“できない”の裏側にある声を、聴ける大人でありたい― BesQ・代表仁田楓翔のコラム ―
子どもが勉強でつまずいていそうなとき、つい「大丈夫?」と声をかけてしまう方も多いのではないでしょうか。
でも実は、この言葉が“本音を引き出しにくくする原因”になっていることもあるのです。
教育現場で多くの子どもと向き合ってきた立場から、よりよい声かけの工夫についてお話しします。
人は「はい」と言いやすい生き物
「大丈夫?」という声かけは、一見やさしく、安心感のある言葉に思えます。
しかし、ここに一つ、科学的な“落とし穴”があります。
人間の体は、首を縦に振る動きのほうが自然で、楽にできるようにできています。
そのため、子どもは反射的に「うん、大丈夫」と首を縦に振ってしまいがちです。
実際は理解できていなくても、「大丈夫って言った方がラク」になってしまうのです。
あえて「ダメそう?」と聞いてみる
そこで、私たちBesQでは、あえて逆の聞き方をすることがあります。
たとえば、
「ダメそう?」
「むずかしい?」
「詰まってる?」
こうした声かけをすると、子どもは首を縦に振る=“イエス”を選びやすくなり、本音を出しやすくなるのです。
本当に理解している子は、ちゃんと「横に振る」
これは意外に思われるかもしれませんが、本当に理解している子ほど、自信を持って「いや、全然大丈夫」と首を横に振ってくれます。
「ダメそう?」という問いに対して、
「いや、大丈夫だよ!」という“確かな意思表示”が返ってくる。
ここに、子ども自身の自信と気づきがあります。
一方で、もし首が止まったままなら、きっと悩んでいるサイン。
そのサインを拾えるかどうかが、声かけの本質だと思うのです。
声かけは「安心できる環境づくり」そのもの
子どもが「わからない」「困った」と言える環境は、
声かけの工夫から始まります。
たとえば、こんなふうに言い換えてみると効果的です:
よくある声かけちょっと変えると…
「大丈夫?」「ダメそう?」
「できてる?」「むずかしくない?」
「進んでる?」「止まってない?」
こうした問いかけは、子どもが“悩んでいても答えやすい”形になっています。
それだけで、子どもとの信頼関係が大きく変わることもあるのです。
「大丈夫?」のような優しい言葉が、時に本音の壁になることもあります。
首の動きひとつ、問いかけのひと言ひと言が、子どもの“本当の気持ち”を引き出すカギになります。
子どもたちが「わからない」と安心して言える環境づくりの第一歩は、気づきのある声かけから始まるのです。



