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西村隆志

中小企業の立場にたった債権回収の専門家

西村隆志(にしむらたかし) / 弁護士

西村隆志法律事務所

コラム

借地・借家の法律相談

2012年4月17日 公開 / 2020年1月21日更新

コラムカテゴリ:法律関連

 建物(建物の一室)・土地の賃貸借からは、賃料(不払い、増減額)、契約の更新・解約、不動産の明渡し、敷金、原状回復等から様々な問題が生じます。
 これら不動産賃貸借から生じる問題について、適切、適法なご解決に協力させて頂きたいと思っております。

①賃料不払いについて

借主が賃料を支払わない場合、貸主の対応としては、大まかに以下のような流れとなります。
(1)借主に対して賃料を支払うよう催告
(2)支払ってくれない場合、契約を解除し(但し、1、2か月の支払遅滞では裁判所が解除を認めてくれない可能性もあります。)、建物の明渡しを請求
(3)借主が任意で明け渡してくれない場合には、建物明渡請求訴訟を提起
(4)強制執行

※契約解除後、借主が明け渡しをしない場合に、借主に無断で部屋に入り借主の所有物を運び出したり、鍵を替えて借主が部屋に入れないようにするなどの追出し行為が行われることがあります。
 しかし、いくら建物が貸主自身の所有物であっても、これらの行為は違法であって、場合によっては刑事罰を科されるおそれさえあります。
 建物の明渡しを借主が任意で行ってくれない場合は、あくまで上記のような法的手続きにより返還を受ける必要があります。

②解約・更新拒絶について(建物賃貸借について)
 貸主から解約する場合、解約の申し入れをしてから6か月間経過する必要があり、かつ、その解約の申し入れに正当な事由があると認められる必要があります。
 また、契約期間満了後、契約の更新を拒絶する場合には、契約期間の満了の1年前から6か月前までに、契約を更新しないことを借主に通知する必要があり、かつ、更新しないことに正当な事由が認められる必要があります。
 (なお、これらの要件を満たしても、契約終了後に借主が建物を使い続けている場合には、直ちに異議を述べなければ契約が自動更新となってしまうので注意が必要です。)
 解約申入れ・更新拒絶通知をしても、この正当事由が認められなければ、解約・更新拒絶は認められません。
 正当事由の有無の判断は、当事者双方の様々な事情を総合的に考慮して判断されますが、最も重視される要素は、当事者の当該不動産を使用する必要性の程度で、それ以外の立退料などの要素は補充的なものになります。立退料さえ払えば正当事由が認められる、というものではありません。

(土地賃貸借について)
 建物所有を目的とする土地賃貸借では、契約期間を定めなかった場合や、30年未満とした場合でも、契約期間は30年とされます。(駐車場として利用する目的で土地の賃貸借契約を締結した場合は、建物所有目的ではないので、契約通りの契約期間になります。)
 そして、契約期間が終了しても、借主に対し契約の更新をしない、と表明しなければ、契約はそれまでと同じ契約条件で自動更新されます。
 また、契約の更新拒絶をしても、正当事由が認められないのは、建物の賃貸借と同様です。

③賃料増額請求(借主からの減額請求)について
 賃料が、以下の要件を考慮し、不相当になっている場合には、賃料の増減額請求が可能です。
  ・租税その他の負担の増減
  ・土地・建物の価格の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動
  ・近傍類似の土地・建物の賃料との比較
  ・その他の事情(ex.賃貸人支出の改装工事費用等)
 共益費・管理費についても、賃料の一部とされている場合には増減額請求が可能です。
 賃料増減額請求後、相手方と賃料額についての協議が整わない場合の法的措置としては、まず、調停の申し立てをしなければならず、調停が不調に終わった場合に訴訟を提起することになります。
 相当な賃料額の算定は、上記の要素を考慮して判断されますが、専門的判断が必要で、不動産鑑定士による鑑定を行うことになり、鑑定士の費用(十数万円から数十万円)が必要となります。ですので、訴訟を提起する場合は、訴訟に必要な費用も考慮する必要があります。
 なお、請求の効果は、請求時から将来に向かって生じ、請求前の賃料については請求の影響を受けません。

④敷金が返ってこない
 敷金が返還されない理由としては
 ・賃料の滞納があり敷金から支払われた
 ・原状回復費用が高額である
 ・敷引特約がある
等が考えられます。

・敷金の滞納家賃等への充当について
 敷金は、契約締結から建物・土地の明渡しまでに、賃貸借契約から生じる一切の債務を担保するものです。
 そのため、賃料の不払い・原状回復費用等の貸主に対する債務が残っていた場合は、当然に敷金から支払われることとなります。

・原状回復について
 建物を明け渡す際、部屋の壁や床などが汚れたり傷んだりしており、その汚損が普通の生活を送っていれば通常 生じるもの(通常損耗)であれば、それを修復する費用は原則として貸主の負担で行うべきで、借主は費用を負担す る必要はありません。
 しかし、通常損耗を超える汚損(ex.ペットによる汚れ・臭い、子供の不注意によるガラスの破損等)については借主が 負担する必要があります。もっとも、この場合でも修繕費の全額を借主が負担するわけではなく、通常損耗にあたる 部分は貸主も負担することとなります。
 通常損耗について、借主が負担すべきである、との内容の特約(通常損耗補修特約)が定められる場合があります。ただ、この特約については、契約書に記載されていても、その内容や借主への説明方法次第によっては、効力が否定される場合があります。

・敷引特約について
 敷引特約とは、賃貸借終了時に敷金から敷引金を返還しない合意をいいます。
 この特約は以下の要件を満たす場合は有効とされます。
 ①敷引額の明示
 ②賃借人が明確にその額を認識したうえで契約を締結したこと
 ③敷引額が高額に過ぎないこと(賃料が近傍同種の賃料相場より大幅に低額な場合などは除く)
 この要件を満たさない場合は、契約書に特約の記載があっても無効であり、敷金の返還を受けることができます。

⑤更新料特約について
 更新料とは、賃貸借期間満了後、契約更新時に賃借人が支払う金銭のことをいいます。
 この更新料特約の有効性については、賃貸借契約書に一義的かつ具体的に更新料条項が記載され、貸主と借主との間で更新料の支払に関する明確な合意がされていれば、有効であるとされています。但し、更新料の額が、賃料額・更新期間と比べ、高額に過ぎる場合などは無効とされます。
例えば、更新料を賃料の2か月分、更新期間を1年とする特約は有効で、契約を更新したいなら更新料を支払う必要があります。

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