尊厳死・延命拒否の意思を伝える「リビングウィル」って何？

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。

「もし自分が回復の見込みのない状態になったら、延命治療はどうしてほしいだろう？」

「親が望む最期を叶えてあげたいけれど、その意思をどう確認すればいいか分からない…」

人生の最終段階における医療の選択は、誰にとっても非常に重く、デリケートな問題です。

本人の意思が分からないまま、ご家族が「命の選択」を迫られるのは、計り知れないほど辛いことです。

そこで今回は、こうした事態を避けるために、ご自身の「最期の迎え方」に関する意思を明確に示しておく文書、「リビングウィル」について、

リビングウィルとは何か？尊厳死との関係
なぜリビングウィルが必要なのか？
リビングウィルに書くべき具体的な内容
法的効力と、意思を確実に反映させるためのポイント

などを、分かりやすく解説していきます。

【結論】リビングウィルは、終末期に望む医療を示す「生前の意思表明書」。家族と医療者の負担を激減させる最強の“お守り”

リビングウィルとは、ご自身が将来、病気や事故で回復の見込みがなくなり、死期が迫っていると判断された場合に、延命のためだけの医療行為（人工呼吸器や胃ろうなど）を差し控え、または中止してほしいという意思を、元気なうちに書面で表明しておくものです。

「尊厳死の宣言書」とも呼ばれます。

現在の日本には、尊厳死を直接定めた法律はなく、リビングウィルに絶対的な法的拘束力はありません。

しかし、ご本人の明確な意思が示されている場合、ご家族や医療チームはその意思を最大限尊重して判断を下すことができます。

これにより、

ご家族は「自分が親の死を決定した」という重い十字架を背負わずに済む。
医療者は、訴訟リスクを恐れず、本人の意思に沿った医療を提供しやすくなる。
ご本人は、「自分らしい穏やかな最期」という尊厳を守ることができる。

リビングウィルは、関わるすべての人を救う、非常に重要な「お守り」となるのです。

1. 尊厳死と安楽死は違う。リビングウィルが示す「自然な最期」

ここで、言葉の意味を正確に理解しておくことが大切です。

リビングウィルが示す「尊厳死」：
過剰な延命治療を拒否し、人間としての尊厳を保ちながら、死を自然なプロセスとして受け入れることです。
あくまで「死期を延ばさない」という考え方です。

「安楽死」との違い：
薬物などを積極的に用いて、患者の死期を人為的に早めることです。日本では認められていません。
リビングウィルは、安楽死を希望するものでは決してありません。

2. なぜ必要？残された家族の“心の負担”をなくすために

リビングウィルの最大の恩恵を受けるのは、実は残されるご家族かもしれません。

もし本人の意思が不明な場合、ご家族は以下のような究極の選択に苦しむことになります。

「延命治療を続ければ、植物状態で生き続けるだけかもしれない…」

「でも、治療をやめたら、自分が殺したことになるのではないか…」

この葛藤は、ご家族の心に深い傷を残し、時に親族間のトラブルにまで発展します。

しかし、そこに本人の明確な意思（リビングウィル）があれば、家族は「本人の希望を叶えてあげる」という立場で、意思決定に関わることができます。

この違いは、計り知れないほど大きいのです。

3. 具体的に何を書く？リビングウィルの基本構成

リビングウィルに決まった書式はありませんが、以下の項目を盛り込むのが一般的です。

前文：この文書が、自分の終末期医療に関する意思表明であることを宣言します。
意思表明：回復不能で死期が迫っていると診断された場合、生命維持のためだけの延命措置は行わないでほしい旨を記載します。（人工呼吸器、心肺蘇生、胃ろう、輸血など、拒否したい治療を具体的に列挙）
緩和ケアの希望：ただし、苦痛を和らげるための緩和ケア（麻薬などの使用を含む）は、最大限に実施してほしい旨を記載します。
その他：この意思表明が、誰にも強制されず、自発的かつ正常な判断能力のもとで行われたものであることを記します。
結び：自分の意思を尊重してくれるよう、家族や医療関係者へのお願いの言葉を添えます。
署名・日付：作成年月日を記入し、自筆で署名します。[/箇書き]
【まとめ】意思表示と「人生会議」が鍵。元気なうちに想いを伝えよう
リビングウィルは、ただ作成して終わりではありません。
その想いを家族と共有し、理解してもらうプロセスこそが、何よりも重要です。
では、本日のポイントをまとめます。
[箇条書き]リビングウィルは、延命治療を拒否し、尊厳ある自然な最期を望む意思を書面で示すもの。
法的拘束力はないが、家族や医療者が判断に迷った際の、極めて重要な指針となる。
文書の信頼性を高めるには、公証役場で「公正証書」として作成するのが最も有効。
作成以上に大切なのが、その内容について家族や医療者と繰り返し話し合い、価値観を共有しておくこと（ACP：アドバンス・ケア・プランニング／人生会議）。
終活の一環として、心身ともに元気なうちに、ご自身の「最期の迎え方」について考え、家族に伝えておくことが、未来の家族を守る最大の愛情表現。