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神田正範

犯罪に詳しく防犯を多角的に解説する対話型セミナー講師

神田正範(かんだまさのり) / 防犯コンサルタント

犯罪予防研究所

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取材後記

和歌山県小5殺害事件 2015.2.7.

2015年2月5日、和歌山県紀の川市で小5男児殺害事件が発生しました。
事件の取材協力要請に伴い、現地調査を行いましたので、気づいたことをまとめます。

■小学校に近い閑静な住宅街
犯行現場は、殺害された男児の通う小学校から、800m程度の場所です。国道から紀の川へ通じる生活道路を入り、田畑が点在する住宅街を通り抜けた、閑静な住宅街の一角で凄惨な事件は発生しました。

現場に入り、最初に感じたものは「なぜ?」という疑問でした。国道から小学校脇の生活道路へ入り、子どもたちと挨拶を交わしながら住宅街の中を進みました。田畑で農作業に精を出す人や疎らですが行き交う人もいる、こんな穏やかな場所で、本当に凄惨な事件が発生したのだろうか。そんな思いにさせるほど、日本中どこにでもある郊外の住宅地です。国道の入り口からは旧家も点在し、紀の川へ向け徐々に宅地造成されたようで、先に進むにつれ建物が新しくなっていきます。現場周辺は、40年ほど前に造成され、近所付き合いの絶えない様子も窺えました。

点在する田畑の中には、暫く手が入っていない様子で、荒地の様相を呈していました。また、行き止まりの路地が多く、計画的な土地開発ではないことも窺えます。

■犯行現場は住宅脇の空き地
凄惨な犯行の現場になった場所は、男児の住まいから一軒はさんだ宅地造成された空き地で、草が生い茂り、日常では気に留めない死角です。

犯罪者の選ぶ犯行場所は、人の目が無く、欲求を満たすにあたって邪魔の入らない場所です。俗にいう「死角」です。「死角」とは、目の届かない物陰だけではなく、人通りの少ない道や手入れされていない空き地なども指します。遮蔽物の無い場所でも、目を向けない(見ない)ことから物陰と同様です。
犯行のあった夕刻というのは、暗くなり始めで見落としの多くなる時間でもあり、交通事故が増える時間でもあります。また、夕食の買い物などで留守宅が増え、空き巣被害も増えつつあります。

見えない、見ない、見えにくいは、犯罪を企む者にとって絶好の機会です。また、見えにくいは、私たちにとっても交通事故を始め、階段の踏み外し、つまずきの原因でもありますので、注意が必要です。

■環境防犯と情報の共有化
現場周辺は、ガーデニングを楽しむ家庭もあり、足元の清掃も行き届いた清閑な雰囲気です。しかし、頭上へ目を向けると、街灯は点灯するものの、保護カバーは無くなり器具の古さも気になりました。

地域で取組む防犯対策として、環境防犯設計(CPTED)という考え方があります。犯罪をねじ伏せる対策ではなく、犯罪の機会を減らす対策です。そして、費用の掛からない対策でもあります。
犯罪者が好む場所(環境)は、人の関心が薄い場所です。道に吸い殻やゴミが落ちている(ゴミ集積所は一目瞭然)、塀や壁の破損や落書き、敷地外へ伸びすぎた植栽、街灯や標識など公共設備の破損、草が生い茂る空き地などが、関心の薄いことを物語ります。人の関心は、犯罪者にとって「捕まる」ことを連想させ、犯行を躊躇させる効果があります。
また、美化運動など地域ぐるみの活動が盛んな地域では、子どもたちの規範意識が高く、犯罪の発生率が低いことも実証されています。


この事件は、閑静な住宅街の中で、児童が犠牲になったことで注目を集め、犯行手口と近隣住民の逮捕で、恐怖と怒りや悲しみなど複雑な感情を抱くものでした。
もし、自分の住む場所で同じことが起きたら…。想像したくありませんが、今、出来る事を始めるしかありません。事件や事故は、誰かに感情をぶつけるだけでは、心の解決が図れません。予防にどれだけ尽力したかは、後悔を和らげる効果もあります。

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