『高校入試改革、始まる…?』
こんにちは、与一の井上です。
ようやく秋めいてきて、運動や勉強に存分に臨める気候となってきましたね。
それでもまだコロナウイルスの感染者も決して楽観的になっていい状況ではないことなど、季節の変わり目ということでより一層体調には気を付けていきたいところですね。
さて先日徳島新聞の一面に「学区制存廃を問う」と見出しのついた記事が載せられていました。
後述しますが私が徳島県の高校生の学力が低い大きな要因の一つであるとずっと考えてきた「学区制」がついに廃止の方向へと向かっているということです。
これは諸手を挙げて歓迎すべきだと考えます。まだ中には反対論も根強くあるようですが、ほぼ決定の情勢で間違いないでしょう。
以前どこかのコラムで
徳島ではどうでしょうか。先月徳島県知事選があり、後藤田正純氏が当選されたことは記憶に新しいと思います。
このような状況に危機感を抱いていたため、後藤田氏が教育に関してどのような考えをお持ちなのかを注視していました。
しかし残念ながら、現在後藤田氏の公式サイトで確認できる限りでは、教育についての具体的な政策は何一つ述べられていませんでした。
どうやら徳島において現在の教育の状況に危機感を持ち、改善しようという動きはしばらく見られそうにありません。
このように述べましたが、この学区制廃止には後藤田知事の意向がかなり大きく反映されている様子。そうであれば私は早まったことを言ったことを反省しなければなりません。
学区制を巡る一連の流れを振り返る
一連の流れを振り返ってみましょう。
昭和47年(古いですね…)に学区制がスタート
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平成30年度に有識者会議からの学区制を巡る提言がなされる
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令和3年度入試より城東高校の学区を県内全域に変更/その他公立高校の学区外からの受け入れ率変更
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令和5年7月に徳島市・名東郡のPTA連合会中学部会会長及び校長会会長が普通科の学区について現状維持を要望する要望書を提出
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令和5年9月に鳴門市長・石井町長・板野町長が学区制廃止に向けた動きへの要望書を提出
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令和5年12月に後藤田知事が県議会で、公立普通科高校の学区制の見直しに関する議論をスタートさせる方針を明らかに
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令和6年6月に平成30年度以来の中学校や高校の校長など15人が出席する学区制についての有識者会議が実施される
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令和6年7月24日に同様の会議が実施され、後藤田知事から「学区制で犠牲になるのは子どもやその親たちだと思う。県教育委員会はしっかり結論を出して実行してほしい」との考えが示され、県教育委員会の中川斉史教育長は「学区制についてはやく結論を出せる部分と慎重に進める部分があるので今後はそれらを明確にしていきたい」とコメント
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令和6年7月30日県教育委員会の中川斉史教育長は30日の定例会見で、2026年春の入学に間に合うように見直す可能性があると明らかにした
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令和6年8月の有識者会議において、学区制の撤廃を支持する意見が多数を占め、撤廃する方向で検討することが決定
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令和6年9月上記を受け、県教委が生徒や保護者らに学区制の存廃などを問うアンケートを開始
途中で抜けている部分も恐らくあるでしょうが(何度か鳴門市・石井町・板野町から撤廃に向けた要望書が出されたとの記事を見た記憶があります)時期などがあやふやであったため割愛しています。
こう見ると後藤田知事の就任後、知事の学区外撤廃の意向の下で大きく動き出したと言えますね。繰り返しますが当初何の動きもなさそうだと発言したことを短慮であったと反省したいと思います。後藤田知事、ありがとうございます。
それにしても学区制の開始から50年近くも何の大きな変更もなく(総選制はなくなりましたが)続ける意義は本当にあったのでしょうか。この制度によって守られたものは教育の平等性よりも大きなものだったのでしょうか。強く疑問を覚えます。
学区制の撤廃でどう変わる?
