定年後のシニア起業する上でおススメの業種
定年後、飲食店を開業したいというシニアは多いです。しかし、飲食業は宿泊業と並び、成功が難しい業種と言われています。
それでもトライしたいというなら、開業の前に知っておくべきことがいくつかあります。この記事では、資金や事業戦略など、飲食店開業前に必要不可欠な知識を取り上げます。
定年後、飲食店開業で成功するのは難しい
「料理が好きなので、定年後に小料理店でも始めてみたい」。そういうシニアは、思いのほか多いです。
しかし、これまでの記事で何度も書いてきたように、飲食業は成功しにくい業種のひとつです。その現状は統計数字にも表れています。厚生労働省の調査によると、飲食業は宿泊業と並び、開業率も廃業率も高い業種です。それだけ新陳代謝が激しいということです。全国にある飲食店は約144万件とされますが、毎年、約16万件が廃業していると言われています。つまり、約1割もの飲食店がなくなっているわけです。
このような状態を見れば、飲食店は気軽に始められるものではないとわかっていただけるでしょう。
とはいえ、それでも定年後は「好きな仕事をしたい」と考えるシニアは一定数いるはず。では、定年後に飲食店を開業する場合、どのようなことに注意すべきでしょうか。
私が考える注意すべき点は全部で5つあります。ひとつずつ見ていきましょう。
一つ目は「資金」です。一般的に飲食店を開業するには1~2千万円もの資金が必要と言われています。これほどのお金が必要になってくるのは、店舗を借りたり、設備を購入したりしなければならないからです。この膨大な開業資金を用意できるかどうかがポイントになってくるでしょう。
用意できない場合は、自宅を改装して店舗にするなど、知恵を絞る必要があります。
また、資金が不十分な場合は、フランチャイズを選ぶという手もあります。お弁当店など、さまざまな飲食業態でフランチャイズが用意されていますので、検討するとよいでしょう。
このとき注意したいのは、フランチャイズ店を実際に見に行き、オーナーに直接話を聞くこと。本部のみの話を鵜呑みにした結果、「こんなはずではなかった」という事態に陥るケースも報告されているからです。
飲食店で必要不可欠な事業戦略や人材戦略
次に「事業戦略」です。飲食店は事業戦略なしに持続的経営は難しいのが実態です。事業戦略を立てるためには、まずは事業計画書を作成するのがよいでしょう。
日本政策金融公庫などの開業支援を行う金融機関を中心に、事業計画書のモデルが公開されていますので、作成の参考にするとよいでしょう。事業計画書を作成することで、売り上げや集客など、事業運営に関するさまざまな課題が明確になるはずです。
飲食店はインターネットが発達して情報格差はなくなってきたものの、依然として立地が重要です。
駅前なのか、住宅街なのか、会社員が多いのか、ファミリーが多いのかなど、調査すべき事項はたくさんあります。ひとつずつつぶしていく必要があるでしょう。
また、店舗の内外装も成功を左右します。どのような業態(カフェ、居酒屋、寿司店など)、コンセプトで店を作るのか、きっちりと考えておくことが大切です。
そして「人材戦略」です。飲食店は個人経営が多いのが実態ですが、自分ひとりでは運営できないケースが多いです。というのも、365日間働き続けるのは体力的に厳しいからです。ある程度軌道に乗るまでは休めないかもしれませんが、アルバイトや自分の代わりとなる料理人を雇用するなど、人材についても考えておく必要があります。
昨今、求人しても人が集まらない、人材難が飲食業界を襲っています。大手の飲食チェーンでもアルバイトを雇用できない状態が続いているなか、採用が難しいのが実態です。
原価倒れで廃業しないよう、専門家の意見を聞くことも大切
四つ目は「仕入れ先の確保」です。飲食店で働いていた人でも仕入れ先を安定して確保し続けることは難しいケースもあります。
やはり、個人経営者となった途端に立場が不安定になるため、仲の良い仕入れ先であっても、取り引きを渋られることがあるからです。
ほかの業種から定年後に飲食店を開業する場合はもっと大変です。定年前から仕入れ先を確保できるよう動いておくべきでしょう。
最後に「原価管理」です。飲食店の廃業の理由でよくあるのが「原価倒れ」です。飲食店のなかには、原価を的確に把握していないケースが多く、売り上げはあったものの、儲からずに廃業してしまうのです。
会社員として勤務していた人は、案外、原価についてそれほど詳しくないもの。原価計算など、会計に関する基礎的な知識は飲食店経営にとって必要不可欠です。
とはいえ、飲食店は休みが少ないのが一般的。忙しいなか、毎日電卓をたたいて複雑な原価計算を行うのは難しいケースもあります。そんなときは自分ですべてやろうとせずに、会計の専門家にアドバイスを求めることも一案です。きっと力になってくれるでしょう。