子供がいない夫婦でも配偶者がすべて相続するとは限らない!?
相続人となるその人に、判断能力が不十分で意志決定をすることが難しい障害や病気がある場合、その相続人を守る制度があります。それが成年後見制度です。裁判所によって選任された成年後見人が、判断能力が不十分である相続人(成年被後見人)の財産などを守る役割を担います。
成年後見人制度について
成年後見人制度は、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な方の権利や財産を保護するため、法律的に支援・援助するための制度です。
たとえば、認知症の奥様の介護をしていたAさんが急死したとしましょう。残された奥様は法定相続人です。しかし、遺産分割についての判断力は不十分です。
こうした際、残された奥様の支援にあたるのが「成年後見人」です。後見を受ける立場の奥様は「成年被後見人」となります。
後見人による遺産分割の手続き
法定相続人の中に認知症などで判断能力が不十分な方がいる場合、家庭裁判所に後見開始の審判を申立てて、成年後見人を選任してもらいます。
家庭裁判所への申立ては、成年被後見人(Aさんの奥様)から見て4親等以内の親族が行うことができます。
※成年被後見人の血族は4親等以内の人とその配偶者が申立てを行えます。なお、いとこ(4親等)の配偶者は不可。
血のつながりがない配偶者の側(この場は亡くなったAさんの親戚)は、3親等以内の人が対象となります。3親等以内の人の配偶者は不可。
選任された成年後見人は、被後見人(Aさんの奥様)の財産状況や生活状況を検討しつつ、他の相続人との遺産分割協議に入ります。
そして、成年被後見人(Aさんの奥様)の法的権利が守られるよう調整し、協議終了後、成年後見人が遺産分割協議書や相続税申告書等へ署名・押印を行います。
相続税申告における障害者控除
相続税には、障害のある方が遺産を相続した場合、相続税が軽減される障害者控除が設けられています。この軽減措置を受けられるのは「国内に住んでいる人」「障害者であること」「法定相続人であること」、この3つの要件すべてにあてはまる方です。ただし年齢制限があり、85歳未満とされています。
控除額は、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)です。たとえば、相続人の年齢が60歳の場合、「(85歳-60歳)×10万円=250万円」。特別障害者なら500万円です。この分が相続税から引かれることになります。