まず間違いのないことは、これでようやく「高校受検における健全な競争が始まる」と言えます。
県教育委員会によれば、令和6年度入試において、学区内の受験生の合格最低点は学区外の受験生より5教科で83.8点低く、前の年度の比べても4.3ポイント拡大しているということです。
これだけでは同じ高校を比較してのものなのか曖昧な部分が多いですが、徳島県ではもはや常識であった「学区内なら300点台、学区外なら400点台が合格ライン」という旧総選校における必要な点数の非常に大きな格差が証明されたと言えるでしょう。
しかし学区制が撤廃されたとなれば、今まで徳島市内の高校を「受検することすら叶わなかった」300点台後半の子が、堂々と志望校を受検することができるようになります。結果これまで「余裕で合格していた」学区内の350点程度の点を持っていた子は大きな焦りを感じる必要があります。「学区内だから調印できただけ」の学区内の320点前後の点数を持っていた子はそもそも受検資格を獲得するべく必死で努力しなければならなくなります。北高・市高・城南あたりの高校の受検・合格に必要な点数は間違いなく大幅に上がるでしょう。
先の経緯の中で、徳島市や名東郡の関係者が反対する気持ちはわかります。恐らく徳島市にお住まいの中学生の子をお持ちの保護者も同じ気持ちでしょう。「これまでなら入れた高校に入れなくなって、結果遠くの高校に行かなければならなくなる。どうしてこんなことをするんだ」と。
厳しい言い方ですが率直に言います。それは「歪な制度のおかげで、今までが本来は入れなかった高校に入ることができていただけ」なのです。考えてみて下さい。大学受験において、地元の高校生なら他地域からの受験生より入りやすい大学ってありますか?附属中学・城ノ内中学・文理中学の受験において、地域によって合格に必要な点数が異なるということがありますか?どちらもありませんよね?(水面下でどうなのか、はさておき)
何故か「徳島市に住んでいる」だけで謎に優遇されていた、高校受検においてのみ存在した不平等さがようやく正されるだけなのです。どんな制度でもそうですが、既得権益を得ている側はそれを失うとなれば当然文句を言うでしょう。ですがその反面不平等さを強いられていた側があることを忘れてはいけません。これは正しい方向性であると私は断言します。
「学区制の撤廃」は徳島県にどのような影響を与えるのか
私は以前から徳島県は「教育後進県」であると言ってきました。ですが今年の小学6年生と中学3年生を対象に行われた「全国学力テスト」において、徳島県は小学生の「国語」と「算数」をあわせた全国の順位が7位と去年の26位から順位を大きく上げたこと、また中学生の「国語」と「数学」をあわせた順位は16位と去年の20位を上回ったことが報じられました。
では私の言う「徳島は教育のレベルが低い」とは間違いなのでしょうか。あくまで個人的な意見ですがこういう考えはどうでしょうか。「小学生・中学生は他都道府県の子に劣らない学力を持っているが、大学受験時には後塵を拝している。この一因が高校受検における学区制にある。」乱暴な論理ですが矛盾はしていなさそうな気がしませんか?
残念ながら市高・北高などには「いけそうだから」「行きたいところがなくて近かったから」という理由で入る子が毎年一定数います。高校に入って勉強をあまりせず、気づいたら下位層を形成してしまう子の多くはこうした目的意識もなく進学した子です。目的もなく「進学校」に入る子より、厳しい競争をして必死の思いで高校に入る子が増えれば、単純に入学者の得点層が上がるというだけよりも、入学後の勉強への意欲も今より全体的に向上することはごく自然に発生する流れでしょう。
「学区制」撤廃によりまず徳島県の「進学校」である高校のレベルが上がり、それに伴い中学生の勉強への意識・意欲、そして学力が上がる。こうして徳島県全体の教育レベルが上がることを私は願ってやみません。また人口減少が止まらない徳島県において、教育レベルの向上は今後地方が生き残っていく術の一つとして不可欠であると考えます。