精神分析は精神科学に基づき心の病を癒し人間の謎を解き明かす第四章-1
第一章 生命の始まり 『5_平和と愛を求める自我』
巨大な消費システム
世界の人口、即ち地球上に現在80億の人々が、それぞれの国をつくり、その中で生きて、生活している。経済は世界中が一つになって物・食・エネルギーを互いに交換し合い貿易と金融で世界を維持し、回している。その合間にミサイルを打ち込んで戦争し、殺し合っている。それが今の地球であり、80億人の日々の生活なのである。
80億分の1の「私」とは、一体何者でどんな存在なのであろう。経済と国は、一市民を単なる消費者であり、納税者でしかない。それ以上でもそれ以下でもなく、金を社会に放出するマシンでしかない。富める者と国は、市民から金を吐き出させて、富を独り占めする。
社会、経済、国家理念が作り出したのは、巨大な消費システムである。その最たるものが、エネルギーだ。化石燃料は燃され続け、石炭も天然ガスも燃され続けて、地球は、CO₂の毛布をかぶり、異常なほど地表体温が高くなり、今や瀕死の状態である。
種:地球人
個人の運命は最早存在しない。一国家、一民族、一地域の人々という区切りでしか人間は把えられなくなる。原爆が使われたら何十万単位の人が亡くなる。数人や数十人とかの飛行機事故の単位ではなくなる。
今や人の生命は小石よりも軽くなってしまった。それでも私は私である。自己存在の尊厳だけは失いたくない。個の尊厳を国も世界の国々の人々も、誰もしない。個の存在を認める小社会や小集団すら少なくなっている。
かつて日本や未開の地には、村や部族という小単位の集団が存在した。ところが、マスメディアやインターネットの布及により、世界は一つに繋がり、仮想の地球国が出来てしまった。今や、我々は民族や肌の色が違っても、インターネット、SNSにより、地球人という種になってしまった。
個の尊重の復活、コミュニケーション
個の尊重の復活をしなければ、人類は滅びる。
心理学が取り扱う対象は、一人の人間の「自我」である。人間である限り、他者から切り離された、私だけが持ちうる、そして知りうる私、即ち自我を持っている。その為に私ではない他者とは全く相容れない私の感性と思考と言葉と価値観がある。
それを自我といい、自分以外の他者のそれを「非我」という。
この互いに相違した自我は争いと対立、競争を招き、異に協調して生きることを難しくしている。そこでつくられたのが、コミュニケーション・会話力である。
言葉を使う人間は、互いに自我を言語化し、相互に理解し合い、同意、合意点を探して言葉を交わす術を見い出した。それがコミュニケーションである。
対話による調整を学び、人類は進化し、社会というコミュニティーをつくり出した。そしてそれが国家になり、国と国が対話することが出来るようになろうとしている今は、その過渡期である。果たして人類はその対話を収得し、戦争という武力行使を放棄できるであろうか。
今はその正念場で、試行錯誤している。イスラエルとガザ、イスラエルとイラン、ロシアとウクライナ、他この他の国々の紛争は対話による解決の途上である。
尊厳を取り戻せ

自国の利益に立つ限り、紛争解決は武力以外は見つからないであろう。力による一方的制圧は、利害の不均衡を生じさせ、遺恨を残し、戦争の種をそこに残すだけである。いつかそれは芽を出し、火種となって戦が起きる。
学習する動物と定義された筈の人間は、全く、未だにそれを成就していない。むしろ、過去の教訓や失敗から全く何も学ぶことのない、学習しない動物になってしまっている。動物としての進化を成し遂げていない人類に、未来はない。
一人一人の個としての尊厳を取り戻すなら、80億いようとも、一瞬で世界は変えられる。
人間よ、自覚せよ、私は神の子であることを。
何故なら平和と愛を求める自我を持っているから。
1‐4『人類は享楽を目指して生きよ』 ⇦ ⇨ 1-6 『精神分析とは』
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