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嶋田由紀子プロは四国放送が厳正なる審査をした登録専門家です

『またか……』から始まるハラスメントの話

テーマ:ハラスメント

「何度説明しても、同じところで間違えるんです」
ハラスメントについてお話を伺っていると、こうしたケースに出会うことがあります。

一度説明しただけで「できない」と決めつけたわけではありません。
やり方を説明する。
間違ったところを指摘する。
もう一度やって見せる。
さらに細かく説明する。
それでも、また同じようなところでつまずいてしまう。

そこで指導する側も考えました。
「こちらのやり方を教えるばかりだから、うまくいかないのかもしれない」
今度は本人に、
「あなたは、どうすればできると思う?」
と考えてもらうことにしました。
本人も自分なりの方法を考えます。
「では、その方法でやってみよう」
これでうまくいけば、めでたし、めでたし。
         ……とはなりませんでした。
やっぱり、うまくいかなかったのです。

さて。
あなたがこの上司だったら、ここからも穏やかに指導を続けられるでしょうか。

私は、ハラスメント研修で「管理職なのだから、どんなときもイライラしてはいけません」と伝えることには、少し違和感があります。
だって、人間ですから。
私だってイライラすることはめちゃくちゃあります。



何度教えてもうまくいかなければ、
「え? また?」と思うこともあるでしょう。

問題は、そう思ったことではありません。
私はむしろ、この「え? また?」が出てきた後が大切だと考えています。

最初は「できるようになってほしい」と思って教えていたはずです。
ところが、うまくいかないことが続くと、
「どうして分からないんだろう」が、
「どうして分かろうとしないんだろう」に変わっていくことがあります。
そして、
「前にも言ったよね?」
「何回言ったら分かるの?」
という言葉が出てくる。

ここで、ちょっと考えてみてください。
「何回言ったら分かるの?」と聞かれて、「7回です!」と答えられる人は、おそらくいません。

では、この言葉は何のために言っているのでしょう。

少なくとも、この一言で仕事の手順が分かるようになるわけではありません。
もしかすると、「できるようになってほしい」という指導の目的から、「私はこんなにイライラしている」という気持ちを伝えることへ、少しずつ変わってきているのかもしれません。

指導とハラスメントの違いを考えるとき、
「相手の成長を思って言っているかどうかが大切」
と説明されることがあります。
もちろん、それは大切です。
でも私は、それだけでは実際の職場では判断しにくいと思っています。

今回のケースでも、最初は「できるようになってほしい」と思って指導していたはずだからです。
そこで、指導する側が迷ったときには、
「この指導を、第三者に説明できるだろうか?」
と考えてみてはどうでしょう。

「なぜ、その指導が必要だったのですか?」
「なぜ、その言い方だったのですか?」
「なぜ、みんなの前で伝える必要があったのですか?」
そして、
「その言葉によって、本人に何をできるようになってほしかったのですか?」
ここが説明できるでしょうか。

「何回言ったら分かるの?」
「そんなこともできないの?」
「やる気あるの?」
思わず、こんな言葉が出そうになることもあるでしょう。

でも、その言葉を伝えたことで、相手は次からできるようになるでしょうか。
答えに詰まったら、一度立ち止まるタイミングかもしれません。

では、できるまでニコニコ教え続ければいいのでしょうか。
もちろん、それも違います。
それでは、指導する側が疲れ切ってしまいます。
「もっと丁寧に教えるか」
「もっと厳しく言うか」
この二択になってきたら、少し視点を変えてみます。

「なぜできないんだ?」ではなく、「どこで止まっているんだ?」
何度教えてもうまくいかないと、
「ちゃんと話を聞いていないんじゃないか」
「覚える気がないんじゃないか」
と思ってしまうことがあります。

でも、「できない」と「やろうとしない」は同じではありません。

例えば、口頭でいくつもの指示を受けると整理しにくい。
優先順位をつけるのが苦手。
途中で別の仕事が入ると、元の作業に戻りにくい。
「適当にやっておいて」「いい感じにまとめて」と言われると、具体的に何をすればいいのか分からない。
「分かりました」と答えたけれど、実際にやってみると途中から分からなくなる。

人によって、情報の受け取り方や理解の仕方、仕事の進め方は違います。
しかも、本人自身も「自分がどこでつまずいているのか」を分かっているとは限りません。

だから、
「何度言ってもできない=やる気がない」
と、すぐに答えを出してしまわない。

「この人はなぜできないんだろう?」と人物を分析するより、
「この仕事の、どこでうまくいかなくなっているんだろう?」
と仕事の流れを見てみます。

「どこまでは一人でできる?」
「ここから次に何をする?」
「口頭ではなく、手順を書いてみたら?」
「一度に全部ではなく、一つずつならどうだろう?」
そんなふうに確認していくと、それまで見えていなかった「つまずき」が見つかることがあります。

ここでは、上司にちょっとだけ探偵役になってもらいます。



ただし、犯人探しではありません。
探すのは「できない人」ではなく「うまくいかないポイント」です。

それでも、うまくいかないことはあります。
いろいろ試した。
本人とも話した。
教え方も変えた。
それでも難しい。

ここまで来たら、「次はどう教えようか」を上司一人で考え続ける段階ではないと私は思います。

いったん指導することから離れて、組織として状況を整理する。
「できない」「何度言っても同じ」という印象ではなく、実際に何が、どの場面で、どの程度できていないのか。
会社が求めている到達点はどこなのか。
これまで、どのような指導や工夫をしてきたのか。
本人は何に困っているのか。
一人の上司の見方だけではなく、別の管理職や人事なども入って整理します。

そして、
このまま指導を続けるのか。
支援の方法を変えるのか。
担当する業務や役割を見直すのか。
ほかの対応を検討するのか。
「次に何をするのか」を、上司ではなく組織として決める。



ここで大切なのは、いつまでも「もう少し様子を見よう」にしないことです。
「もう一度教えてみてください」
「もう少し様子を見てください」
では、結局また上司のところにボールが戻ってきます。

そうならないためにも、
「ここまでやっても改善が難しければ、次の対応を検討する」
という区切りを持っておく。

私は、ハラスメントを防ぐために必要なのは、管理職に「感情的にならないでください」と求めることだけではないと思っています。
指導が行き詰まったとき、その問題を上司から組織へ引き取る仕組みを持っているか。

そして管理職自身も、
「え? また?」
と思ったときに、それを単なるイライラで終わらせず、
「そろそろ、やり方を変えるサインかも」
と気づけるか。

「何度言ったら分かるの?」
その言葉が出てくる前に、できることは意外とたくさんあります。
もっと強く言う前に、つまずきを探す。
それでも難しければ、一人で抱え込まず、組織に渡す。

ハラスメントを防ぐということは、「言ってはいけない言葉」を覚えることだけではなく
うまくいかないときの「次の一手」を増やしておくことなのかもしれません。

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嶋田由紀子
専門家

嶋田由紀子(キャリアコンサルタント・研修講師)

Office Lale

社員が笑顔になり、コミュニケーション力が向上する研修をオーダーメイドで提供。ハラスメントやメンタルヘルスなど多様な課題解決もサポート。キャリアコンサルタント資格を有し、社員のキャリア相談にも応じます。

嶋田由紀子プロは四国放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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