「人それぞれ」で終わらせない——失われつつある“考える力”をどう育てるか

仁田楓翔

仁田楓翔

最近、授業や面談の中で、生徒からこんな返答をされることが増えました。

「人それぞれだと思います」

「それって別にどっちでもいいと思います」

「わかりません」

もちろん、多様性や相対的な価値観を理解することは、現代社会を生きるうえで重要な素養です。
しかし、それは「自分の意見を持たなくていい」こととは違います。

私は、「あなたはどう考える?」と尋ねています。
その問いに対して、「人それぞれ」と答えることは、自分の考えを放棄しているに等しいのです。

最近の子どもたちは、相手の意見に反論しない・できない傾向が見られます。
相手を傷つけないように、あるいは正解がないから口に出すのが不安 
そんな気持ちも背景にあるのかもしれません。

しかし教育者として心配なのは、そもそも“自分の考えを組み立てる力”そのものが弱くなっているように感じられることです。

そこに拍車をかけているのが、表現力や語彙力の低下です。
日常会話では「エモい」「やばい」「えぐい」などの便利な“なんでも言える言葉”が溢れ、それに頼るあまり、細かく表現しようとする努力が減ってきているように思います。

語彙は、思考の道具です。

語彙が乏しければ、考えも浅くなり、読解力もつきません。
つまり、これは国語力全体の低下につながる問題なのです。

ではどうすればよいか。
私は、子どもたちに「考える習慣」と「言葉を磨く習慣」を取り戻してもらいたいと思っています。
たとえば、問いに対して“ひとまず答えてみる”こと。正解かどうかではなく、自分の言葉で、自分の感じたこと・思ったことを語ってみる。その第一歩から始まります。

大人が子どもに問いかけるとき、「どう思う?」で終わらず、「あなたならどう考える?」「もう少し詳しく教えて」と掘り下げてあげることも大切です。

“考える力”と“伝える力”は、これからの時代を生きる子どもたちにとって、何よりの武器になります。
だからこそ今、私たち大人が、「深く考える文化」をもう一度、育て直していく必要があるのではないでしょうか。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

仁田楓翔
専門家

仁田楓翔(塾講師)

BesQ

自己肯定感を育て、子どもが自ら学び始める仕組みをつくる教育。小さな成功体験を丁寧に積み重ねることで、「できない」から「できた」に変わる瞬間を設計し、やる気に頼らず成績と意欲を同時に伸ばします。

プロのおすすめするコラム

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

生徒のやる気を引き出し、自信と心を育てる塾講師

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京のスクール・習い事
  4. 東京の学習塾・進学塾
  5. 仁田楓翔
  6. コラム一覧
  7. 「人それぞれ」で終わらせない——失われつつある“考える力”をどう育てるか

仁田楓翔プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