精神分析は精神科学に基づき心の病を癒し人間の謎を解き明かす第四章-1
第五章 言葉を超えて 享楽の果てへ『1_意味地獄』
意味と現実のジレンマ
これまで委曲をつくして人は意味だけを生きていると縷縷と述べて来た。対象aなるものが、欲望を牽引し、人間の心に自我をつくり、それを生きる意味として構成し、夢を叶えるという公式をつくった。自我はその公式に代入される代数である。答がaである。
欲望を生きる限り、人は現実に、生の現実に出会うことはない。それは意味であって、生の現実ではない。ならば、言葉を捨てれば生の現実に触れることが出来るが、そこに意味はない。人は意味と現実のジレンマの中にいる。
夢が叶った現実に留まることが出来ない。享楽は一瞬である。時空は留まることを知らず過ぎていく。それと共に、享楽も時の流れに巻き込まれて消滅し、次のaに向かわざるを得ない。だから、永遠の享楽を手にするには、叶わぬ夢を持つことなのである。その夢は想像界の中で生き延びていくから。
時空と言語の牢獄
しかし残念ながら、人が考え想い描ける夢は、総て言語であるが故に実現してしまうのである。想いもつかない事は、言語で表せないモノを指す。故に、夢の形をとることはない。故に叶わぬ夢は抱けないことになる。
言語の壁を越えられない人間は、時空を超えることが出来ないのである。人間は時空と言語の牢獄に幽閉されている。終身刑である。即ち自由から隔離された光のない世界にいる。光は303km/hの速度で宇宙を駆け巡っているが、人は静止したままである。
大木や岩と大して違わない。地球を一周しようと、世界中を旅しようと、結局地球の外に出られないのだから、地球という星に幽閉されているのに過ぎない、自由のない生物なのである。火星に移住しようが、所詮太陽系の中でしかない。
意味地獄からの解放：精神の自由
けれども、精神だけは宇宙でも、宇宙の外でも旅することができる。「宇宙の果てに行ってきた。145億光年かかったがそこからタイムマシンで一瞬にして帰って来た」と言えばいいだけだから、私は自由を生きている。
いつでも言葉一つで自由になれる。人は意味の牢獄から出られずに争っている。意味さえ捨てれば、戦争も平和も愛も憎しみも、宗教も道徳も倫理も善と悪も無くなってしまう。在るのは、唯生命が蠢いているということだけだ。
哀しみも喜びも、幸も不幸も、怒りも破壊も、すべて無くなり、静かな時が流れるだけだ。それはまるで肉体という生命を失って死後の世界の様子になる。地球上から意味を抜きとったら、あの世になった。
意味地獄から解放されて自由になった肉体なき魂だけになった霊達は、きっとこの安らぎの中に居るのだ。三次元に生きても、意味を持たなければ、あの世を生きているのと同様になる。それが聖者達なのだ。そして自由なのだ。
光の速度の映像と音速の言語
意味を持たなければ、次元を自由に移動できる。最近の私のセラピーは、対面して1分で、クライアントの全容が判ってしまう。全体で10分もあれば、セラピーは充分成立する。これはどうしてなのか。言語に意味をみるのではなく、言語が持っている映像を見ているから、光の速度で思考することが出来るからである。
思考は言葉でするために、論理立てるのは音速になる。毎秒340m/sほどで、遠く光の速度に及ばない。しかも量子コンピューターと同じアルゴリズムを持っているため、分析はアッという間に完了する。映像は視覚故に、光の速度で判断できるのである。私はクライアントの語る言葉が持っている映像をみるだけで瞬時に全体を把握する。これが1秒で、言葉にするのに1分である。
文字が見える
こんな分析法を誰に伝え、誰が判ってくれるか、おそらく不可能である。人間の脳のしくみは、人間には理解不能に終わる。私は思考していない。唯言葉を見ているだけなので、教えようが無い。「文字が見える」としか言いようがない。
今の私に見える人々の姿は、互いに罵り合い、怒りをぶつけ合い、ミサイルを打ち合い、論争し合い、潰し合い、殺し合っている悲愴で悲惨な地獄絵図に描かれ世界の住人が悲鳴を上げている断末魔である。
4-6『見えないもの』⇦ ⇨ 5-2 『煩悩』
➩ セラピストの格言
➩ 精神分析家の徒然草
