“できない”の裏側にある声を、聴ける大人でありたい― BesQ・代表仁田楓翔のコラム ―
私が提唱している「のんきの極意」は、単なる“優しい教育”ではありません。
これは、脳の仕組みと学習心理に基づいた“合理的な教育戦略”です。
「がんばらせないのに、なぜか成績が上がる」
そう言われる理由は、私たちの学びの本質が「安心と自発性」にあるからです。
「みんなできてるのに、なんでできないの?」
私は、いわゆる“できない子”でした。
先生からはよくこう言われました。
「なんでこんなこともできないの?」「みんなはできてるよ?」
そのたびに自信を失い、徐々に「どうせ無理だ」と思うようになりました。
授業中にわかっていても、手は挙げませんでした。
間違えるのが怖くて、目立つことを避けるようになっていたのです。
その結果、「指示を待つだけ」の人間になり、何事にも積極性を持てなくなっていました。
「やる気がない」のではなく、「安心できていない」
この体験をきっかけに、私は“できない子”の気持ちが痛いほどわかるようになりました。
そして教育者として立ったとき、私がまず心に決めたのは、子どもにプレッシャーをかけないことでした。
脳科学の研究では、不安や緊張によって前頭前野の働き(集中・思考・記憶など)が抑制されることが分かっています。
つまり、「間違えたら怒られる」「またダメって言われる」そんな状態では、子どもは学べなくて当然なのです。
反対に、安心感のある環境では、脳内のドーパミンが活性化し、「やってみようかな」という前向きな気持ちが芽生えやすくなります。
だから、私は「怒らない」「急かさない」
BesQで実践している「のんきの極意」は、以下のようなメソッドに支えられています。
ノートを取らせず、その場で集中して話を聞く授業
「なんでできないの?」と言わず、できた瞬間や過程を褒める
苦手な子ほど、“できる”小さな目標を一歩ずつ設定する
これは、教育心理学者バンデューラが提唱する「自己効力感」の理論にも基づいています。
人は、「自分の行動が成果を生む」と信じられるとき、自ら学ぶ力を発揮するのです。
「のんき」は甘やかしではなく、脳と心にやさしい“戦略”
怒らず、急かさず、焦らせず。
その代わりに、できるまで寄り添う。
BesQでは、こうした環境のなかで、子どもたちが自らの可能性に気づき、“指示待ち”から“自発”へと変わっていく姿を何度も見てきました。
私が子どものころに欲しかった環境を、今は子どもたちに届けたい。
それが「のんきの極意」の原点です。



