“できない”の裏側にある声を、聴ける大人でありたい― BesQ・代表仁田楓翔のコラム ―
「効率」より「土台」を――勉強に近道を求めすぎる前に考えたい
最近、勉強に関する情報の中で「効率」という言葉を頻繁に目にします。
「5分で覚える英単語法」「1日10分の学習でOK」「最短で偏差値アップ」といった、手軽で魅力的なフレーズがSNSやYouTubeを通じて広がっています。
確かに時間は有限ですし、効率を求める姿勢そのものが悪いわけではありません。
ですが、忘れてはならないのは「効率化は土台ができてからこそ効果を発揮する」ということです。
基礎がない状態で効率を求めても、それは「空中に家を建てるようなもの」。
肝心の支えがなければ、いずれ崩れてしまうのです。
脳科学が示す“繰り返し”の重要性
脳科学の研究では、知識を長期記憶に定着させるためには「反復」と「深い処理」が必要であることが分かっています。
つまり、ただ一度効率よくインプットしただけでは、すぐに忘れてしまうということです。
例えば、新しい英単語を一度だけ「短時間で」覚えても、それを3日後に思い出せるでしょうか? 多くの人は無理だと答えるはずです。
それは、脳にとって“重要な情報”として認識されなかったから。
繰り返し触れ、使い、間違えながら覚えていく過程で、ようやく脳の中に「記憶の道」ができるのです。
料理やスポーツでも「基礎」が最優先
これは勉強だけに限った話ではありません。
例えば料理でも、包丁の持ち方や食材の切り方を知らずに高級フレンチに挑むのは無謀です。
スポーツでいえば、バットの握り方も知らないままホームランを狙うようなもの。
いくら最新の技術やテクニックを学んでも、基礎のない状態では再現性も成果も伴いません。
勉強においても同じです。英文法の基礎を知らないまま、いくら効率的な長文読解テクニックを学んでも、それは一時しのぎでしかありません。
「非効率な努力」が、実は一番効率的
人間の脳は、最初は非常に「不器用」です。一度に多くの情報を処理したり、複雑なことをいきなりこなしたりするのは苦手です。しかし、不器用な状態で繰り返し取り組むうちに、少しずつ効率的に処理できるようになります。これは神経細胞同士の結びつきが強化されることで起こる変化です。
つまり、最初の「非効率な努力」こそが、後の「効率化」の下地となるのです。
効率を焦る前に「覚える・使う・繰り返す」
「まだ何も覚えていない」「内容があいまい」な段階で効率ばかりを追い求めると、実は一番時間の無駄になってしまいます。まずは一見遠回りに見える「基礎の反復」「手で書く」「声に出す」「定着するまでやる」などの地道な行動こそが、後々のスピードと理解力を飛躍的に高めてくれるのです。
焦る必要はありません。「効率」は“土台の先”にあるご褒美です。だからこそ、まずは自分の“足元”を固めることから始めてみてはいかがでしょうか。



