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栗原憲二

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栗原憲二(くりはらけんじ) / 薬剤師

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コラム

わたしの失敗

2023年6月24日 公開 / 2023年6月29日更新

テーマ:調剤薬局、薬剤師、外来患者

コラムカテゴリ:医療・病院

 おはようございます。今日は「私の失敗」というテーマで書かせて頂こうと思います。

1)薬剤師は「間違えない」ことが第一に求められる

 実際のところ薬剤師の働きというものは、常に失敗と隣り合わせです。
 成功すること、言い換えると

・間違わずお薬をお出しすること
・お聞きすべき事柄を全て聞いた上で問題なくお薬をお出しすること


 など、間違わないことが優先的に求められている職業です。これは当然と言えば当然・・。お医者さんが出された処方箋の最終関門が薬剤師。そこで失敗すると、薬剤師個人にとどまらず医療機関全体の信用の面で大きなダメージを負うことになります。

 それゆえ薬剤師という職業上は、「間違えない」ということは本分でもあるとも言えます。

2)能動的な薬剤師

 薬剤師は「化学者」でもありますから、これは当然の事とも言えます。ですが、これが他の職業であればどうでしょうか・・。なんでも言われたことだけをやる仕事には、付加価値は生じにくいものです。新しい価値の提供、市場の開拓などの領域は、やはり受身で開かれる世界とは違うと言えます。

 最近では、薬剤師にも能動的な働きが求められるようになってきました。処方箋に基づいてお薬を出していればそれでいいというものでもない。
 医者が間違った処方を出してきて、それに薬剤師が気が付かなかった場合、今は薬剤師の責任も問う流れになってきています。実際私も、ほんの一度だけですが、そのまま出せばもしかすると患者様の「命」が危ぶまれることになりかねない処方箋を受けたことがあります。お薬の濃度計算、用量を確認した上で、粛々と疑義紹介をさせていただいたわけです。

 また、在宅医療に関わって軽自動車を走り回すということも、能動的な働きということもできるでしょう。薬局で患者様が処方箋を持ってきてくださるのを、まるで蟻地獄のように待ち受ける仕事から、FAXで飛んできた処方情報を元に患者様の元に駆けつけるなど、少なくともこれまでの薬剤師の働きにはなかったものです。

 言うまでもないことですが、日々薬理学や新しいお薬の勉強をされる薬剤師の方も日本にはたくさんいらっしゃいます。お薬の勉強をして、その知見を自分の患者様に生かそうとすることは、能動的な働き以外の何ものでもありません。そういった地味な取り組みを否定するかのような働きは、うわべだけの能動性だということは、はっきりと言わなければなりません。

3)アメリカでは薬剤師がお薬の用量を変更する時代

 アメリカの病院では、現在、医師が当該患者様のお薬の使用指針を提示した上でですが、それに基づいて薬剤師が患者様の状態を観察しながらお薬を調剤するということも行われています。アメリカが導入したことは十年後には少なからず日本も取り入れていくというのが一般的な流れなので、今後は日本の薬剤師の働きにもそういった取り組みが見られてくることでしょう。
 
 すなわち薬剤師が主体的になって、患者様と関わり、処方箋と睨めっこしていた場所から飛び出して、患者様に能動的に働きかける関係に向かおうとしている流れがあると言えます。

 受身的な働きも当然重要なことではありますが、能動的に患者さまと関わるということにやりがいを感じている薬剤師も少なからず今はいます。
 
 実際、私の記事に、「薬剤師、働きたくない」「薬剤師、やりがい」など、おそらくネガティブなキーワードで辿り着いてこられて何がしかのアイデアをもらいにくる(おそらく薬剤師の)方も少なくないのです。そして私もそのような一人です。

4)一人の女性患者との忘れられないエピソード・・

 ところが、ですね、その積極性が裏目に出ることもあるわけです・・。

 今は昔、ある50歳手前の女性の患者様が来られました。特に大きな疾患を抱えているわけではなかったのですが、腰の痛みなどを覚えてこられたのだそうです。

 でも、特別、強い痛みがあるわけでもない・・。そこで医師が骨密度の測定のために、大腿骨部の骨の様子を計測されたのだそうです。すると骨密度の面で「年相応だね」と言われたそうで、活性化ビタミンD製剤であるエルデカルシトールの処方箋を持って薬局に来られましたのです。

 これまで大きな疾病を抱えてこられたわけでもない。痛みといっても、歩く様子も特段変わった様子もない。お伺いすると、同僚の女性に「私はこういう薬を飲んでいる」というようなお話を聞いて、心当たりがあり病院に来られたのだそうです。

 年齢は、ちょうど私と同じ世代。姿も容姿も、特段老け込んでいる様子もなく、まだまだお元気で過ごせる具合でした。

 そこで私の心にちょっとした火がついたのです。「私と同世代だな。老け込んでいる年齢じゃない。ここは同世代の人間として、ひと言言いたい」。そう、余計な心が私に働いてしまったのです。

 処方箋を見ながら、「私と同世代ですね・・。フン」。

 「フン」と言ったのが、言葉なのか息なのかははっきり覚えていません。・・でも、時すでに遅し。その後その患者様が薬局に来られることは二度とありませんでした。

 申し訳なかったな、と思うこともあります。エルデカルシトールは、最近は免疫を支える働きも持っていると言われており、少なくともその服用がその患者様に悪い影響をもたらすことはなかったわけです。
 でも同様に、「あの患者さんは、今も頑張ってらっしゃるかな?」と時々思い返すことがあるのです。もし、今自分のいる薬局に来られることがあれば、最大限の歓迎の笑顔をもってお迎えしたいと思っているのです・・。

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