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内山瑛(うちやまあきら) / 公認会計士

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コラム

相続の落とし穴「遺留分」(2/2)

2017年7月13日 公開 / 2020年4月29日更新

テーマ:税金

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 相続 手続き

相続に関する裁判のうち、多くの部分は、「遺留分」に関するものです。「○○に財産のすべてを相続させる」としていても、一定の相続人には、請求があれば財産を分与させなければなりません。遺留分とは、どのような制度なのでしょうか。遺留分がある人とない人、遺留分の割合、遺留分の減殺請求のほか、遺留分の算定方法や、遺言の内容が遺留分を侵害してしまったような場合の対策などについて解説します。

●遺留分を侵害する遺言と事前準備
遺留分を侵害している遺言書が多くみられるのが、被相続人である親が同居している子に多くの財産を残したいと考えるケースです。
例えば、父は既に死亡、母と長男一家が同居、二男は別に居を構えて生活をしている場合、母がこのまま長男にこの家に住み続けてほしいと思い、遺言書に「自宅の土地と建物を長男に相続させる」という遺言内容を考えていたとします。このとき、自宅以外の財産が二男の遺留分を超えるのであれば、その分を二男に相続させることにより、二男から長男へ遺留分減殺請求をされることはありません。しかし、自宅以外の財産が二男の遺留分に満たない場合には、二男から長男への遺留分減殺請求がなされる可能性があります。
その場合に備えて、長男を受取人とした死亡保険金を準備しておく方法があります。遺留分減殺請求をされたときに、死亡保険金がない場合や不足する場合には、長男が自己の財産から支払う必要があるため、遺留分減殺請求された場合の準備をしておくべきです。
さらに、遺言書を作成するうえで行っておきたいこととして、同居している長男が自分に都合のよい内容を母に書かせたと思われないよう、遺言書に付言事項として、このような内容にした理由を残しておく配慮もしておくべきです。
生前贈与や特別受益が絡む場合は、遺留分に関する問題はさらにややこしいことになります。遺留分の算定は「被相続人の相続開始時の財産の価格」+「被相続人が生前贈与した財産の価値」―「債務の金額」で計算された金額を基礎とします。
相続開始前1年以内に生前贈与した財産については、受贈者が法定相続人以外であっても遺留分算定基礎財産に含まれます。また、贈与から1年を超えていても、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることをしって贈与したものについては、これも遺留分算定基礎財産に含まれます。
特別受益に該当する財産は、贈与された時期に関係なくすべて遺留分算定基礎財産に加算されます(被相続人から相続人に生前贈与された多くの財産が特別受益に該当することが一般的)。
例えば、母が相続財産5,000万円を、2人の相続人に対し、長男に1,000万円、長女に4,000万円を相続させることを遺言書に記載していた場合、長男及び長女の遺留分相当額はそれぞれ相続財産5,000万円の4分の1である1,250万円となり、これだけであれば長男は長女に対して250万円の遺留分減殺請求をすることができることになります。
しかし、長男がすでに母から結婚資金300万円、住宅取得資金700万円、合計1,000万円の贈与を受けていた場合、それらは特別受益に該当して遺留分算定基礎財産の対象となります。そうすると、遺留分算定基礎財産は合計で6,000万円となり、長男が受け取った財産は生前贈与による特別受益の1,000万円と遺言による1,000万円の計2,000万円で、遺留分相当額の1,500万円(4分の1)を超えていることになります。
このように、遺留分の算定には、相続開始前1年以内に生前贈与した財産や特別受益も対象財産に含める必要がありますが、このときの財産評価は相続開始時における評価額となることにも注意が必要です。評価額が変動する財産の場合、相続時点での評価額が贈与時点に比べて高くなるケースもあり、そのような場合には遺留分の影響も大きくなることにも注意が必要です。

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