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神田正範

犯罪に詳しく防犯を多角的に解説する対話型セミナー講師

神田正範(かんだまさのり) / 防犯コンサルタント

犯罪予防研究所

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取材後記

子どもの連れ去り事件の多発 2014.10.4.~6.

2014年、子どもの連れ去り事件が相次ぎ、11月には100件を上回り、前年より増加しています。
「子どもの防犯対策」についての依頼に伴い、埼玉県南部の小学校を中心に通学路、公園(遊び場)、子どもの防犯意識について調査・診断を行いましたので、気づいたことをまとめます。

■通学路の危険と安全
学校から指定された通学路と学区内すべての道を調査し、子どもとその家族の皆さんと徒歩で検証しました。

子どもたちは、危険な場所を詳しく知っています。自分なりに「危険」を解釈し、防御策を講じていることに驚かされました。日頃の学校や家庭での注意喚起が、功を奏していると実感できます。しかし、見逃せないのが「経験」と「自覚」です。犯罪者の手口になぞって質問を投げかけると「正義感」や「道徳心」が思いがけないハードルとなって立ち塞がります。道で蹲り、病気やケガを装う犯罪者を見かけても、真偽を見極める「経験」は子どもたちにありません。しかし、困った人を助けることは「道徳」で常識です。また、成長を促すための「自分でやりなさい」は、そのさじ加減が子どもたちには理解できません。つまり、両親を始め大人に誉めてもらいたい子どもたちは、困った人を見かけたとき「自分で助ける」ことを真っ先に考えてしまいます。大人を助けるだけの技量を持たない「社会的弱者」である「自覚」が薄く、「責任感」が強い表れでもあります。

子どもたちへの防犯教育は、「道徳」と同時に行い、過度の「期待」を持たない、持たせない事が重要であることを痛感しました。

■公園の危険と安全
子どもたちが指定する公園とその周辺を調査し、子どもとその家族の皆さんと検証しました。

事前に、子どもたちに「よく遊ぶ公園」と「あぶない公園」をアンケートで選んでもらい、調査しました。アンケート結果では、意外にも「よく遊ぶ」と「あぶない」が子どもによって異なり、Aさんの「よく遊ぶ」がBさんの「あぶない」であることが判りました。実際に調査してみると「危ない公園」には、犯罪者が近づきやすく、隠れる場所、紛れる場所があり、選ばれなかった公園に大きな危険が潜んでいることが、周辺住民への聞き取りで明らかになりました。

検証の段階で、子どもたちに選んだ理由を尋ねると「危ない公園」は、家族から注意喚起されていることが判り、「よく遊ぶ公園」は、大勢の子どもが遊んでいるからが大半の答えでした。子どもたちが選んでいる「安全」は、家族の注意と多数決であり、「知らない安心」という危険な習慣が窺えます。前述の選ばれなかった公園の大きな危険が裏付けになります。この公園は、樹木の手入れが行き届いておらず、大人には圧迫感を与え長時間の滞在が苦痛に感じますが、体の小さな子どもたちは違和感さえ得られないでしょう。また、粗大ゴミの集積所に指定され、最長1ヶ月間放置されることも稀ではありませんでした。そして、子どもたちが集う場所であり、子どもを狙う犯罪者にとっては格好の場所と言え、遊具の中に不審者が隠れていたという事実も発覚しました。このような事実は、知れば恐怖を感じ、知らなければ安心です。

環境が犯罪者を招き、知らない事が、子どもたちを危険に晒している確証が得られました。

■子どもたちの防犯意識
クイズ形式で、道徳と防犯の違いを子どもたちと学びました。

クイズは、道徳を犯行手口にかけた内容で、所謂「ひっかけ問題」です。10問を用意して挑みましたが、子どもたちは興味深い反応を示してくれました。始まりの3問目ぐらいまでは楽しみながら進みましたが、徐々に出題の傾向を意識する子どもが現れ、後半に差し掛かるころには多数決に従う子どもが表れ始めました。クイズが進むにつれ、問題の内容は高度化していきます。すると、自分の意見を主張する子どもが現れ、同時に反対意見が飛び出し、議論が始まってしまったのです。

防犯教育の要は、自分で気づくことです。厳しく聞こえるかも知れませんが、肉体的弱者である子どもたちの命は、犯罪に巻き込まれた時、犯罪者に委ねていることが現実です。頭で覚える学問は、いずれ忘れます。しかし、気づきは、身について進化はしても忘れられないものです。この気づきを利用した防犯教育こそが、子どもたちを守る最良の手段です。つまり、前述の「議論」は、正誤を決めるものではなく、多くの意見を集め、知恵を出し合う場として、見守らなければなりません。議論の中から生まれた答えは、子どもたちの気づきが与えたもので、必ず身につきます。

子どもたちの防犯対策は、道徳教育を覆すものが多く、目に涙を浮かべる子どもの純粋な姿が忘れられません。
自分の欲求を満たす為に、純粋な心に付入る犯罪者は、憎むべき存在と言っても過言ではありません。


子どもたちの持つ不審者情報や体験した危険を、学校職員が細かく把握していて感心させられました。しかし、家庭では関心は有るものの、子どもたちの情報をあまり知らないことに驚かされました。今年1月に発生(2月に現職警察官を検挙)した、群馬県吉岡町の小4女児連れ去り未遂事件から学べるように、子どもを犯罪から守れるのは家族と家庭環境です。頭で学ぶ防犯知識も実践できる芯(軸)が備わってなければ、役に立ちません。子どもたちの芯(軸)となる家庭環境を見直してみませんか。

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