「効率的に勉強したい」は間違い? ――学力を伸ばす“質と量”の本当のバランスとは

仁田楓翔

仁田楓翔

勉強が苦手な子ほど「効率」を求めてしまう理由


教育現場で多くの子どもたちと接していると、特に勉強に苦手意識を持つ生徒ほど「効率の良いやり方を知りたい」と言います。親御さんからも「短時間で成果が出る方法を教えてほしい」という声をよくいただきます。

その気持ちはとてもよくわかります。勉強でつまずいているからこそ、「無駄なく」「最短で」結果を出したい。
ですが実はここに大きな落とし穴があります。


「効率的な学習」が成果を出すのは“ある条件”がそろったときだ


学習において「効率化」が効果を発揮するのは、基礎知識が一定レベルまで身についている場合に限られます。

つまり、“土台”ができてはじめて、「効率的な方法」が生きるのです。

これはスポーツで言えば、基本のフォームや筋力が未熟なまま「省エネで勝ちたい」と言っているようなものです。

基礎を固めずに効率ばかり追い求めると、逆に成績は伸びにくくなってしまいます。


勉強の初期段階に必要なのは“質”より“量”


学習の初期段階、特に苦手意識を持っている教科や単元では、「質」よりもまず「量」が重要です。

なぜなら、人間の脳は“慣れ”と“繰り返し”によって理解を深めるからです。

たとえば、計算ミスが多い子どもには「正しい考え方」だけでなく、「数多くの問題を解いて慣れる」ことが必要です。

英文法が苦手な生徒には、「ルールの理解」だけでなく「繰り返し使ってみる」ことで文の形が自然に身につきます。


「量の経験」が“理解の土台”をつくる


繰り返し取り組む中で、子どもたちは少しずつ「理解の感覚」を掴み始めます。

最初は意味がわからなかった用語や式が、量をこなす中で「自然に見える・読める・使える」ようになっていく。

ここで初めて、“質の高い学習”や“効率的な工夫”が成果を出すステージに入ってくるのです。

勉強が苦手な子に伝えたいこと


効率ばかりを求めるあまり、学習の本質――
「地道な積み重ね」を軽視してしまうのはもったいないことです。

学びの最初に必要なのは、安心して量をこなせる環境です。

時間がかかっても、「できることが一つ増えた!」という小さな成功体験を積み重ねていくことが、最終的には“効率の良い学び方”につながっていきます。

勉強が苦手な子こそ、あせらず、ゆっくり、着実に。
まずは「基礎の量」を大切にすることから、学びの旅を始めてみましょう。

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仁田楓翔
専門家

仁田楓翔(塾講師)

BesQ

自己肯定感を育て、子どもが自ら学び始める仕組みをつくる教育。小さな成功体験を丁寧に積み重ねることで、「できない」から「できた」に変わる瞬間を設計し、やる気に頼らず成績と意欲を同時に伸ばします。

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