資産管理会社の相続対策は“両刃の剣”。税務署に否認されないための鉄則

山田泰平

山田泰平

テーマ:相続関係

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。

「資産管理会社を設立すれば、所得税も相続税も大幅に節税できる」

多くの資産、特に複数の収益不動産をお持ちの方であれば、一度はこのような“魔法の杖”のような話を聞いたことがあるかもしれません。

確かに、資産管理会社をうまく活用すれば、財産の円滑な承継と、効果的な節税を実現できる可能性があります。

しかし、その一方で、税務署から「実態のないペーパーカンパニーだ」と判断され、全ての節税効果を否認されるという、致命的なリスクと常に隣り合わせの、まさに“両刃の剣”なのです。

今回は、この極めて専門的で、高度な判断が求められる「資産管理会社を利用した相続対策」をテーマに、

  • 資産管理会社が、なぜ節税に繋がるのか
  • 税務署が“NO”を突きつける、典型的な否認ケース
  • 「実態がある」と認めさせるための、最低限の運営要件
  • 安易な設立が招く、出口戦略なき“塩漬け”のリスク


などを、分かりやすく解説していきましょう。

【結論】資産管理会社は“事業実態”が全て。単なる節税目的の設立は税務署に100%否認される。専門家チームとの盤石な運営体制が必須

資産管理会社が節税ツールとして機能する最大の理由は、個人にかかる所得税・相続税と、法人にかかる法人税の税率構造の違いを利用する点にあります。

しかし、このスキームが税務上認められるためには、その会社が、単なる税金逃れのための箱(ペーパーカンパニー)ではなく、独立した法人として、事業を主体的に行っているという「事業実態」がなければなりません。

税務署が最も厳しく目を光らせているのが、まさにこの点です。

事務所の実態がない、役員報酬が不当に高い、株主総会すら開かれていない…。

このような、およそ会社とは言えない実態であれば、税務署から「租税回避行為である」と判断され、設立そのものを否認されるのは当然の結果と言えるでしょう。

資産管理会社の設立と運営は、相続に強い税理士、司法書士、そして経営コンサルタントなどが一体となった、専門家チームとの二人三脚で進めるべき、高度な経営戦略です。

安易な気持ちで手を出すべき領域では、断じてありません。

1. なぜ節税になる? 資産管理会社の2つのメリット

資産管理会社を設立し、そこに個人所有の不動産などを移管することで、主に2つの税務メリットが期待できます。


メリット①:所得税の節税(所得の分散)

個人の不動産所得にかかる所得税は、最高税率45%の累進課税です。

  1. 一方、法人税の実効税率は、おおむね30%前後です。
  2. 個人で高額な家賃収入を得るよりも、会社で受け取り、そこから家族を役員にして役員報酬を支払う形にすれば、所得を分散でき、トータルの税負担を軽減できる可能性があります。



メリット②:相続税の節税(財産評価額の圧縮)

相続が発生した際、相続財産は「不動産そのもの」ではなく、「資産管理会社の株式」となります。

  1. この自社株式の評価額は、不動産を直接相続する場合の評価額よりも、様々な計算上の控除が適用される結果、低く算出される傾向があります。これにより、相続税の課税対象額を圧縮できる、というわけです。


2. 税務署はここを見る!「事業実態」を疑われる典型例

税務調査において、税務署は以下のポイントを厳しくチェックし、「事業実態」の有無を判断します。

  • 本店所在地の実態:登記上の本店所在地が、自宅の一室やバーチャルオフィスになっていないか。事務所としての実態があるか。
  • 役員の勤務実態:役員に名を連ねる配偶者や子供が、その報酬に見合うだけの業務を、実際に行っているか。名ばかり役員ではないか。
  • 財産管理の主体性:不動産の管理業務(入居者募集、家賃回収、修繕手配など)を、会社が主体的に行っているか。結局、すべてオーナー個人がやっていないか。
  • 法人としての形式:定款や株主総会議事録の作成、法人としての預金口座の利用など、会社法に則った、最低限の形式が整えられているか。

これらの問いに、一つでも明確に答えられない点があれば、税務署から厳しい指摘を受ける可能性が極めて高いと考えるべきでしょう。

3. 出口戦略なき設立の悲劇。会社の“解散”も容易ではない

一度設立した会社を、将来的にどうするのか。

この「出口戦略」を考えずに設立してしまうと、大きな問題に直面します。

  • 株式の承継問題:会社の株式を、後継者である子供たちにどう引き継がせるのか。兄弟間で不公平が生じないか。
  • 解散時の税金:もし会社を解散する場合、会社に残った財産(含み益のある不動産など)を株主に分配する際に、多額の「みなし配当課税」が発生する可能性があります。

「とりあえず設立して、節税のメリットだけ享受しよう」という安易な考えは、将来、子供たちに、より複雑で困難な課題を押し付けることになりかねないのです。

【まとめ】資産管理会社は“経営”。安易な節税神話に踊らされてはならない

資産管理会社の設立は、単なる相続対策の一手法ではありません。

それは、一つの会社を「経営」するということです。

その覚悟と、専門家と共に長期的な戦略を描く視点がなければ、成功はおぼつかないでしょう。

では、本日のポイントをまとめます。

  • 資産管理会社には、所得税・相続税の節税メリットがあるが、それは「事業実態」が伴って初めて認められる。
  • 単なる節税目的のペーパーカンパニーは、税務署から100%否認され、重い追徴課税のリスクを負う。
  • 「事業実態」の判断では、事務所の実態、役員の勤務実態、法人としての形式などが厳しく問われる。
  • 出口戦略(株式の承継や、将来の解散)までを見据えた、長期的な事業計画が不可欠。
  • 設立を検討する際は、必ず、資産管理会社の実務に精通した税理士や司法書士からなる専門家チームに相談すべき。


ご葬儀の後、ご遺族から「父が遺してくれた会社のおかげで、私たちは路頭に迷わずに済みました」と、感謝の言葉をいただくことがあります。

それは、故人様が単に節税のためだけでなく、家族の未来を守り事業を永続させるという、明確な経営ビジョンを持って会社を運営されてきた証拠なのですね。

財産を「守る」ということは、それほどまでに深く、そして尊い覚悟を伴うものなのだと、私たちは感じずにはいられません。

株式会社大阪セレモニー

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山田泰平
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山田泰平(葬儀)

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当社は家族葬を専門に、これまで1000件以上の葬儀をお手伝いさせて頂きました。少人数だからこそ実現できるきめ細やかなサービスと、ご遺族様の想いに寄り添った丁寧な対応を心がけています。

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