“できない”の裏側にある声を、聴ける大人でありたい― BesQ・代表仁田楓翔のコラム ―
近年、教育界において急速に注目を集めているのが「STEAM教育」です。これは単なる理数系強化ではなく、科学・技術・工学・芸術・数学の5領域を横断的に学ぶことで、知識を“活用できる力”に変えることを目的とした教育アプローチです。
背景にあるのは“VUCA”時代の到来
グローバル化とテクノロジーの進展により、社会は“VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)”=不確実性の時代に突入しました。
変化が激しく、複雑で、先が読めない時代において、暗記型の知識だけでは対応できません。
これからの教育には、知識の「習得」から「活用・創造」へと軸足を移す視点が不可欠です。
STEAM教育は、こうした時代の要請に応える教育として位置づけられており、国内外の教育政策でも取り上げられています。
文部科学省でも「探究的な学び」「教科等横断的な学習」の重要性が強調され、2020年度以降の学習指導要領にも明記されています。
芸術(A:Arts)の重要性
従来のSTEM(科学・技術・工学・数学)に「A=芸術・人文知」を加えた点こそ、STEAM教育の本質です。
これは、創造性や感性、共感力といった“人間らしさ”を軸に据えることを意味します。
STEAM教育では、たとえば「災害時に使える避難用テントを設計しよう」という課題を通じて、
科学的根拠に基づく素材選定(S)
構造的安定性の追究(T・E)
心理的安心感を生む色彩設計(A)
最適寸法の計算(M)
といったプロセスを、多角的・実践的に学ぶことができます。
つまり、分野を横断した課題解決型学習=PBL(Project-Based Learning)の実践こそ、
STEAM教育の核なのです。
STEAM教育の導入は、「個の力」と「共創力」を同時に育む
私が主宰する科学実験教室「サイエンスゲーツ東葛西教室」でも、STEAMの視点を取り入れた授業設計を行っています。子どもたちは、自ら問いを立て、仮説を検証し、失敗から学びながら、自分の言葉で成果を発信していきます。
このプロセスの中で、単なる知識習得では得られない「自己効力感」「論理的思考力」「創造的問題解決力」が育っていくのです。そして同時に、グループでの協働を通じて「他者との共創力」も養われます。
“学びのスタイル”を変えることで、未来は変えられる
これまでの「一斉授業」「一問一答」「正解主義」から、「個別探究」「多様な解」「プロセス重視」へと学びを進化させる。それが、STEAM教育の真の価値です。
未来を生きる子どもたちに必要なのは、「正しい答えを知っている」ことよりも、「自ら問いを立て、答えを創り出す力」。STEAM教育は、その力を育む最前線にあります。



