“できない”の裏側にある声を、聴ける大人でありたい― BesQ・代表仁田楓翔のコラム ―
最近、子どもたちの口から「大人になりたくない」という言葉を聞くことが少なくありません。
その理由を尋ねると、「仕事が大変そう」「人間関係が面倒くさそう」「大人がいつも疲れているから」といった答えが返ってきます。子どもたちにとって、大人の姿は未来の自分の姿です。
そこで見えるのが疲弊した表情ばかりであれば、「大人になること」自体が希望を失わせるのも無理はありません。
心理学では、子どもの将来への意欲に「自己効力感」が大きな役割を果たすとされます。これは「自分は将来もうまくやっていける」という感覚です。
家庭で日々耳にする「疲れた」「大変だ」という言葉は、子どもにとって大人社会のリアルを伝えると同時に、自己効力感を下げてしまうリスクを含んでいます。
もちろん、大人には仕事の苦労も人間関係の難しさもつきものです。
大切なのは、それをどう子どもに見せるかです。
「今日は大変だったけど、新しいことに挑戦できた」「人から感謝の言葉をもらえてうれしかった」と、前向きな側面も言葉にして伝えること。
それが子どもに「大人も悪くない」「自分もやってみたい」と思わせる第一歩になります。
また、仕事だけでなく趣味や学びに夢中になる姿、小さな達成感を家族と共有する瞬間も、子どもにとって「大人の楽しさ」を感じられる大切なシーンです。
教育現場でも、科学実験や探究活動のなかで「できた!」という喜びを経験した子は、次の挑戦に意欲的になります。
同じように家庭でも、大人が挑戦し楽しむ姿を見せることこそ、子どもへの最高のキャリア教育です。
子どもが「大人になりたくない」と口にしたとき、それは単なる弱音ではなく、私たち大人に向けられた問いかけです。
「あなたは楽しそうに生きていますか?」という無言のメッセージに耳を傾け、未来に希望を感じられる“大人の姿”を、私たち自身が示していきたいものです。



