外壁塗装の時期は自分でわかる?白い粉や目地の切れを確かめるセルフチェック

外壁の塗り替えで足場を組み、壁がみるみるきれいになっていくと、まだ塗る予定のなかった部分まで気になってくるものです。
「せっかくだからここも一緒に塗ってもらおう」
「周りがきれいになったのにここだけ古いままでは目立ってしまう」
そう考えるのは自然なことで、私もお客さまのお気持ちはよくわかります。ところが、塗装の仕事を長く続けてきた立場からお伝えすると、なかには塗ることで、かえって後々の手間や費用を増やしてしまうものがあります。「全部塗ればきれいで安心」という考え方が、思わぬ失敗につながることがあるのです。
このコラムでは、私が現場で経験してきたことをもとに、塗らない方がよい部分があるのはなぜか、そうした部分とどう付き合えばよいのかをお話しします。
目次
塗れば長持ちする、という思い込みが失敗を招く

塗装というと、塗ればきれいになり、塗ればそのぶん長持ちするというイメージを持たれている方が多いように思います。外壁の多くの部分については、その考えで間違いありません。塗膜が外壁材の表面を覆い、紫外線や雨から素材を守ってくれるからです。
しかし、どんなものにも塗装が向いているわけではありません。素材の性質や傷み具合によっては、塗料がうまくなじまなかったり、塗った膜ごと剥がれてしまったりすることがあります。塗装は、塗る相手の状態がよくて初めて役目を果たす工事だといえます。
そのため、周りと同じように塗ればきれいになるだろうと考えて塗ってしまうと、しばらくたってから思ってもいなかった不具合が出てくることがあります。
実際に私も、工事を進めるなかで、「周りがきれいになったのでここも塗ってほしい」というご相談をいただくことがあります。そうしたときこそ、一度立ち止まって考えていただきたいのです。どこを塗り、どこを塗らないかは、仕上がりの見た目だけでなく、その後の手入れや費用にも関わってきます。
「何でもやります」という約束が生んでいたこと
私がこの問題を強く意識するようになったのは、まだ独立する前、人に雇われて現場に出ていた頃の経験からです。
当時の私は、親方の塗装店で働く職人でした。仕事の多くは、元請けの会社から回ってきていました。元請けの営業担当の方がお客さまと打ち合わせをして工事の内容を決め、その内容が親方を通して私たち職人に伝えられ、現場で塗装をするという流れでした。
しかし、営業担当の方のなかには、現場のことをあまりご存じない方もいました。お客さまから頼まれると、どんなものでも「塗れます」と引き受けてしまうことがあったのです。ところが、実際に現場の職人の目で見ると、塗ってはいけないものが含まれていることがありました。
親方に対しては、「これは塗れない」と率直に伝えることはできましたが、お客さまとの約束はすでに営業担当の方が済ませています。職人の私たちが、お客さまに直接理由を説明できる機会はありませんでした。
お客さまに喜んでいただきたいという思いからの約束だったとしても、塗るべきではないものを塗れば、後で困るのはお客さまです。こうしたケースは、職人経験のある人であれば誰しも思い当たることがあるのではないかと思います。
現場で塗装を続けてきた者には、塗った後にその部分がどうなっていくかが想像できますから、現場をよく知らないまま工事の約束が交わされると、お客さまの思いと実際の工事の間に、こうした行き違いが生まれてしまいます。
塗った膜ごとめくれて交換になると費用がかさむ
では、塗ってはいけないものを塗ると、どうなるのでしょうか?
私がお客さまにお伝えしているのは、塗った直後はきれいになっても、後でペラペラとめくれてくることがあるということです。そうなると、その部分ごと交換しなければならなくなり、さらにお金がかかってしまいます。塗装にかけた費用とは別に、交換の費用も必要になります。塗料がベースの素材にきちんと密着するかどうかは、それだけ大切なことなのです。
塗料メーカーの資料でも、例えば、菊水化学工業が2023年11月時点の情報で作成した下塗り材のカタログでは、下地調整や水洗いが不十分だと塗膜剥離の原因になること、古い塗膜の浮きや剥がれ、チョーキングの層は取り除いてから施工することが注意点として挙げられています。さらに、古い塗膜の種類によっては縮みや膨れ、剥がれが起こる場合があるため、本施工の前に試し塗りで確認するよう求めています。
同じカタログでは、無機系や光触媒のサイディングボード、光触媒や親水処理などのコーティングが施された面に対して、その下塗り材の密着性を確認していることが紹介されています。外壁材の表面の状態に合わせて材料や手順を選ぶことが、塗装の前提になっていることがうかがえます。
塗らずに使い切るという選択肢もある
では、塗るのに向かない部分があった場合、どうすればよいのでしょうか。今の私は、周りがきれいになったからここもきれいにしたいだろうけれど、これを塗るとかえって大変なことになってしまうと、理由を添えてご説明するようにしています。
そのうえで、それでもよいので塗ってほしいとおっしゃる場合には、デメリットをご承知いただいたうえで塗ることもあります。ただ、おすすめはしません。それよりも、今のまま使えるところまで使っていただき、いよいよとなったらその時点で交換してはどうかとお伝えしています。塗らないことも、立派な選択肢の一つです。
私たちは、お客さまのご機嫌をうかがうために、「何でもやります」とお答えすることはありません。その代わり、できないことについては、できない理由をきちんとお伝えするようにしています。
若い頃の私は、職人として「塗るなら塗る」という考え方で仕事をしていました。現在は、お客さまがいてこその仕事だと考えるようになり、塗るか塗らないかも含めて、お客さまにとってどうなのかをご説明することを大事にしています。
メリット、デメリットを、職人の目線で経験をもとにご説明し、ご提案することを徹底しています。
見積もりの段階で塗る範囲を確かめる
こうした失敗を避けるために、皆さまにお願いしたいのは、塗り替えの相談や見積もりの段階で、どこを塗り、どこを塗らないのかを確かめておくことです。一緒に塗ってほしいと考えている部分があれば、その部分は塗っても大丈夫なのか、塗らない方がよいならその理由は何かを、遠慮なく尋ねてみてください。
塗らない方がよいと言われた場合には、塗らずにおいたらいつ頃まで使えそうか、交換を考えるのはどんな状態になったときかも聞いておくと、先々の計画が立てやすくなります。今すぐ手を入れるのか、使えるところまで使ってから交換するのかを、ご自身で選べるようになるためです。
そのときに、塗れる理由だけでなく、塗らない方がよい理由まで説明してくれるかどうかは、依頼先を考えるうえでの一つの手がかりになると思います。何でも引き受けてくれるかどうかより、塗った後のことまで考えて話をしてくれるかどうかを見ていただきたいと思います。
私も、ご希望の部分を拝見したうえで、塗った方がいいのか、使えるところまで使った方がいいのかを一緒に考えています。工事の前に話し合っておくことで、お客さまも納得したうえで工事を進めやすくなります。
まとめ
きれいにしたいというお気持ちに応えるためにも、塗らない方がよい部分には理由を添えてお伝えし、塗った後まで見据えた選択をお客さまと一緒に考えていきたいと私は考えています。
・外壁の塗り替えにあわせて、ほかの部分も塗るべきか迷っている方
・周りに合わせて塗るべきか、交換まで使い続けるべきか判断に迷う部分がある方
・見積もりの内容について、塗る範囲の理由まで納得してから依頼したい方


