子どもを守る「命のホイッスル」

神田正範

神田正範

テーマ:子どもの防犯

ホイッスル

犯罪者は大きな音が大嫌い

犯罪者が最も嫌うのは、欲求を遂げられないことです。犯罪者が犯行に及ぶときは、入念な下見やシミュレーションを行っていて、検挙されたときの処遇を意識しています。また、慎重が故に状況の変化に敏感に反応してしまい、暗闇での「光」、人気のない場所での「音」、犯行の阻止、通報、検挙を連想させる「人の目」を嫌います。
今まさに、犯罪者の魔の手が伸びようとした時、子どもたちに出来る事は「大声で叫ぶ」「全速力で逃げる」の2つだけです。そして、日頃から想定していない犯罪被害に遭遇したとき、恐怖や緊張、焦りなどから、2つのことを同時に行うのは、私たち大人でも困難なことです。また、大声を出す習慣の無い子どもにとっては、叫ぶことすら困難なはずです。

逃げるタイミングを作る大きな音

音の効果は、聞く立場によって異なります。イライラしていれば名曲でも雑音となり、穏やかであれば子どもたちの騒ぐ声も心地よく感じることさえあります。では、犯罪者にとって、どんな音がどのように聞こえているのでしょうか。

犯行を企む犯罪者は、自分の行いを誰にも見られたくないものです。自ら音をたてないように、僅かな音でも気づかれないだろうかと、慎重かつ臆病になっています。また、生活音に掻き消されてしまう小さな音でも、大きく感じているはずです。では、犯罪者の意図を知らない私たちにとってはどうでしょうか。日常生活に於いて、危険を感じる音には、何があるでしょうか。車のクラクション、自転車のベル、火災警報器のサイレンなどが挙げられます。つまり、日常的に聞かない大きな音に、危険を感じているはずです。

慎重かつ臆病になっている犯罪者が、日常的に聞かない大きな音を聞いたら、慌てふためいて犯行を躊躇するでしょう。大きな音が大声やホイッスル、防犯ブザーで、犯罪者が躊躇した瞬間が逃げるタイミングです。

警戒心とコミュニティの強化こそ防犯対策の基本

通学路を行き交う子どもたちの姿に、懸念されることが1つあります。それは、防犯ブザーの取付け位置で、ランドセルに取付けられていることです。

防犯ブザーは、ピンを抜くと電池が切れるまで、大音響が鳴り響きます。しかし、犯罪者が狙っているのは子どもたちであって、ランドセルではありません。ホイッスルや防犯ブザーには、緊急事態を知らせるだけではなく、現在地を知らせる役割もあります。剥ぎ取られたランドセルが、道端で大音響を鳴り響かせていれば、誰でも「何かあった」と察するはずです。しかし、そこに子どもはいません。ホイッスルや防犯ブザーは、いつでも使えるよう身に着けることが推奨されていますが、身に着けることは、子どもたち自身から大音響が鳴り響くことになり、連れ去りを躊躇させる効果があります。犯行の躊躇は、逃げるタイミングを作り出し、安全性を高めます。

緊急事態や現在地を知らせるホイッスルや防犯ブザーは、防犯に役立つだけではありません。河川や池での「水の事故」、裏山や古井戸での「落下事故」、震災での「閉じ込め」「下敷き」など、あらゆる場面で子どもたちの命を守る道具です。また、電源を必要とするものは、定期的な点検(電池交換と動作確認)を欠かさないことが大切です。

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神田正範
専門家

神田正範(防犯コンサルタント)

犯罪予防研究所

警備会社で培った防犯の知識と情報、危険から身を守る防災と時代が求めるバリアフリーの調和を軸にした対話型セミナーが得意。目からウロコの話題と防犯意識の他、より良い暮らし方が見つかると好評を得ている。

神田正範プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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