成年後見人が相続人になる際の注意点|遺産分割協議の利益相反と特別代理人選任をプロが解説
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「長男には、事業を継いでもらうために、他の子より多く財産を遺したい」
「介護で世話になった長女に、感謝の気持ちとして、自宅を相続させたい」
遺言書を作成する際、このように法定相続分とは異なる割合で財産を分けたいと考える方は、少なくありません。
しかし、その法的な指定だけでは、かえって子供たちの間に「なぜ自分だけ少ないんだ」という不公平感と、深刻な亀裂を生む“火種”になりかねないのです。
この冷たい法律論争を、温かい家族の対話へと変える方法があります。
それが、遺言書に添える「付言事項(ふげんじこう)」です。
今回は、このあまり知られていないけれど、極めて重要な「付言事項」をテーマに、
- 「付言事項」とは何か?法的効力との関係
- なぜ、このメッセージが“争族”を防ぐのか
- 実際に、家族を救った「付言事項」の感動的な文例
- 想いを効果的に伝えるための、3つの書き方のコツ
などを、分かりやすく解説していきましょう。
【結論】付言事項は、遺言書に遺す「最後のラブレター」。法的効力はないが、相続人の感情を動かし、“争族”を“和続”に変える最強の力を持つ
付言事項とは、遺言書の本文(誰に、何を、どれだけ相続させるか、といった法的な効力を持つ部分)とは別に、ご自身の想いや感謝の気持ち、そして、なぜそのような遺産分割にしたのかという理由などを、自由に書き記すことができるメッセージ部分のことです。
この付言事項には、法的な強制力は一切ありません。
しかし、
「なぜ、長男に多く財産を遺すのか」
「他の子供たちに、どれほど感謝しているか」
という、親の真実の想いが、そこにご自身の言葉で綴られていたとしたら、どうでしょうか?
たとえ相続分が少なくても、その理由に納得し、「親がそう言うなら…」と、相続人たちが穏やかに遺言内容を受け入れるケースは、驚くほど多いのです。
付言事項は、法律では動かせない人の「感情」に直接訴えかけることができる唯一無二の方法だと言えるでしょう。
1. なぜ効果絶大?付言事項が相続人の心を動かすメカニズム
相続トラブルの根源は、お金の多少ではなく、「自分は親から大切にされていなかったのではないか」という、承認欲求や愛情への渇望にある場合が少なくありません。
付言事項が果たす役割:
- 理由の明確化:「なぜ、この分け方にしたのか」という、遺言者の真意が明らかになることで、相続人は憶測や不信感から解放され、その判断を尊重しやすくなります。
- 感情への配慮:「財産は多く遺せないけれど、お前のことは心から愛している」というメッセージが、金額以上の価値を持ち、相続人の心を慰め、納得感へと導きます。
- 家族への最後の願い:「私が亡き後も、兄弟仲良く、助け合って生きていってほしい」という親の最後の願いが、争いを思いとどまらせる、強力な抑止力となるのです。
お金の問題を、愛情の問題へとシフトさせる。これが、付言事項の持つ力なのですね。
2. 家族の絆を守った、感動的な「付言事項」の文例
実際に、どのような言葉が人の心を動かすのでしょうか。
【文例①:介護をしてくれた長女へ自宅を遺すケース】
「私の財産の大部分を長女の花子に相続させることにしました。これは、私が長年病床に伏していた間、花子が自分の時間を犠牲にして、最後まで本当に親身に介護してくれたことへの、心からの感謝の気持ちです。太郎と次郎への相続分が少なくなり、本当に申し訳なく思っています。しかし、どうか花子の貢献に免じて、私のこの最後のわがままを許してください。お前たち三人は、私の生涯の宝物です。」
【文例②:事業承継のため、長男に自社株を集中させるケース】
「株式会社〇〇の株式は、すべて長男の太郎に相続させます。これは、会社を未来永劫存続させていくために、経営権を集中させる必要があるという、経営者としての私の最後の判断です。花子と次郎には、その代わりに、それぞれ預貯金を多く遺しました。どうか、これからは太郎を支え、力を合わせて会社を、そして家族を守っていってください。」
3. 想いを最大限に伝えるための、3つの書き方のコツ
効果的な付言事項にするためには、いくつかのコツがあります。
- すべての相続人へ、個別のメッセージを:財産を多く遺す子だけでなく、少なくなる子へも、必ず個別の感謝と愛情の言葉を伝えましょう。「あなたは〇〇なところが素晴らしかった」と、具体的なエピソードを交えると、より心に響きます。
- 感謝と「お詫び」の言葉を忘れずに:法定相続分と異なる分け方をする場合は、そのことで不利益を受ける相続人に対して、「申し訳ない」という気持ちを正直に伝えることが、感情的なしこりを和らげます。
- ネガティブな言葉は絶対に避ける:「〇〇は昔から言うことを聞かなかったから」といった、特定の相続人を非難するような内容は、逆効果です。あくまで、前向きで、愛情に満ちた言葉を心がけましょう。
【まとめ】遺言書は、想いを伝えるための最高のコミュニケーションツール
遺言書は、単なる財産の分配指示書ではありません。
それは、ご自身の人生の集大成として、家族への最後の想いを伝え、未来の絆を託すための、最も尊いコミュニケーションツールなのです。
では、本日のポイントをまとめます。
- 「付言事項」は、遺言書に法的な効力のない想いを自由に記せるメッセージ部分。
- 法的効力はないが、「なぜ、その分け方にしたのか」という理由を伝えることで、相続人の感情的な対立を防ぐ絶大な効果がある。
- 財産が少なくなる相続人へも、個別の感謝と愛情の言葉を伝えることが、円満相続の鍵。
- 法定相続分と異なる不公平な内容にする場合は特に、「申し訳ない」という気持ちを正直に伝えることが、相続人の納得感に繋がる。
- 「公正証書遺言」で法的な確実性を担保しつつ、「付言事項」で感情的な配慮を行う。この両輪が、最強の相続対策。
ご葬儀の場で、喪主様が遺言書の一部として、この「付言事項」を涙ながらに読み上げられることがあります。
その瞬間、会場は静まり返り、故人の深い愛情が、そこにいるすべての人々の心を打ちます。
財産よりも雄弁に、故人の想いを伝え、残された家族の心を一つにする。
そんな奇跡のような光景を、私たちは何度も見てきました。
株式会社大阪セレモニー



