井戸端会議は最強の防犯対策!?
侵入者の目的と侵入手口
住まいの防犯を考えるときに、真っ先に思い浮かぶのが「空き巣」ではないでしょうか。建物の内部は、壁に囲まれ、外部から遮断された空間で、外敵から守られている安心感が得られます。その安心を脅かすのが、侵入者です。「空き巣」という呼び名は、住宅を対象とした「泥棒(窃盗)の手口」で、留守宅を狙うことを指します。また、就寝中を狙う「忍込み」、在宅中を狙う「居空き」という手口があります。そして、様々な手法で侵入を試みます。ドアや窓を開ける不正開錠(こじ破りやガラス割りなど破壊を含みます)、無締り(鍵の掛かっていないドアや窓)、換気扇など器具の取り外し、壁の破壊などが「侵入の手口」として挙げられます。安心できる空間を侵入者に脅かされないように、侵入しにくくする「被害対象(ドアや窓)の強化」が、解りやすく、簡単な防犯対策です。しかし、「泥棒の手口」や「侵入の手口」は、年々変化し、侵入の目的も多岐に渡っています。手口の変化を敏感に察知することも重要ですが、目的や手口の変化を気に掛けない防犯対策が最も必要とされています。
防犯意識と共に変化する侵入者の手口
住宅侵入の目的で最も多い「泥棒(窃盗)」の侵入手口は、居住者の防犯意識の向上と共に変化しています。「ピッキング」と呼ばれる鍵の不正開錠が最も多かったのが、2000年(平成12年)で、被害の急増を背景に全国統計が開始された年でもあります。ピッキングという聞きなれない手法と被害件数に後押しされる形で、社会全体に防犯意識が広まり、向上しました。その結果、侵入場所はドアから窓へ移り、防犯ガラス・防犯フィルム、補助錠の普及などから、現在は無締り箇所(戸締りされていないドアや窓)へ移っています。この結果から、防犯対策は「イタチゴッコ」など揶揄されることもありますが、防犯意識の向上は、平成15年をピークに毎年減少を続ける「窃盗犯認知件数」で明らかです。そして、注目すべきは「侵入手口の稚拙化」です。「ピッキング」は、ピックやテンションと呼ばれる「特殊開錠工具」を使い、鍵の知識と技術が必要です。窓ガラスの破壊は、三角割り、焼き破りなど技術と経験が必要になり、無締りは何も必要ありません。元来、泥棒(窃盗犯)は「楽をして稼ぐ」ことが目的です。つまり、防犯意識の向上が、怠け者の泥棒を追い込んでいるのです。また、「空き巣」「忍込み」「居空き」など「泥棒の手口」にも同様の変化が表れています。
窃盗を目的とした侵入者の共通点は「捕まりたくない」ことで、鉢合わせしたくないのは居住者だけではありません。家人がいつ帰ってくるか判らない「空き巣」は、2002年(平成14年)をピークに減少を続けていますが、在宅していて逃げるタイミングが分かりやすい就寝中の「忍込み」は減少しません。(侵入窃盗の1割を維持)つまり、鉢合わせの危険を回避する傾向が表れています。検挙される理由は指紋や足跡など遺留物からですが、通報による現行犯逮捕を執拗に意識しているように感じます。
自己完結できない防犯対策
犯罪に対する備えは学ぶ機会が少なく、自分と違う犯罪者の狙いや心理は、学ぶ前に諦めがちになります。しかし、諦めたときから危険は増していくだけですので、関心を持つことが大切です。
住宅を対象とした侵入者の目的で、最も多いのは「泥棒(窃盗)」です。しかし、少数であっても意識しなければならないのが、「強盗」「性犯罪」「放火」など身体を狙った侵入です。また、見逃せないものに「飲食」「睡眠」「居住」なども挙げられます。社会問題になっている「空き家」がターゲットとなり、火災による類焼なども考えられます。
住宅への侵入目的は侵入者によって異なり、対策もそれぞれです。しかし、防犯対策には共通点があり「1つのことに拘らない」「自己完結できない」の2点です。住宅防犯では、侵入者の攻撃(ドアや窓の鍵開けや破壊)に拘ると、次の防御(戸締りなど)が疎かになります。また、自身だけが完璧な対策を施しても、犯罪者が狙う地域(エリア)であることは変わりません。そして、放火では類焼の恐れもあります。
侵入者の手口や心理は、怠け者が考え出す稚拙なものです。犯罪を0にすることが不可能であっても、0に近づけることは可能です。怠け者の犯罪者が嫌うことは、規範意識とコミュニティ(仲間意識)です。可能な限り、近隣住民とのコミュニケーションを強化し、居住地域に犯罪者が近づけないようにすることが、「被害対象(ドアや窓)の強化」の次に行うべき防犯対策です。
各数値は、法務省「平成25年版犯罪白書」より参照