“できない”の裏側にある声を、聴ける大人でありたい― BesQ・代表仁田楓翔のコラム ―
一般用
私たちの身の回りには目に見えないけれども、確かに働いている「不思議な力」があります。たとえばスマートフォンの位置情報やデジタルカメラの高精細な映像。それらの多くは「量子力学」という20世紀に生まれた理論に支えられています。
その量子力学の最前線で、日本の研究者が新たな成果を挙げました。京都大学などのチームが、量子もつれの一種である「W状態」を実験的に解明したのです。
専門性をかみくだくと…
「量子もつれ」とは、二つ以上の粒子が互いに不思議なつながりを持ち、一方を観測すると他方の状態も瞬時に決まる現象です。離れていても情報が共有される――まるで“離れた双子が同じ瞬間に同じことを思う”ようなイメージです。
その中でも「W状態」は、三つ以上の粒子が互いに均等に関わり合う、特別なもつれ方です。これを理解することは、量子通信や量子コンピュータの安定性を飛躍的に高める可能性を持っています。
未来インパクト
もし「W状態」を自在に扱えるようになれば
暗号通信:理論上「絶対に破られない」通信を実現できるかもしれません。
医療:膨大な分子構造計算を一瞬で処理し、新薬開発のスピードを変える可能性があります。
エネルギー:複雑なシステムの最適化が可能になり、再生可能エネルギーの効率利用にもつながるでしょう。
ただし課題もある
一方で、この技術の社会実装には慎重さも求められます。
利用できる人や国が限られれば、技術格差が広がる恐れがあります。
データの偏りや誤用によって、公平性が損なわれるリスクもあります。
倫理的な議論や社会的受容性も不可欠です。
つまり、科学が開く扉の先には「希望」と同時に「責任」があるのです。
量子の不思議をどう使うかは、研究者だけでなく、社会全体に委ねられています。
もしあなたがこの技術を使えるとしたら、どんな未来を創りたいですか?
そして子どもたちに「科学の力」をどう伝えていくべきでしょうか。
科学は、私たちの問いかけと選択によって、未来の姿を変えていきます。



