“できない”の裏側にある声を、聴ける大人でありたい― BesQ・代表仁田楓翔のコラム ―
「やる気が出ない」「集中できない」は脳の栄養失調?
「最近、集中力が続かない」
「仕事や勉強に身が入らない」
「何をするにも億劫」
そうした状態が続くと、つい「自分の甘えではないか」と感じてしまうものです。
しかし近年、こうした症状は単なる気分の問題ではなく、
脳の働きの鈍化=“ブレインフォグ”として注目されています。
特にコロナ禍以降、感染後や在宅勤務中の生活リズムの乱れによって、多くの人が経験しています。
このブレインフォグの背景には、睡眠不足やストレスに加え、「脳に必要な栄養素の不足」があると考えられています。
脳が「本当に欲しているもの」は、糖分ではない
「脳には糖分が必要」というのは半分正解、半分誤解です。
脳はブドウ糖を主なエネルギー源としていますが、それだけでは“思考”も“感情”も機能しません。
私たちの脳内で情報をやり取りしているのは、「神経伝達物質」と呼ばれる化学物質です。
特に有名なのが、ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどです。
これらはすべて食事由来の栄養素を原料として脳内で合成されるため、食事の質がそのまま脳の働きの質に直結するのです。
ドーパミンは“やる気の源”――でもサプリだけでは作れない
ドーパミンは「やる気」や「快感」「達成感」といったポジティブな感情と密接に関わる神経伝達物質です。
このドーパミンの材料となるのは以下のような栄養素です:
チロシン(アミノ酸)…主に大豆・卵・乳製品・魚などに含まれる
ビタミンB6・B12…神経の修復や合成に関与
鉄・マグネシウム…ドーパミン合成酵素の補因子として必要
これらの栄養素が欠乏すると、ドーパミンの合成が滞り、
結果として無気力・注意散漫・情緒不安定といった状態が起こります。
なお、「サプリメントで補えばよい」と考える方も多いですが、栄養素は単独では機能しづらく、吸収や相互作用の観点からも“食事による摂取”が圧倒的に効果的です。
野菜と果物は“抗うつ効果”を持つという研究も
オーストラリア・クイーンズランド大学の研究では、1日あたり7品目以上の野菜・果物を摂取している人は、摂取量が少ない人に比べて「抑うつ症状が有意に低い」という結果が出ています。
(2016年 British Journal of Health Economics)
特に、色の濃い野菜(ほうれん草、ブロッコリー)、ビタミンC豊富な果物(キウイ、オレンジ)などは、抗酸化作用や神経保護効果も高く、ブレインフォグの予防や改善に非常に有効とされます。
また、ビタミンB群やオメガ3脂肪酸(青魚やナッツ類)も神経伝達物質の合成と神経細胞の膜安定性に関与しています。
“脳に効く食事”のすすめ――毎日が変わる第一歩
食事は、単なるエネルギー補給ではありません。
「脳の調子を整える行為」でもあります。
食品添加物の多い加工食品を減らし、
できるだけ多様な“自然の食材”を摂る
水分補給と適度な運動も組み合わせる
こうした日常の小さな工夫が、ブレインフォグの予防や、学習・仕事のパフォーマンス向上に直結します。
脳が変われば、心も行動も変わる
ブレインフォグや「なんとなく不調」は、性格でも気合でもなく、身体からの“サイン”であることがほとんどです。
特に思春期の子どもたちや、仕事に追われる大人たちにこそ、脳を養う食事の重要性を届けたいと私は考えています。
日々の食卓こそが、未来の自分を作ります。
まずは1日1品目、色の濃い野菜から取り入れてみませんか?



