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「1日1食」を15年間続けていたら、パニック障害に

野口由美

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テーマ:症例紹介

15年間「1日1食」を続けていたら、パニック発作のような症状が現れ、生活に支障をきたすようになったという女性のお話しを紹介します。

「1日1食」というと驚きますが、「朝は時間がなくて食べられず、昼は仕事が忙しくて食べられず、気がついたら1日1食だった」ということってありますよね。

それに、最近は、16時間断食が流行っています。
「食べない方が健康によい」という不食の時代です。

「1日1食」を続けて健康になるのならいいんだけど、実際のところどうなんだろうと気になったことはありませんか。


電車が怖い

35歳、会社員の女性です。

半年ほど前から、急にドキドキして胸が苦しくなる発作がおこるようになりました。

しばらく休むとよくなるため、放置していたところ、徐々に発作の回数が増え、「ドキドキする発作がまた出たらどうしよう」と不安を感じるようになります。

そのうち、電車に乗るのも怖くなり、仕事にも支障が出てきました。

内科を受診して検査を行ったのですが、特に異常はありません。

心療内科を受診してはと言われ、受診したところ、処方薬をとってますます調子が悪くなってしまったのです。

薬はもう飲みたくなくて、薬を使わない方法はないかと相談に見えました。

15年間1日1食


血液検査結果をみますと、低血糖のほか、タンパク質や、ビタミン、ミネラル不足も認められ、栄養不足の状態です。

「毎日どのようなお食事をとっていますか?」と尋ねたところ、
「15年ほど前から、1日1食を続けている」といわれます。

朝は忙しく食欲もないので、自然と食べなくなり、昼は、仕事が忙しくて食べる時間がなく、自然に1日1食になったのだそうです。

けれども、特に体調は変わりません。

そのうち、「1日一食健康法」の存在を知り、さらには「16時間断食」の流行もあって、偶然続けてきた自分の食事法が、実は体によいものだと思って続けていたそうです。

低血糖症+タンパク質、ビタミン、ミネラル不足

血液検査結果から低血糖が認められることを説明し、さらに、低血糖が不安やパニック障害のような症状をおこすこと、エネルギーをつくれないので疲れやすくなると話しますと、

「このところ、朝はおきられないし、午後の疲労感がひどくて、年齢かなと思っていたんですけど、低血糖が原因だったんですね」
と驚いておられます。

さらに、タンパク質、ビタミン、ミネラル不足では、神経伝達物質をつくることができないので、不安になったり、イライラしたりと、気持ちは不安定になりますよとお話ししますと、

「わぁ、当てはまりすぎて怖いくらいです。
最近、ささいなことで、ものすごくイライラするようになって、私、どうしちゃったんだろうかと思ってました。
以前はそんなことなかったのに……」

「15年間もずっと続けてきたことなのに、それが原因だなんて、びっくりしすぎて言葉になりません。
今まで、ずっとどうもなかったし、会社の検診でも異常ないといわれてきたので、ストレスとか、気の持ちようの問題だと思ってました。
もっと気持ちを強く持たないとダメだって自分を責めていたくらいです」

決して、「根性がないから」ではないんですよ。

ただただ、タンパク質、ビタミン、ミネラルがなくて、神経伝達物質をつくる原材料がないために、イライラしてしまうのです。

栄養を入れてあげると、体の感覚も、気持ちも全然変わってくると思います。

3食+補食

女性には、1日3食をしっかりとり、食間に補食をすすめました。

昼食を取れないなら、補食をこまめにとるという方法でもいいと思います。

「食事を変えて症状がなくなるのならやってみようと思います」

「食事って大切なんですね。
忙しいときほど、気をつけないといけないんだなって思いました。
今更ながらですが、今までの食事のことをすごく反省しています」

その後、三か月ほどして「なんだか元気になった感じ」があり、半年ほどすると「不安感や動悸はなくなりました」といわれました。

体調不良の原因が毎日の食事にあるとしたら

16時間断食で体調が良くなるかたもいらっしゃいます。

しかし、断食を続けることで、ますます体調不良になり、悩んで受診される方を当院ではたくさん経験しています。


それまで3食とることで一日分の栄養をキープしていたものが、2食や1食に減ると、一日の総栄養量がかなり低下してしまいます。

特に、もともとたくさん食べられるほうではない、きゃしゃな細身の女性が一食を抜いてしまうと、タンパク質、ビタミン、ミネラルの一日の摂取量は激減し、栄養不足に傾いてしまいます。


炭水化物が不足すれば、低血糖におちいりやすく、エネルギー不足になるため、疲れやすく、頭も働きにくくなります。

その結果、朝、起きられない、物忘れが多い、たいせつな約束をすっぽかすなど、さまざまな症状がおこります。


また、タンパク質、ビタミン、ミネラル不足では、神経伝達物質を十分に作ることができず、イライラしたり、不安になったり、抑うつ症状がでたりします。


もしあなたが、原因不明の体調不良で悩んでおられるのでしたら、もしかすると、食事に注目することで解決するかもしれません。

一度、ご自身のお食事を振り返ってみてはいかがでしょう。

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野口由美
専門家

野口由美(医師)

クリニック千里の森

患者一人ひとりの個性を重視した「患者ファースト」の治療方針のもと、薬に頼らない医療を提供。近代西洋医学の最前線で培った豊富な知識、自身の体験を裏付けに、幅広い選択肢の中から最適な治療法を提案します。

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