“できない”の裏側にある声を、聴ける大人でありたい― BesQ・代表仁田楓翔のコラム ―
勉強の声かけで悩む保護者へ
勉強しなさい」と子どもに声をかけたとき、返ってくるのはため息や無言、あるいは反抗的な態度
多くの保護者が経験しているこの光景。
実は、「勉強しなさい」という言葉には、子どもの“自発性”を奪い、行動の動機づけを阻害する心理的要因が含まれています。
「5分だけやってみよう」が効く理由1
心理的ハードルを下げる“行動の最小単位”
行動経済学や認知行動療法でも知られているように、人は「大きな負担を感じる行動」に対して強い回避反応を示します。
「勉強しなさい」という言葉は、内容や時間が不明瞭である上に、命令口調として受け取られやすく、心理的な抵抗を生みます。
一方、「5分だけやってみよう」と声をかけると、「それならやってみようかな」と感じる子が多く、行動のハードルが大幅に下がります。
これは「作業興奮(task-induced activation)」と呼ばれる脳の特性を利用したアプローチです。
「5分だけやってみよう」が効く理由2
始めることで脳が“やる気モード”に切り替わる
脳科学的には、作業を始めた段階でドーパミンなどの神経伝達物質が分泌され、集中力や達成意欲が高まることが分かっています。
この「行動が感情を変える」原理は、勉強のように“腰が重いタスク”にも効果を発揮します。
最初は「5分だけ」と始めたはずが、気づけば30分以上取り組んでいた――という経験は、まさにこのメカニズムによるものです。
「ここまでやったのに、やめるのは気持ち悪い」
“ツァイガルニク効果”を活用する
人は、完了していない作業をより強く記憶に残す傾向があります(ツァイガルニク効果)。
「途中で終わるのが気持ち悪い」
「ここまで来たから最後までやりたい」という気持ちは、自然な心理反応であり、学習継続の大きな原動力となります。
つまり、「5分だけ」と始めることで、無意識のうちに“完了したい”という心理が働き、結果的に学習時間が延びていくのです。
BesQの実践でも効果を実感
当塾BesQの指導現場でも、「まずは5分だけやってみよう」という声かけは非常に有効です。
特に、意欲が不安定な生徒に対しては、このアプローチが学習の突破口になります。
もちろん、5分で終わっても構いません。
大切なのは「自分から始めた」という感覚と、「できた」という小さな成功体験の積み重ねです。
自発性を尊重する声かけが、学びの第一歩に
「やる気を出してから始める」のではなく、「始めることでやる気が出る」――
この逆転の発想が、子どもの行動を大きく変えていきます。
家庭でも「5分だけやってみよう」という一言を、ぜひ実践してみてください。きっと、机に向かうハードルが少し下がり、勉強の習慣化に繋がっていくはずです。



