
オフィスを移転したい。
今のオフィスをリニューアルしたい。
そんなとき、最初に誰に相談すればいいのでしょうか。
設計事務所、内装会社、家具メーカー、事務器屋、オフィスデザイン会社。
選択肢はいろいろあります。
私自身、長くオフィスづくりに関わってきましたが、以前と今では「オフィスづくりの相談先」の考え方がかなり変わってきたと感じています。
今回は、これからオフィスづくりを始める方に向けて、最初の相談相手をどう選べばいいのかを書いてみたいと思います。
昔は、まず事務器屋さんに相談していた
以前のオフィスづくりでは、
「このスペースに机が何台入るか」
「社員が増えるのでデスクを追加したい」
「キャビネットを入れ替えたい」
といった相談が多くありました。
そのため、普段から会社に出入りしている事務器屋さんに相談するのが自然でした。
必要なものが比較的明確だったからです。
ところが、今のオフィスづくりは少し変わってきています。
単に机や椅子を入れ替えるだけではなく、
「コミュニケーションを増やしたい」
「採用にプラスになるオフィスにしたい」
「社員が長く働きたいと思える環境にしたい」
「会社の文化をオフィスにも表現したい」
といった相談が増えています。
つまり、「何を買うか」ではなく「どんな空間をつくるか」を考えるプロジェクトになってきたのだと思います。
家具屋、内装屋、設計事務所、オフィスデザイン会社。それぞれ役割が違う
では、誰に相談するのが正解なのでしょうか。
私は、やりたいことによって相談先を変えればいいと思っています。
例えば、
「椅子を入れ替えたい」
「デスクを追加したい」
ということであれば、家具を扱っている会社に相談すればいい。
「壁をつくりたい」
「床や壁紙を変えたい」
など、やりたい工事が明確であれば、内装会社に相談する方法もあります。
建物そのものの改修を伴うようなプロジェクトであれば、設計事務所に相談する必要が出てくるでしょう。
一方で、
「オフィス全体を変えたい」
「移転を機に働き方を見直したい」
「組織の課題をオフィス環境から変えていきたい」
ということであれば、オフィスデザイン会社に相談するのも一つの方法です。
大切なのは、どこが一番優れているかではなく、今回のプロジェクトで何を実現したいのかによって相談先を選ぶことだと思います。
「とりあえず3社から提案を」は悪くない。でも、その前に。
オフィスづくりでは、
「とりあえず3社くらいに声をかけて、提案と見積もりをもらおう」
という進め方もよくあります。
これ自体が悪いとは思いません。
自分たちのやりたいことが明確で、各社にお願いする内容がある程度決まっているのであれば、複数社の提案を比較するのはいい方法です。
ただ、実際にはここがなかなか難しい。
「新しいオフィスをいい感じにしてください」
という状態で数社に声をかけると、それぞれが違う前提で提案することになります。
そうすると、出てきた提案も大きく違います。
そして最後には、
「何を基準に比較すればいいんだろう?」
となってしまいます。
コンペをするなら「コンペ要件」を先に考える
そこで大切になるのが、コンペを始める前の整理です。
今回のオフィスづくりで何を解決したいのか。
どんな働き方にしたいのか。
何を重視して提案を評価するのか。
予算はどのくらいなのか。
どこまでを今回のプロジェクトに含めるのか。
こうした「コンペ要件」をある程度整理してから各社に提案を依頼すると、比較もしやすくなります。
とはいえ、これを自社だけで整理するのは簡単ではありません。
オフィス移転や大規模なリニューアルは、何度も経験するものではないからです。
だから、コンペを始める前の段階から相談できる相手を探すという方法もあります。
何を依頼すればいいのか。
どんな会社に声をかければいいのか。
何を基準に提案を評価すればいいのか。
そこから一緒に整理してくれる相手がいると、プロジェクトの進め方はかなり変わると思います。
オフィスは「コスト」なのか「投資」なのか
もう一つ、相談相手を選ぶ前に考えてほしいことがあります。
それは、オフィスにかけるお金をどう考えるかです。
もちろん、予算はとても大切です。
私たちも、お客様からお預かりした予算の中で最大限のことを考えます。
ただ、オフィスを単純な「コスト」として考えるのか、「会社への投資」として考えるのかによって、オフィスづくりは大きく変わります。
採用、生産性、コミュニケーション、企業文化、社員のモチベーション、会社のブランド。
オフィスは、さまざまなものに影響します。
その中でも、私が最近特に重要だと感じているのが人材の定着です。
一日の長い時間を過ごす場所だからこそ、
「ここで働きたい」
「この会社でこれからも働いていきたい」
と思える環境をつくることには、大きな意味があります。
人材の採用が難しくなっている今、オフィス環境への投資は、以前よりも重要になっていると感じています。
相談相手を選ぶときは「何を質問してくるか」を見てほしい
では、実際に何社かへ相談したとき、何を基準に相手を選べばいいのでしょうか。
実績を見る。
デザインを見る。
見積もりを見る。
もちろん、どれも大切です。
ただ、私ならもう一つ、
「その会社が、自分たちに何を質問してくるか」
を見てほしいと思います。
どんなオフィスにしたいですか?
という質問だけなのか。
それとも、
なぜオフィスを変えるのですか?
今、会社ではどんなことに困っていますか?
社員はどんな働き方をしていますか?
これから会社をどうしていきたいですか?
そんなところまで聞いてくれるのか。
質問の内容を見ると、その会社が今回のプロジェクトをどこまで考えようとしているのかが、少し見えてくると思います。
最後は「この人たちとやったらワクワクするか」
オフィスづくりは、決して小さな投資ではありません。
だから、コスト感をきちんと守ってくれそうか。
プロジェクトを最後まで任せられそうか。
そうした現実的な判断はもちろん必要です。
そのうえで、もう一つ大切にしてほしいことがあります。
その会社と話をしていて、これからの会社の姿にワクワクできるか。
完成したオフィスがどうなるかだけではありません。
このプロジェクトを通して会社がどう変わるのか。
社員がどう働くようになるのか。
会社の未来が少し楽しみになる。
そんな話ができる相手なら、良いパートナーになれる可能性が高いと思います。
オフィスづくりは「発注先」ではなく「一緒に考える相手」を探す
もし知り合いの経営者から、
「会社を移転することになったんだけど、まず誰に相談すればいい?」
と聞かれたら、私はこう答えると思います。
まずはいくつかの会社に相談してみてください。
そして、実績や金額だけではなく、どんな質問をしてくれるのか、どんな未来を一緒に考えてくれるのかを見てみてください。
その中で、
「この会社なら自分たちの課題を解決してくれそうだ」
「この人たちとならいいプロジェクトになりそうだ」
と感じるところがあれば、そこから深く話をしていけばいいと思います。
もし違和感があれば、他の会社にも相談すればいい。
オフィスは、完成して終わりではありません。
その後、社員が何年もそこで働いていく場所です。
だからこそ、「どこに発注するか」よりも、「誰と一緒につくっていくか」。
オフィスづくりを始めるときには、そこから考えてみてはいかがでしょうか。


