子が大学入学時に受けた奨学金を親が一括返済した場合における課税関係
平成27年国勢調査によると、一般世帯数のうち「ひとり親と子供から成る世帯」は一般世帯数の8.9%であり上昇を続けています。未婚、別居、離婚および死別などの理由により、子供を1人で養育している親を中心に、所得税法上の所得控除である寡婦(寡夫)控除との関係を確認していきましょう。
■寡婦(寡夫)控除の適用に関する留意点
(1)法律婚の前提
寡婦(寡夫)控除は、法律婚(戸籍上の婚姻)を前提とし、配偶者と死別や離婚した後、婚姻をしていない者などに適用されます。したがって、いわゆる未婚の母は適用を受けることができません。また、DV(ドメスティック・バイオレンス)などにより子を連れて別居している場合であっても、離婚をしていない場合には適用を受けることができません。
(2)寡婦(寡夫)の判定時期と配偶者(特別)控除
納税者が寡婦(寡夫)に該当するかどうかの判定は、原則として、その年の12月31日の現況によるとされています。
また、その納税者の配偶者が配偶者控除または配偶者特別控除の対象となる配偶者であるかどうかの判定は、その年の12月31日の状況によるとされ、その判定に係る配偶者がその当時すでに死亡している場合はその死亡のときの現況によるとされています。
したがって、納税者が離婚による寡婦(寡夫)に該当する場合、寡婦(寡夫)控除の適用を受けることができますが、その年の12月31日において配偶者を有しないため、配偶者控除(または配偶者特別控除)の適用は受けることが出来ません。
一方、納税者が死別による寡婦(寡夫)に該当する場合、その納税者の配偶者が、死亡のときにおいて配偶者控除(または配偶者特別控除)の対象となる配偶者に該当するときは、配偶者控除(または配偶者特別控除)と、寡婦(寡夫)控除の双方の適用を受けることが可能です。
(3)寡婦(寡夫)の要件と扶養親族や子との関係
寡婦(寡夫)控除の適用上、扶養親族または生計を一にする子には年齢制限はなく、16歳未満である子(年少扶養親族)も含まれます。
また、寡婦について、子が働き始めて子が所得要件を満たさなくなった場合であっても、自分の親を扶養しているなど親が扶養親族に該当する場合には、寡婦控除(27万円)の適用を受けることができ(ただし、扶養親族である「子」を有しないため特定の寡婦には該当しません)、併せてその親を扶養対象扶養親族とする扶養控除の適用も受けることが出来ます。
離婚や死別により配偶者を有しなくなった納税者が子を有しない場合における「寡婦」および「寡夫」の要件を確認します。例えば、「寡婦」は、夫と「離婚」した後、婚姻していない者は、扶養親族等を有することが要件ではありますが、夫と「死別」した後、婚姻していない者は、本人の合計所得が500万円以下であれば、扶養親族等を有することは要件とされていません。なお、「寡夫」は、総所得金額が38万円以下の生計を一にする子を有することが要件とされているため、子を有しない男性については、妻と死別または離婚のいずれの場合であっても、寡夫控除の適用を受けることはできません。
(4)所得税の確定申告を要しない給与所得者の適用手続き
給与所得者は、勤務先において給与から所得税が源泉徴収され、年末調整で納税が完結することから、原則として、所得税の確定申告を要しません。このような給与所得者に対する寡婦(寡夫)控除は、勤務先に提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の所定欄に一定の事項を記載することにより適用を受けることが出来ます。また、寡婦(寡夫)控除の適用効果は、生命保険料控除のように年末調整時になってから反映されるのではなく、扶養控除と同様に給与の支払いを受ける際の源泉徴収税額にも反映されます。自分が寡婦(寡夫)に該当するにも関わらず、必要な記載をしていないために寡婦(寡夫)控除が適用されていないケースもあるので、必ず確認しましょう。