精神分析は精神科学に基づき心の病を癒し人間の謎を解き明かす第二章-3

大澤秀行

大澤秀行

テーマ:人間とは何か


第二章 心の誕生 『3_心と生命』


思考は物質化する


人間は細胞の寄せ集めの生命活動による「生命」を維持しつつ、言葉をしゃべり、世界を知覚において把え、構成し構造化して現実なる世界と対峙して、自らの想像による創造活動しながら、言語を物質化するために、必死に、そして貪欲に生きている。

生きているとは、煎じ詰めれば言語を、即ち夢を叶えるために生きている。想像というイメージの物質化が、人間が営んでいる経済活動と日常生活、産業、工業、文化は、言語を物質化しただけのことである。
これを私は「思考は物質化する」と定義した。


人間になれない人類


欲望は欠如から生まれるので無限であるが、夢は言語故に有限である。知っている事しか想像することができない。それが人間である。故に叶わぬ夢を持つことは不可能である。

世界平和は誰もが唱え、祈ることができるのに、何故平和は訪れないのか。それは核のボタンを押す人の治政者の中に平和という文字が登録されている人が居ないからである。

戦争と略奪の文字はあっても、平和と対話、譲歩という文字は存在しない。世界を動かしている一握りの人達に、共存共栄の文字はない。自国ファーストと利益以外にないからトランプのような大統領が現れるのだ。血の幻想を抱いたヒトラーが居たからアウシュヴィッツのホロコーストが生まれたのだ。


人類は唯一人の人間によって滅んでしまう、危うく脆い存在なのである。そして先を見通すVisionを持てない、その日暮らしの日和見主義者の刹那的存在なのである。100年の大計は描けても、1000年の先を見通す眼を持てない人類は、人間にはなれないのである。


恐ろしい心:自分至上主義


言葉を持った人間が「平和」の二文字を実現できるかどうか、神は地球を舞台に、壮大な実験を試みたのである。宇宙からみれば、ほんの塵のような星だが、それでもあくせく生きている人間にとっては、壮大に見える。たかが銀河系のほんの端くれの太陽系の一つの星でしかない地球での出来事は、どうでもいいことのように思える。

なのに、五色民族は、血眼になって殺し合っている。言葉を持っているにも拘わらず、それを使って対話による合意を持とうと努力しないコミュニケーション障害が、国家間レベルで起きている。

それはすべて私利私欲である。自国と自分の利益だけを求めるエゴイズムである。自利利他の共存の考え方は無い。その頑固なまでの自分至上主義は、人間がつくり出した心の中で、もっとも邪悪で破壊的で、恐ろしい心である。これを日本語では鬼という。西洋は悪魔という。


鬼に対して衆生を救い、幸福へと導くのが仏で、悪魔に対して天子がいる。人間の心には、その両者共に棲んでいる。鬼と仏が、悪魔と天子が一人の人間の心の中に生きている。分裂しているために、どちらかが前面に顔を出し歴史をつくってきた。

この地上を制するのは、悪魔なのか天使なのか、誰にも予測つかない。これまでの歴史をみると、戦争の後に平和が来ているかの様に見えるが、実は地上から戦火が途絶えたことは一度もない。それを証言したのは、宇宙飛行士である。

宇宙船から地球を眼下に見おろして眺めていた時、花火のように砲弾の閃光が光っていたと、言った。それは消えることがなかったとも。


心と生命

結局人間のこの二面性は、人の性は善か悪かどちらなのかを論じた、性善説と性悪説をつくり出した。結論はどちらかでではなく、共に持ち合わせているとなった。事実がそれを物語っているからである。

悪魔の囁きと、天使のほほえみのどちらが人間の心に届くのであろうか。それを決めるのは人間の心である。心は今どこに在るのだろうか。世界の人々のそれは。
いや、もう既に心を失っているのかもしれない。インターネット上の網のデジタル信号に取りこまれて、心は崩壊して、「0」と「1」になってしまっている。



心の0は「虚無」で、1は「存在」を表す。人は時間の流れの中で、存在と無を明滅させながら生命を維持しているだけの生命体でしかなくなった。


2-2 『意味を生きる人間』 ⇦ ⇨ 2-4『心を超えて』

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大澤秀行
専門家

大澤秀行(精神分析家)

合同会社LAFAERO1(ラファエロワン)

精神分析家として34年の臨床実績があり、現在もメールや電話も合わせると、一日平均10名の精神分析によるセラピーを行っている。

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