のノーベル化学賞が、日本の研究者に贈られました。
受賞したのは、京都大学の北川進(きたがわ すすむ)特別教授。
受賞テーマは一見すると難しそうな「金属‐有機構造体(MOF)」の開発ですが、実はこの研究は環境・エネルギー・水資源など、これからの社会に深く関わるとても重要な技術です。
今回は、教育の現場でも子どもたちに伝えたい「MOF」の魅力を、わかりやすく解説します。
分子でできた“レゴブロック”
北川先生の研究は、金属と有機分子を組み合わせて、分子レベルで「空洞(穴)」のある構造体を自由に作るというものです。
この構造は「金属‐有機構造体(MOF)」と呼ばれ、イメージとしては、分子で作るレゴブロックで、スポンジのような網目構造を設計するような技術です。
MOFには内部にたくさんの“分子の倉庫”のような空間があり、気体や液体を吸着・貯蔵・分離・反応させることができます。
例えば、空気中の二酸化炭素を捕まえたり、砂漠の空気から水を取り出したり、エネルギーとなる水素を貯蔵するなど、未来社会で欠かせない応用が期待されています。
基礎研究が未来を変える
北川先生は1990年代からMOFの研究に取り組み続けた、世界的な先駆者です。
一朝一夕で成果が出るテーマではなく、地道な積み重ねが評価されての受賞でした。
このニュースは、理科や化学が「社会の問題解決とつながっている」ことを示す素晴らしい実例です。
環境やエネルギーといった大きな課題に対して、目に見えない分子の世界からアプローチできるという点は、生徒たちにとっても大きな刺激になるでしょう。
MOFは難しい言葉が多いですが、「分子の倉庫」「分子のスポンジ」という比喩を使うと、子どもにもイメージが伝わります。
また、活性炭やゼオライトを使った簡単な吸着実験でも、MOFの仕組みを体験的に理解することが可能です。
理科が苦手な子どもでも、「なんか面白い!」という感覚から入ることで、学びへの興味が広がるきっかけになります。
2025年のノーベル化学賞は、日本発の研究が世界を動かした象徴的な出来事でした。
北川進教授のMOF研究は、これからの環境・エネルギー問題を解決する重要なカギとなるでしょう。
教育現場でも、このような科学の最前線をわかりやすく伝えることが、子どもたちの好奇心を育て、未来への“芽”を育てる一歩になると感じます。



