子が大学入学時に受けた奨学金を親が一括返済した場合における課税関係
本稿では、法人税の課税標準を中心に、所得税と比較しながら改めて振り返ります。
■ 法人税の基本
法人税は、法人(会社)の所得に対して課税される税金であり、所得税と同様に国税であり、直接税の性格を有しています。税金を自ら計算し、自らが納付する申告納税方式であることも共通しています。
■ 個人事業と法人成り
法人成りとは、個人事業主が新たに法人を設立し、事業主体を法人へ変更することを言います。法人成りをすることで、様々なメリットを享受できます。
<メリットの一例>
① 社会的な信用力が高まる
② 責任の範囲が限定される
③ 税負担の軽減が図れる など
① 社会的信用力を高めることで、他者との取引がしやすくなったり、金融機関からの融資も受けやすくなります。人材確保もしやすくなり、結果として事業拡大へとつなげることも可能になります。
② 法人は、一定の場合を除き、原則として債務の弁済に対しては、株主の出資範囲内での責任に限定されます。
③ 個人事業主が法人成りして、その会社の代表者となった場合は、会社から役員報酬を受け取ることになるため、給与所得者として給与収入から給与所得控除額を差し引くことができます。さらに法人税率は比例税率であること、家族従業員に対して適正な金額であれば退職金を損金処理することができるなど、税負担の軽減を図ることができます。
その一方で、デメリットも存在します。
<デメリットの一例>
① 税務申告書の作成など手間がかかる
② 諸経費の負担が増大する
③ 赤字でも税負担が発生する など
① 株式会社の場合、複式簿記での記帳が必要であり、税務申告書は所得税の青色申告と同様に複雑になっています。
② 法人成りをするには、会社の設立やそのための費用が必要となります。また、健康保険や厚生年金保険への加入が義務付けられており、会社はその保険料ほ折半負担しなければなりません。
③ 仮に、決算申告が赤字だとしても法人住民税の均等割りとして、最低でも7万円の税負担が発生します。
■ 当期純利益と法人税の課税基準
法人税は、企業会計上の当期純利益がそのまま法人税の所得になるわけではありません。確定した当期純利益を基に一定の税務調整を行って、法人税の課税標準である所得金額を計算します。
企業会計上の当期純利益は、収益から費用を差し引いた金額となります。これに対して、法人税の所得金額は、益金から損金を差し引いた金額となるため、この点が大きく異なります。
企業会計上の当期純利益は一定期間の適正な損益の把握のために計算するのに対して、法人税法上の課税所得は課税の公平性の見地から適正な税負担の実現のために計算します。そのため、当期純利益と課税所得は必ずしも一致しません。
■ 税務調査と別表4
法人税の課税標準である所得金額を求めるには、企業会計上の当期純利益から一定の税務調整を行う事は既に説明しました。税務調整を行うためのものが「所得の金額の計算に関する明細書(簡易様式)」という書類であり、いわゆる別表4です。収益を調整し益金を計算するステップには、益金算入と益金不算入があります。
益金算入とは、企業会計上の収益ではありませんが、法人税法上収益の額に算入するもので、具体的には、売上高の計上漏れや、貸倒引当金取崩不足額などが該当します。益金に算入するということは、所得金額に加算することを意味します。
益金不算入とは、企業会計上の収益ですが、法人税法上益金の額に算入しないもので、受取配当金等の益金不算入額、法人税等の還付金などが該当します。益金に算入しないということは、所得金額から減算することを意味します。
一方、費用を調整し、損金を計算するステップには、損金算入と損金不算入があります。
損金算入とは、企業会計上の費用ではありませんが、法人税法上の損金の額に算入するもので、繰越欠損金の損金算入、売上原価の計上漏れなどが該当します。損金に算入するということは、所得金額から減算することを意味します。
損金不算入とは、企業会計上の費用ですが、法人税法上損金の額に算入しないもので、交際費等の限度超過額、役員給与の損金不算入などが該当します。損金に算入しないということは、所得金額に加算することを意味します。
法人税を理解するには、利益と所得の違いや、そこで行われる税務調整などの知識は欠かすことができません。法人税の詳細について理解することは簡単ではありませんが、法人税の課税標準については理解しておきたい内容です。
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